第三十四話 模擬戦:アレスVSメルス【二】
第三十四話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM4:00
「う、うぅ……」
試合が始まって僅か数秒、アレスは壁のすぐ手前で胸を空いた腕で押さえながら苦し紛れに悶えている。この試合では、『降参を宣言しない』他に、『意識を失わない』限り敗北にはならない。だからアレスは、今にも途絶えてしまいそうな意識を必死に繋ぎ止める。
「アレス、まだ意識はあるな? 降参するか?」
この模擬戦の審判であるビエラが苦しそうに倒れているアレスに一切同情する素振りも見せず鋭く言い放つ。微かな意識の中でビエラの声を聞いたアレスは返事をしようとするが、激しい痛みで肺が満足に空気を供給できず、言葉を発することもままならなかった。
「返答がない場合は試合続行不能とみて勝敗を決するぞ?」
この状況ではどちらが敗北者かなんて火を見るよりも明らかだ。
アレスは未だに呼吸が荒く、上手く息を吸うことも出来ない。それでも彼は、壁に背をこすり付ける様にもたれ掛かりながらゆっくりと立ち上がった。
彼は真っ直ぐに審判を見る。その眼には諦めの色は一切なかった。アレスは『自分はまだ戦える』と、言葉で伝えられない代わりに視線で訴えていた。
(やれやれ……)
返答はない。しかしビエラは一向に試合を止めようとしなかった。
アレスの気持ちは、しっかりと彼女の心に届いたのだ。
アレスは壁に預けていた体重を両足で支え、ゆっくりと前へ歩を進める。
進んでいる間彼は、先ほどの一瞬の間に何が起こったのかを考える。
(あの時俺は……メルスとの距離を一気に詰めようとした。剣道の試合よりも距離のあるスタートだったしアイツも俺に近づいてくると思っていた。でも違った、あの野郎のさっきの構え……)
アレスは壁に吹っ飛ばされた直後、ほとんど反射的にメルスを見ていた。それは、幼いころから剣道をやってきた故に『相手から決して目を離さない』という武道にも似た経験者特有の本能に近いものだった。
そして彼がぼやけた視界の中で見たものとは……。
(あの時もメルスは木刀は俺に向いたままだった。しかも、突っ立っていた時とは違って、右足を大きく前に伸ばし、重心を前方向に傾けていた。間違いない! メルスの野郎、あの体制から『突き』で俺をぶっ飛ばしやがったんだっ!)
もともと彼の木刀はアレスに向けられていた。つまり彼は、力の入りにくいその状態から片足の踏み込みから生じる勢いだけでアレスを壁まで突き飛ばしたのだ。彼を突き飛ばしたのは修練場の中心と言ってもいい。つまり、壁までの距離10メートル近くまで人ひとりを飛ばしたことになる。常人であればどんなに勢いをつけても不可能だろう。だいたい時速40km/hの乗用車に轢かれたような距離だ。
(そんなスゲェのを食らってもまだ立てるのは、死者の体だからだろうな……)
死者の体は魂だ。どんな重症傷を負おうと彼の精神バランスが崩れない限り壊れることはない。
そこまで考えたところで、アレスは最初に自分が立っていた位置まで戻ってきた。
「まだ続ける気なのか? キサマでは俺に勝てないということがまだ分からないのか?」
「ゲホッ、ゲホッ、たしかにな……。お前は強いよ。技量的に俺がお前に勝つのはまず不可能だ」
「なら、なぜ負けを認めない?」
「俺は、たとえ負けてもやらなきゃいけない事があるんだよ……」
「やらなきゃならない事だと?」
メルスはその続きを聞こうとするが、アレスの行動がソレを許さなかった。アレスは再び『中段の構え』で体制を整える。荒かった呼吸もいつの間にか治まっておりとても静かだった。メルスは彼の言葉を考えることを中断し、目の前の相手に集中する。再び木刀を持っている腕を持ち上げ、矛先をアレスに向ける。試合が始まった直後と全く同じシチュエーションだ。
アレスはタイミングを見計らったかのように一気に前へ駆け出した。初動まで先程と全く同じだ。
(ヴラカス、ソレしか出来ないのか。やはりキサマは剣聖などではない!)
メルスは再び突き技でアレスを向い打つため、右足を前へ大きく踏み出す。その動きはあまりに早すぎてアレスの動体視力では認識が追い付かない。
踏み込みから勢いを得た木刀がアレスの木刀すれすれで通り越し、彼の胸元に猛スピードで迫る!
(その状態で2度目は耐えられん。終わりだ!)
ドンッ!
鈍器がぶつかった様な厚みのある低い音が小さく鳴った。メルスは握っている木刀から、たしかな手ごたえを感じ取り、勝利を確信する。
(終わったな…………っなに!?)
次の瞬間!
「くらえぇぇぇぇぇぇっ!」
ドンッ!
「ぐはぁぁぁっ!」
―――アレスの一撃で、メルスの体は宙に浮かんだ―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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いったい何が起こったのか……次回、明らかに!




