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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第一章 出会い編
4/64

第三話 出会い

第三話になります。

序章のところから読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

AM7:40


「助けてくれぇぇぇっ!」


 優は空を全速力で駆け抜け、ドラゴンから逃げていた。

 どうやらドラゴンの姿も他の人には見えないらしい。地上にいる人々は依然雲を見つめたまま青年とドラゴンには無反応だった。

 ドラゴンのスピードは早く、少しずつ優との距離が縮まっていく。


「何で俺が追われなきゃならねぇんだよ! 他の人には見えて無いってことは、アレも霊体なのか? 古代には恐竜の他にドラゴンもいたのか? 昔の自然界どんだけスパルタ!?」


 遂にドラゴンが優のすぐ近くまで追いついた。

 ドラゴンの背に乗っている者が再び青年に指を指す。その合図を待っていたかのように、ドラゴンが口を開けた。

 優は(何をする気だ)と不安に思いながら見ていると、ドラゴンの口の中が次第に赤く光りはじめた。同時に、口の中がまるでキャンプファイヤーの様に激しく燃えていく。


「おいおいまさかっ!? これってゲームとかでよくある……」


 優の言葉を待たずして、ドラゴンの口から巨大な炎の塊が発射された。相当な高温なのだろう、感じたこともない熱気で優は瞬く間に汗を流し、必死に炎の塊から逃げ惑う。

 しかし、放たれたソレは優のスピードよりも遥かに速く、僅か数秒で追いつかれた。


「うわぁぁぁっ!!!」

 

 逃れることも出来ず、優は爆炎の中に飲み込まれた。

 接触した直後、炎の塊は激しい大爆発を起こした。爆風が街中に広がり、木々はミシミシと音をたて、地上の人々は近くのものに縋り付き、突然の風に吹き飛ばされないよう必死だった。地上の人々には炎の塊さえ見えなかったため、まるでいきなりハリケーンが襲ってきたのではないかと思うほどの凄まじい突風だった。

 この爆発では優の肉体は跡形もなく消し飛んでいるだろう。


「っ!」


 しかし、フードの男はすぐに爆炎の異変に気付いた。あれほど大きな爆炎だったにもかかわらず、炎がどんどん小さくなっていく。炎から空へ立ち昇る大きな雲のようにすら見える煙も次第に蒸気に変わっていった。


「またかっ!」


 フードの男は苛立つように拳を握りる。

 

「ふぅぅ、どうにか間にあったわ」


「えっ!?」


 優は確実に死んだと思っていた。しかし、実際は死ぬどころか火傷一つしていない。前を見ると、いつの間にか自分とドラゴンとの間に一本の杖の様な物を持った一人の女性が立っていた。杖の先から水が吹き出し、それが壁を作るように女性とドラゴンの間に巨大な水の膜を張っている。水が炎をかき消したのだ。優は助かったという安堵をする(ひま)もなく、目の前に立つ女性の方をぼうっと見つめていた。

 その女性はゆっくりと振り向き、優に話しかける。


「大丈夫?」


「……」


「?」


 優は答えることが出来なかった。というより、話しかけられている事に気づけなかったのである。

 後ろ姿ではどんな人か分からなかったが、振り向いた途端に目を見張った。突然現れた女性は、彼の言葉では言い表せられない程に美しかった。全身を巫女の様な服で包み、鮮やかで綺麗な水色の瞳と長い髪をポニーテールに(まと)めている。長い髪の毛がまるで絹のように滑らかに、空中を踊るように風に煽られていた。今まで女性と交際した事のなかった優には、彼女の姿に、ただ見とれることしか出来なかった。


「あのぉ……」


「うわぁ!」


 反応しない優を心配に思ったのだろう。女性が心配そうな顔で近づくと、優は顔を真っ赤にして慌てて後ろに飛び下がった。


「怪我はない?」


「え? あ、そうだ俺炎に包まれて!……俺、生きているのか?」


「いえ、死んでるわよ」


「は?」


 漸く自分が先程までどういう状態だったのか思い出した優は、自分に怪我がないかを慌ててチェックする。

 怪我はない事にホッとするのも束の間、予想外の一言を女性は言ってきた。自分の無事を確認していた優は、女性に当たり前のように『死んでいる』と言われたのだ。

 青年は何を言われたのか分からず呆気に取られてた。間の抜けた優の表情から、彼の心情を察した女性は言った。


「だってあなた、生身の体じゃないでしょ?」


 そこで漸く言われたことを理解した。ドラゴンに追われるという思いがけない騒動に巻き込まれ、優は自分があのトランクのせいで幽体離脱中であることを忘れていたのだ。


「でも何であなた、まだ現世にいるの? どう見ても神帝の戦士には見えないし……。まぁ今は良いわ、早くここから立ち去りなさい! ここにいたら」


グワァァァッッッ!


