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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第三章 トーナメント編
52/64

第五十一話 忘れられた悲劇

第五十一話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。


絵描きの方募集中です。もし、『この作品の絵を書いても良いよ』という方がいらっしゃいましたら、「感想ページ」か「TwitterのDM」か、「【なろう】のメッセージ機能」にてご一報下さい。

よろしくお願いします。

AM7:20


「どういうことだよ。まったく!」


「ナッハッハッハー! そう怒るな。優ぅ」


 優が自分の部屋に戻ると、ブラド一人だけが部屋で(くつろ)いでいた。センナやミキ、メルスの姿が何処にも見当たらない。

 優は皆の居場所も気になっていたが、それよりも先にどうしても聞きたいことがあった。


「そりゃ怒るよ! 俺がご近所の猫のフンを片付けて回ったとかどういうことだよ! 母さんが仕事の時間だから()()説教をされずに済んだけど、帰ってきたら恐ろしいんだぞ!」



―――時を少し遡る―――

AM7:10


 いつの間にか霧の世界から抜け出し、目を覚ました優が居たのは自分の家の玄関だった。体を起き上がらせると母が目の前で仁王立ちしており、怒りを露わに(すぐる)を風呂場に追いやった。誰が沸かしてくれたのかは分からないが、バスタブには既に湯を張られていた。

 風呂場から出たときには既に七時を過ぎており、母は仕事に出た後だった。

 リビングのテーブルには皿の上に沢山のおにぎりが置かれていた。母が朝食用に作っておいてくれたのだ。その横にはチラシの裏表紙に『帰ってきたら覚悟しなさい!』という書置きもあったのだった。

 

 「いただきまぁす」


 朝食(おにぎり)を食している優の顔は、とても浮かないものだった。入浴している時も、食事をしている時も、終始気になっていることが()()あったのだ。一つ目は『霧の中での出来事』だ。深い霧の中に消える直前、最後に名乗った『(イプセ)』。結局彼が何者か分かるどころか、姿すら見ることが叶わなかった。いっそ全て一括りに夢だったと思えば気が楽なのだが、彼が言った最後の言葉だけが、不思議と優の中で木霊(こだま)する。


『では約束だぞアレス。次会った時には『答え』を。世界の進むべき未来を』


「あの言葉なんだったのかなぁ」


 優はどうしても、あの一連の出来事が全て夢だったとは思えなかった。

 

・霧の世界が何処なのか?


・イプセは何者なのか?


・答えとは何の事だったのか?


 分からないことが後を尽きないが、それでも優はまたあの霧の世界に行くことがあるかもしれない。その時までにイプセが求めている答えを見つけられるかは分からないが、その時まで、今回の事は覚えていようと思うのだった。


「ごちそうさまでした。それにしても、母さんが帰ってきたら『説教長時間コース』決定だろうなぁ……。はぁぁ」


 空になった皿の横にある書置きを手に取り、一人ため息をつくのだった。

 二つ目の気になっていたことはまさしく説教(コレ)だった。

 母が優に怒鳴りつけた時に言っていた言葉……。


『ご近所の猫のフンを片付ける』


「どういうことだよぉ。猫のフンを片付けて臭くなったと思っているのか? マジで死ぬかと思ったあの戦いをフン掃除で片付けるって……」


 優の衣服と体からは、倒れた時にカビの生えた水の臭いがしっかりとこびりついていた。

 この世の物はあの世の住人である死者に影響されることも、影響することもない。しかし『二次災害』だけは影響が出てしまうのだ。

 結果的に優の体からは、全く濡れていないにも関わらず『あの激臭』が漂っていた。


 死者が見えない母に事情を説明したところで理解して貰えない事は分かっているが、それでも死線を潜り抜けてきた戦いを猫のフン掃除で終わってしまうのは、優にとって割り切れないものがあるのだった。



―――現在に至る―――

AM7:20


「仕方ねぇだろ。まさか『カビの生えた水溜まりで寝転んでた』なんて言えねぇだろ!」


「っ! そりゃあ、そうかもしれないけど……」


 先ほど優自身話をしたところで母は信じてくれないだろうと思っていたので、ブラドの言う事に反論する言葉が思い浮かばず、押し黙ってしまった。

 ブラドの方も、優が何か言い足りない気持ちがある事や、素直に納得できない事が分かっていたので、決して強くは言わなかった。


「それはそうと、優。お前が持っていた刀……。アレが本当に『天牙』なのか確かめるために、センナ達にルドウの(もと)に持って行かせた。俺たちが向こう(あの世)に着くころには答えが出ているだろう」


「え、一目見たら分からないのか? 何千年もあの刀を持っていたのに」


 伝説から四千年間、剣聖の残した遺産『天牙』は神帝教会によって厳重に保管されてきた。

 ならば、その刀が『天牙』であるかどうかが分からないというのは不自然ではないかと優は思った。彼の疑問に対し、ブラドは悩まし気な表情を浮かべながら淡々とした口調で答える。


「たしかに、あれは俺たちが長い間守り続けてきた()だ。だが、本当に『剣聖』の手にしていた刀なら、何故お前はまだ覚醒していないんだ?」


「え? それは……」


 答えられる筈がない。自分が覚醒しているのかしていないのか、それさえも優一人では判断が出来ないのだ。あの老災(グレオラ)やブラドが覚醒していないと言うのであれば、その通りなのだろうとしか優には答えられないのだ。

 なぜ覚醒していないと聞かれても、優は黙るしかなかった。


「四千年間誰にも心を開くことがなかった天牙が、お前(すぐる)を死者へと変えて、(たましい)の中に入り、そして今回、()()()救った」


「救われたのはセンナも同じだろ!?」


「天牙にその気があったのかは分からんだろう。お前を救った時に、たまたまセンナも救われただけだったのかもしれん」


「そ、そんな言い方ねぇだろ!」


 ブラドの厳しい言葉に反論を試みる優だが、(ブラド)から発せられる発言は許さないという感情を込められた強い視線にたじろいでしまい、大人しく話を聞くことにした。


「なんにせよ。あれが本当に俺たちが求める『天牙』なのか、それとも使()()()が違うせいで『別の何か』に変わってしまったのか。それを調べるためにも、ルドウに任せるしかねぇんだ」


「……」


「お前の気持ちも分からない訳ではない。だから、一刻も早く真実を確かめるために、俺たちも行くぞ! 神帝教会(あの世)に!」


「……あれ、ちょっと待って。行くってことは結局……」


 優の頭の中に、再びあの悲劇のイメージが過る。ブラドは二ッと悪戯を思いついた悪ガキのような笑みを浮かべると、大きな体を起き上がらせる。


「ナッハッハッハー! ドラゴン共の邪魔のせいで後回しになっちまったが、()()()()()()だぁ!」


 ブラドは指をポキポキと鳴らしながら、一歩一歩優に近づいて行く。優は一気に表情が青ざめ、尻を床に擦らせた状態で後ろへ、後ろへと下がる。

 だが、所詮(しょせん)此処は部屋の中。直ぐに壁が背に着き、退路を塞がれてしまう。


「いくぞぉ優ぅ」


「ま、まって! まだ心の準備が」


「歯ぁ喰いしばれぇぇぇっ!」


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


――この後どうなったか。言うまでもないだろう――

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


自分で書いておきながら、だんだん優が可哀そうになってきた……。

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