第三十九話 現世にて
第三十九話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM6:10
「はぁぁ、やっと帰ってきたぁ」
「ふふふ、お疲れさまでした」
アレスはセンナと共にゲートを潜り、行きと同じように長く続くトンネルを通り抜け現世に帰還。
ゲートの出口はアレスの部屋に設置されていたので、実質帰路は一本道だった。
「センナもお疲れ様。さて……あ、あぁぁぁぁっ!?」
「ふぇ!? なに、どうしたの?」
突然、アレスは何かを思い出したかのように悲鳴のような声を高ぶらせた。センナはアレスの声に大きく体を震わせながら彼を凝視する。
アレスはまるで、貴重品を何処かで落としてしまった人のように顔を真っ青にしながら慌てて説明する。
「俺の体ぁぁっ! 向こうに忘れて来ちまった!」
「え? あぁ。その事ね! 大丈夫よ、そろそろ送られてくる筈だから」
「送られてくる?」
センナの言葉の意味を理解できなかったアレスだが、ソレを考えるよりも早く答えは唐突に訪れた。霊体のため、電源を入れるスイッチを押すことが出来ず、暗闇の部屋の中でアレスは急激な眩しさに襲われた。
「うわっ、なんだ!? ……あれ? このパターンは」
「ふふふ、もう慣れてるでしょ?」
アレスは以前、この現象を一度体験したことがあった。
それは、すべての始まりとも言っていい『黒いトランク』がアレスの部屋に落ちてきた時の事だった。
あの時も寝るために照明を落とした部屋の中が急激な眩しさに包み込まれ、瞬く間に天井に穴が開きソレが落ちてきたのだ。
『ならば今回も!』と思い、アレスは眩しさが弱まったのを見計らい天井を見上げる。
「やっぱりか! ってデカ!?」
思った通り天井にはあの時トランクが通ってきた時と同じようなゲートが出来ていた。
しかし今回はゲートのサイズが以前よりも大きかった。部屋の天井の半分以上をゲートが占めていた。
アレスはあまりのサイズに一瞬呆気に取られるも、ゲートの向こう側から次第に大きくなっていく影を見つけた。
影はゲートを『通っている』のではなく『落下している』のだと正確に読み取ったアレスは反射的に影の落下地点から退避した。
落ちてきたソレはよく見ると、今までこんな大きな物は見たことがないと思えるような横長の巨大な段ボールだった。
「なんだこれ? あの世から『宅急便』?」
「ふふふ。これは霊体用に作られているから、生者には触ることはもちろん視認することも出来ないの。だから死者である今のアレスなら触れるから、開けてみて!」
「お、おう」
恐る恐る段ボールに貼られているガムテープを剥がし、蓋を開ける。
すると中には……。
「……そりゃねぇだろ」
なんと、中には胸の位置に両手を組まされたアレスの死体が入っていた。
しかもご丁寧に体を埋めようとするかのように段ボール一杯に花が添えられている。
段ボールに入っているからまだ違うと言えるのかもしれないが、この絵面はまるで……。
「名付けて、『霊柩便』!」
「上手くねぇよぉぉ!」
棺桶に入り、今まさに霊柩車に乗せられて埋葬されて行きそうな姿そのままなのである。
死に装束ではなく予めアレスが着ていた服なので厳密には違うのだが、見ていると何も知らない第三者なら合掌しながらご冥福を祈りたくなる程切なさを感じさせるような見事な情景だった。
「おい、これ笑えねぇんだけど。洒落にもなってねぇんだけど。誰だこんなふざけた事思いついたのは!?」
「満場一致で」
「全員かぁぁい!」
アレスがメルスとの模擬戦の後に気絶をしていた時に、センナ達が花を摘み準備をしていたのだ。
センナは悪戯の成功した子供の様に嬉しそうに微笑んでいる。
「はぁぁ、とりあえず体にもどるかぁ……」
ツッコミに疲れたと全身で表すかのようにアレスはとぼとぼとゆっくりとした足取りで自分の体に近づき体を重ねた。
センナはアレスが元の体に戻る瞬間を一度見ている。しかしやはり死者が生身の体に戻るという事は頭では分かっていても心では信じられないというのが本心だった。
注視するかのような眼差しで肉体に体を重ねたアレスの姿を見つめる。
「……どう? アレス?」
「どうもこうもねぇよ」
アレスは重い体をゆっくりと持ち上げるように起き上がった。身体中に添えられていた花々が彼の動きに合わせて華やかに散っていく。
優は久方ぶりのように感じる生身の体の感覚を確かめるように指や肘を伸ばしたり、手の平を閉じたり開いたりを繰り返す。
膝に手を乗せ慎重に立ち上がろうとすると、バランスが取りづらいのか足元がおぼつかない。
「なんか、体が重いぞ?」
「ルドウ博士は元の体と何も変わっていないって仰っていたから、解剖が原因ではないと思うわ。きっと死者の体に慣れちゃったのね」
「たしかに、初めて霊体になったとき凄い解放感だったからなぁ」
「大丈夫? 手を貸そうか?」
「いや、いい。これくらい一人で……うわぁ!?」
「え、きゃぁぁ!?」
優はよろよろとした足取りで段ボールから出ようとするが、ただでさえバランスが取りずらい状態に加え、段ボールの滑りやすさから彼は盛大にセンナの方向に滑り転けてしまった。
体が勢い良く横に倒れるに連れ段ボールは大きく揺れ、中の花々が部屋中に散らばった。
「あぁ、イッテ。いや、痛くない。というかなんか柔らかい……この感触は!?」
この状況にも優は覚えがあった。顔面に感じる柔らかな膨らみがソレを確信に変える。
「うぅん……えっ?」
センナは優にぶつかった勢いで倒れてしまった。幸か不幸か意識を失わなかったお陰で彼女はすぐに現状を把握することが出来た。
その後に待ち受ける展開は、もはや言うまでもないだろう。
「きっ、きっっ、」
「こ、こんばんは……」
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
パッチィンッッッ!