 女性の言葉を遮るようにまたドラゴンが咆哮を上げる。女性はドラゴンに向かい合い、様子を伺うように杖を構えた。反対側を向いているので優には彼女の顔が見えなくなってしまったが、そんなことを気にする間もなく、目の前のフードの男が自分たちに話しかけてきた。

 ドラゴンの背中に乗っているフードの男は顔を隠しているにも関わらず、はっきりと分かるほど声に怒りの感情を乗せて語りかける。


「また、キサマか……」


 男はゆっくりとした動作で腕を上げ、被っているフードを取った。

 

 見えた顔に優は再び言葉を失った。額からは角が二本生え、顔は真っ赤に染まり、閉じている口から小さく牙が見えている。


 ―――人間じゃ、ない!―――


 まるで鬼のようなその姿は、ゲームとかファンタジーのアニメによく見るオーガそのものだった。


「現世にまで来るとは、よほど俺に()()()()()らしいな」


「アレは元より()()()()の物です。あなた達こそ、早くここから立ち去りなさい! ここは生者の世界、我々がいつまでも居て良い場所ではありません」


「そうはいかねぇ! ()()は俺達にこそふさわしい。何千年も宝の持ち腐れをしているキサマらとは違うんだよ!」


「やはり、何を言っても無駄なようね」


 話が途絶えた後、二人の体が光に包まれていく。

 女性は髪の色と同じキレイな青色を、男は顔や肌の色と同じ濃い赤色を帯びた。

 優は今まで感じたこともない肌がピリピリとするようなプレッシャーに身の危険を感じ取り、後ずさる……。何が起こるかは分からないがここに居てはまずいと本能的に理解したのだ。


ピピッピピッ


 いつ互いが激しくぶつかり合ってもおかしくない状況下で、オーガ姿の男の懐から着メロの様な音が響き渡る。ソレを聞くや否や、男の体を包んでいた赤い光が消え、マントの懐に手を伸ばし、何かの機器を取り出した。それを見た男は口の端を上げると、女性をあざ笑うかの様に言い放った。


「残念だったな! トランクは既に俺達が手に入れた。もう用済みだ」


「なんですって!?」


 女性の顔は相変わらず優からは見えないが、声だけでも動揺しているのがはっきりと分かった。その反応に満足したかのように、男はこれぞまさしく悪党面(あくとうづら)という表情でそう告げると、指を鳴らした。たちまちドラゴンが大きく翼を広げ、今にも飛び立ちそうだ。


「ま、待ちなさい!」


 逃げられると悟った女性は切羽詰まった表情で男たちを足止めするために杖で攻撃を仕掛けようとしたが、それよりも先にドラゴンが大きく羽ばたかせる。巨大な翼故に一度羽ばたかせただけで激しい突風が二人を襲った。


「くッ!」


「うわぁぁっ!?」


 女性は持ち堪えていたが、優は耐えられず吹き飛ばされる。


「危ない!」


 女性は後ろに飛び、必死に優の腕を掴もうとした。二人はそのまま街の方へと落ちてゆく。その隙に、ドラゴンはそのまま雲の中に消え、雲もまた、その直後に散り散りになって消えた。街の人々には今の一連の騒動は何一つ見えてはいない。いきなり分厚い雲に覆われ、突風に襲われ、そしてまた、なんの予兆もなく雲が消えていき、街は太陽の下で明るく照らされる。


AM8:00


「うう、何がどうなったんだ?」

 

 優は突風に飛ばされ、その後何が起こったのか把握できなかった。


「あぁ、イッテ。いや、痛くない。というかなんか柔らかい……」


「うぅん……」


「……えっ!?」


 すぐ近くで声が聞こえた事に驚き、慌てて体を起こすと、巫女服を着た女性が意識を失い自分の下敷きになっていた。

 自分がのしかかっていたせいか、服がはだけ、膨らんだ胸元がはだけている……。優はさっきまで自分の顔が何に埋もれていたか理解した。


「うぅん……えっ?」


 漸く目を覚ました女性は自分の顔の真上で真っ赤に染まった優の顔を見た。

 そしてすぐに()()を把握する。傍から見ると、男が女を押し倒している様にしか見えない現状を……


「きっ、きっっ、」


「お、おはよう……」


「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」


パッチィンッッッ!


 町中に響き渡る程盛大なビンタ音が鳴った。

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


多くの方からアドバイスを頂きとても助かります。

本当にありがとうございます!

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