第四十七話 漆黒の刀
第四十七話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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AM6:10
グワァァァッッッ!
ドラゴンのけたたましい咆哮が街中に響き渡る。
先ほどまでセンナと互角に渡り合っていたグレオラの面影は全く感じられない。
彼らの目の前に居るのは、他の奴らと同じように、その巨大な翼を大きく羽ばたかせ空を舞うドラゴンだった。
「ど、どいうことだセンナ。なんでレース・ノワレがドラゴンに!?」
「私にも分からないわ! 通常のドラゴンには理性も知性も存在しない筈なの。ドラゴンも元は人間なのは間違いないわ。前に話したと思うけど、レース・ノワレというのは『人を殺したい感情』が暴走をした結果、体が変化して今の姿のなったの。ドラゴンはその姿になり切れず、感情によって自我を失った者達の慣れの果ての姿。自我のあるレース・ノワレがドラゴンになるなんて……」
(センナも分からないってことか……)
センナもグレオラが突然ドラゴンに変身したことに動揺を隠せないようだった。
優は彼女にも現状を把握出来ていないのだと知ると、目の前のドラゴンを注意深く観察した。
上空には殆ど光がなく見え難いが、周りのドラゴンと比べると、そのドラゴンには明らかに違う点が一つだけあった。それは、体の色だ。
他のドラゴンたちは全身が真っ黒に染まり、この暗闇では周りの風景と同化してしまい殆ど体が見えなかった。
しかし、目の前のドラゴンは違う。変わらずに明るい色では決してないが、先ほどグレオラの体を包んでいった老緑色のオーラとまったく同じ色をしていた。
センナが言うように、他のドラゴンたちとレース・ノワレでは自我が『ある』か『ない』かで違っているらしい。
ならば、レース・ノワレがドラゴンに変身しても他のドラゴンたちと体の色が違うのも何か違いがあるのではないだろうか。
そこまで優が考えていた矢先、老緑色のドラゴンが不気味な赤い光を放っている瞳を優達に向けた。
「自我があるかないか……か。たしかにその通りじゃ。じゃが一つだけ決定的に間違っているところがあるぞ」
「間違っているところ?」
「我らレース・ノワレもドラゴンも、元々一つの感情が体を変化させた。ならばまたその感情を膨れ上げさせたらどうなると思う?」
「ま、まさか!?」
なんという事であろうか!
感情の暴走が六道最下層の者たちの姿を変えた。人を殺したいという感情が、それを可能にする力を与えてしまったのだ。
ドラゴンたちは自我を持たない為に物事を考える知性すらも残ってはいない。しかしレース・ノワレは違う。更なる力を求めるためにより強く人を殺すことを望むことで更なる力を与えるという事なのだろうか。
センナも優も、その考えにたどり着いたとき、体から自然と力が抜けていく感覚がした。
ただでさえセンナを追い込んだグレオラの更なる増強。それは、優達の魂に大きな恐怖心を植え付けることとなった。
「これこそが我が真の力! 我らレース・ノワレに限界などない! 我らこそ至高の存在なのだぁぁ!」
グワァァァッッッ!
グレオラの叫びと共に、ドラゴンが再びけたたましい咆哮を轟かせた。
それだけではない。ドラゴンの口元から、体の色と同じ老緑色の薄気味悪い光が見えた。
「センナ、なんだ!? あの光り!」
「あれは、まさかドラゴンの!?」
センナはこれまでのドラゴンとの戦いによって培ってきた経験から現状を直ぐに把握することが出来た。
これまで戦ってきたドラゴンは皆、口元が赤く輝いたとき、巨大な炎の球を放射する。
かつて、優と初めて出会った時も彼を襲っていた技がソレだった。
その巨大さゆえに回避することは難しく、その火力は受けた者を骨の一片たりとも残さずに灰にしてしまうほど強力なものなのだ。
通常の死者はもちろん、神帝教会の戦士でさえもあの炎の球に焼かれ魂を壊された者も過去にいた。
しかし今目の前のドラゴンの口元から発せられている光は色が違った。『老緑色』。それはグレオラのオーラの色そのものだった。
(もしも、ドラゴンの姿になっても彼の『ポテンティア』が変わらないままだとしたら……)
「優、絶対に私の傍から離れないで!」
センナの中で最悪の可能性が頭を過った。
彼女は素早く杖を天に向け、杖先から水を溢れさせる。水は真上に撃ちあがることもなく、重力に従って真下に落ちることもなかった。水は全方位へと散らばり広がっていった。
やがて水はセンナと優を飲み込み地面へと落下していく。
瞬く間に二人は『水のドーム』によって包み込まれた。
「す、すげぇ!」
ドームの中は空洞になっていて優は呼吸をすることが出来た。
センナは意識を集中し水を必死にコントロールする。
(もっと水流を激しく、荒れ狂う『滝』のように!)
センナの心の声に応えるかの様に、杖は激しく水色の輝きを発しながら噴き出す水の量を一気に増した。
ドーム状に広がった水の流れは途端に早くなり、まさしく滝のように激しい水しぶきと音を鳴らしながら地面へと落下した。
「ほう、滝の壁か。面白い! 果たして我の『息吹』を耐えられるかな?」
更なる老緑色の光を増したグレオラの口が、ついに開かれる!
