第四話 デスティニー
第四話になります。
序章のところから読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
AM8:05
「本当に、すみませんでした!」
女性にきついビンタを受けた優はそのまま仰向けの状態になり吹っ飛ばされるかたちで女性から離れる。その後優は左頬にくっきりと手形が赤く付いた状態で、女性に土下座をしていた。
「もういいのに、私が誤解しちゃったんだし、おあいこ! ね?」
「でも、その……む、む、胸に顔」
「わぁぁ! 蒸し返さないでぇぇ!」
通常なら道のど真ん中で何してるんだ!? とツッコミを入れられそうな光景だが、二人の姿は普通の人には見えないため、近くを人が通ってもそのまま素通りして行った。
ドラゴンの姿は霊体にしか見えないこともあり、雲は消え青空が戻った今、最初は不審に思っていた人々も日常に戻っている。
目の前の巫女の格好をした女性もオーガの姿をした男と対峙していたときのような恐ろしい雰囲気は微塵も感じられない。
それどころか目の前で土下座をする優の姿にどう対処すれば良いのか困っている感じだった。
女性は未だ恥ずかしそうに頬を赤らめていたが、『こほんっ』と咳払いをすると優から背を向け、懐から機器のような物を取り出した。
「こちら第七部隊所属センナ、応答願います!」
「〜〜〜」
「申し訳ありません、トランクを奴らに奪われました。追跡は不可能です」
「〜〜〜」
「……了解」
通信相手の声は聞き取ることが出来なかったが、会話が終わったとき、女性はとても悔しそうな顔をしていた。
機器を懐に仕舞うと、女性は切り替えるように一つため息をつき、青年に向き直った。
「それで、君は何者なのかな? 奴らに襲われかけていたってことは、仲間ではないと思うし、戦士にも見えない。でも、生き物は死ぬともうこの世界には居られないはず、君はどうしてこの世界に居るの?」
女性は青年を見たときからずっと気になっていたことを直接聞き始めた。
「どうしてって、俺にもよく分かんねぇんだよ! いきなり空は曇りだすわ、ドラゴンは出てくるわ、鬼みたいな奴に狙われるわ、マジで訳分かんねぇんだよっ!」
聞かれたことにより、先程の一件を思い出した優は、頭の整理ができていないせいで、投げやりな言葉で答えた。
青年の反応は当然だろう。ドラゴンなんて架空の生物、それがいきなり目の前に現れ、しかも襲ってきたのだ。パニックにならないほうが不自然である。
そんな優を見た女性はこのままではまともに話が出来ないと思い、落ち着かせるために両手を優の頬に優しく添え、自分の目を見させる。
「落ち着いて! 雲やドラゴンの事は説明は要らないわ。私が教えてほしいのは貴方の事、教えてくれないかな?」
「は、はい……」
まるで怖がる弟を落ち着かせる様な女性の優しく、それでいて真っ直ぐな瞳に、優はただ頷くしか出来なかった。
冷静が戻ったのだと判断した女性は両手を離し、明るい笑顔で話を進めた。
「じゃあまずは自己紹介からしよっか! 名前が分からないと、お話し難いもんね。私はセンナ、宜しくね♡」
「俺は荒野 優。歳は二十で、小学校から高校まで剣道をしていた。宜しく」
「優ね、覚えたわ! それで、言いづらいんだけど、優はどうしてまだこの世にいるの?」
「どうしてって、生きているからに決まってるだろ!?」
その言葉でセンナは悟った。この男は自分が死んだことに気づいていないのだと。たちまち女性は可愛そうなものを見るような顔をした。
「なんなんだよその顔は!?」
急に気の毒な人扱いされたようで、青年は思いっきりツッコんだ。
「え、えっとね優、よく聞いて! 残念なんだけど、貴方はもう死んでいるの! もう生きていないんだよ!」
「えっ!?」
「で、でもね向こうの世界も悪くは無いんだよ! 優は凄く真面目そうだし、きっと階層も上の方だと思うなぁ……」
「いや、ちょっと待ってくれよ! 俺が死んだ!? そんなわけないよ、これはアレだ、幽体離脱ってやつだ」
「落ち着いて、幽体離脱という言葉は私も知っているわ。でもね、それは実際にはありえない話なの。肉体と魂が二つ揃ってはじめて生者と呼べるのよ。一度肉体から魂が離れたら、もう戻れないわ!」
「そ、そりゃねぇよ! だいたい死因は何なんだ!? 俺はトランクから出てきた刀にぶっ刺されただけなんだぜ!?」
「刀に刺されたら死ぬんじゃないかなぁ?」
「…………」
墓穴を掘ってしまった彼は何も言えなくなってしまった。しかし、今の会話にセンナは引っかかりを感じた。
「え、ちょっと待って! トランクから出てきた刀に刺された!?……そのトランクって貴方の?」
「イヤ、信じられないかもしれないけど、天井にいきなり穴が開いてさ、そこから黒いトランクが落ちてきたんだ! それを開けたら急に中身が光りだして中から刀が飛び出してきて、俺はそれに刺されたんだ! それで気がついたら幽霊になってて……センナ、さん?」
説明を続けるほど女性の顔は次第に明るくなり、今では、頬をほんわりと赤く染め目には涙が溜まっていた。
「や、やっと会えた……」
「え?」
「剣聖様ぁぁぁっっ!!!」
そう言いながら、センナは優の体に飛び付いた。
「い、いきなりなんなんだぁぁぁっっっ!?」
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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題名のデスティニーとは「destiny」
と書いて運命という意味です。
他にも「fate」がありますが、
敢えてデスティニーにしました。