暗闇の部屋の中で木霊するかのような盛大なビンタ音が鳴った。
「じゃぁ、帰るからね!」
「はい、ありがとうございました……」
頬を若干赤くしているセンナがその顔を隠すように振り返ることもなく恥ずかし気に言い放った。
壁には既にセンナにより帰還用のゲートが開かれている。頬に綺麗な紅葉マークを付けられた優は、正座をしながらセンナを見送る。
「いつ来れるか分からないけど、たぶん近いうちに迎えに来るから」
「はい、お待ちしております……」
「じゃ、またね」
センナはゲートの中へと消えていき、ゲートもまた役目を終えたかのように瞬く間に消えていった。
途端に静まり返ってしまったへ部屋の中で優は今更ながらに照明を点けた。
明るく照らされた部屋には肌を凍り付かせるような真冬の寒さに満たされていた。
死者の体ではエアコンのリモコンすら触ることが出来ないので、最初は肌寒さを感じていたが、センナとのやり取りで生身に戻った後も結局今まで電源を入れていなかった。
優は慣れた動作でリモコンのスイッチを押し、エアコンを起動する。
次に優は部屋中に散らばった花を何とかしようと考えるが、センナが生者には見えないと言っていたので片付けるのは明日で良いと思い、振り返りながらベッドに倒れこんだ。
ベッドは優の体重に軋むような音を立てるも、柔らかく彼の体を受けとめた。
寝転ぶと、まるで今までの一連の出来事により蓄積された疲労が一気に襲ってきたかのように優の心の中を睡眠欲が満たしていく。
(本当に疲れていたんだな、俺……。こんなに疲れたの久しぶりだ。でも俺はエキストラ戦士になったんだ。明日からはもっとがんばらねぇt……)
エアコンの起動音が鳴り響く部屋の中で、一人の青年の消え入りそうな小さい寝息が点っていた。
AM5:30
「っと! いい加減起きなさいよ!」
「ううん、あと五分……」
「ダメに決まっているでしょ!? 良いから起きなさぁい!」
「うわぁっ!?」
優は掛けられていた毛布をいきなりはぎ取られたことにより、照明の眩しさに眼を覆う。
肌寒さが体を襲うこともなく、部屋は暖房によって暖かくなっている。
優は重い瞼を持ち上げ毛布を奪った相手を見ると……半目になっていた瞼は大きく開かれた。
大きく動揺しながら彼女の名を呼ぶ。
「ミ、ミキ!?」
「はぁ。やっと起きたわよ、千奈」
「あ、起きた? おはよう優」
「センナまで……え、もう!?」
「違うわよ! 訓練じゃないわ。勉強よ」
「べん……きょう?」
「さて、じゃあさっさと始めちゃいましょ。芽瑠守、準備できた?」
「あぁ、しかしこの成績の下がり様……ヴラカス」
「め、メルスまで!?」
目を覚ました優の目に映ったものは、自分の部屋の中にさも当然のように居座っているセンナ、ミキ、メルスの姿だった。
優はポカンッとした表情で完全に呆気に取られ、固まっている。
そんな姿を見たミキは叱りつける様に優に言い放つ。
「なにぼさっとしてんのよ! 時間は限られてんのよ! 早くこっち来なさい!」
「な、なな、なにがどうなってるんだぁぁぁぁぁっ!?」
―――早朝の静かな町に一人の青年の声が響き渡った―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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キャラクター達の名前がおかしいと思った方、誤字ではありませんよ!
2話くらい進んだところで明かしていこうと思いますので、宜しければお付き合いください。