「触れたものを一瞬で腐らせる『老いの息吹』。『ルキウス・スピリトゥム』!」
老緑色の息吹がセンナ達に向かって飛んでゆく。
炎の球とは違い流動的でなおもドラゴンの口からは蛇口から勢いよく出てくる水のように息吹が出続けている。
息吹が水のドームを大地ごと飲み込んだ。触れた部分からはゴボゴボッという物が溶けていくような異質な音が響き、水のドームによって地面に広がっていた水は瞬く間にカビが生え腐っていった。
「これで終わったかのぉ」
グレオラは息吹を止め、地上の様子を伺う。
周りには巨大な水溜まりが路地を覆いつくし、至る所にカビが浮かんでいる。
空を飛んでいるグレオラにもそこから放たれている激臭が鼻を刺激したが、気にするそぶりも見せずただただセンナ達が立っていた道の真ん中を凝視していた。
その先に居たのは……。
「うえっ! くっせぇ! 鼻がもげる」
「我慢してよ。危うく私たちが腐るところだったんだから。……くさ!」
周りの激臭に鼻を摘まみながら耐えている二人の姿だった。
センナの水のドームは、杖の先から噴き出した水の水流によって、全方位に広がった『滝の壁』となり二人を守る盾となったのだ。
滝には一切の隙間がなく、息吹に触れた部分からどんどん腐っていったものの、まるで底なしのように溢れ出てきた新しい水が二人を最後まで守り切った!
しかし……。
「くっ!」
「っ! センナ!?」
センナは力尽きたように両ひざを地面につけ、崩れる様に倒れこんでしまう。優が間一髪のところで両腕で支えるが、彼女はハァ、ハァと肩で息をしながら激しく消耗していた。
辛うじて残った握力で杖を握っているものの、もうデュナミスを発動させる体力は残ってはいなかった。
「アッパレじゃ!」
「っ!」
頭上から聞こえてくる声に優は顔を上げる。
そこにはグレオラがその大きな翼を羽ばたかせながら彼らの真上を飛んでいた。
「我の息吹を受け切るとはのぉ! 流石は二つ名を持つ戦士よ! じゃが、その様子では二度目は防げそうにないな」
「なに!?」
漆黒に染まってる上空より、グレオラの口元から再び薄気味悪い老緑色の光は放たれ始めた。
このままではすぐに二発目を放たれてしまう。
センナは、力の抜けた腕で優の服を掴み、消え入りそうな声で懸命に呼びかける。
「優、早く逃げて。貴方だけでも」
「ダメだ! あれを受けたらセンナが」
「何よりもあなたの無事が最優先よ。あなたは私たちの希望なのだから!」
「希望……なら!」
優は足元の水溜まりを足で払い、ゆっくりとセンナを塀に持たれ掛けさせるように座らせた。
センナから手を離すと、優は両手を広げてドラゴンから彼女を守る様に立ちふさがった!
「す、優! あなた何してるの!?」
「センナが今言ったじゃないか。俺は希望なんだって。仲間一人守れない奴が何が希望だ! 俺は絶対に逃げない! センナが俺を守ってくれたから、今度は俺がセンナを守る!」
「無理よ! あなたまだ覚醒していないじゃない! それに今のあなたの体は生身よ! 生身の体が腐ったら、あなたは本当の死者に!」
「関係ない! これは俺の意地だ! おい! 老いぼれジジィ! 今度は俺が相手をしてやる! かかってこいやぁぁぁっ!」
「はっはっは! なんという威勢の良い小僧じゃ! それとも命知らずの馬鹿か? 安心せい。お主一人と言わず、二人纏めて腐らせてくれるわぁ!」
グワァァァッッッ!
けたたましい咆哮と共に、グレオラが大きく口を開かれ、再び『ルキウス・スピリトゥム』が放たれた!
優は一切怯むこともなく、眼前に迫る『死』に真っ向から立ち向かう!
「優!」
優の姿が老いの息吹に飲み込まれるその時! 突如、優の胸部が激しく銀色の光に輝き始めた!
「え!?」
「何!?」
息吹はいつまでも優達のところまで届かない。優の胸部から発せられる銀の輝きが壁となり、息吹を完全に弾いていた!
優は自分の胸を見るも、何が起こっているのかまるで把握できない。しかし、センナはこの現象に一つの可能性を感じた。
「もしかして、天牙が!」
「な、なんじゃ。その光は!?」
漸く異変に気付いたグレオラが咆哮を止めると、光は徐々に優の胸部で一つの塊となり飛び出した。
塊は優の眼の前で浮かび上がる。依然光を放射し続けているが、優は全く眩しさを感じていなかった。
『手に取るがいい』
「え? 誰だ!?」
「どうしたの、優!?」
優は聞いたこともない声に動揺し辺りを見回すが、センナとグレオラの姿以外見受けられなかった。
どうやら、センナには今の声は聞こえていないらしく、キョトンとした顔で優を見ている。
「いや、なんでもない」
(確か今、手に取れって……)
優は今の声をどうしても気のせいには感じられず、ゆっくりとした動作で、目の前に浮かぶ光の塊に手を伸ばす。
手が塊に触れた直後、銀色の光は真っ黒に染まり姿を変えていった。
やがて黒い光が形を成すと、三人はその姿に眼を見開く。
「な、なんじゃと!? それはまさか」
「優、あなた……」
「やっぱりこの刀が」
刀の柄を握ると、刀は浮かぶ力を失いどっしりとその重みを優に感じさせた。
それは以前、優のもとに落ちてきたトランクの中身であり、優を今の運命へと誘った、漆黒の刀だった。
―――次回、刀の力がついに!?―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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更新が遅くなってしまいすみませんでした。
物語が一部誤っているところがあったので、急ぎ改稿をさせて頂きました。
第二十三話『伝説』の内容を改稿したので宜しければご確認ください。




