第三十二話 剣聖候補
第三十二話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM3:30
「アレス、ちょっと聞いて良い?」
「なんだ?」
アレスたちは現在、第七部隊の部屋でブラドからの知らせを待っている。
メルスからの挑発を真っ向から受けて立ち、ブラドが総隊長に掛け合い、場を整えて来ると行ってしまった。
ちなみにメルスはブラドの後を追いかけるように部屋を退室した。どこへ向かったのかはセンナ達にも分からないようだが、今回の勝負において、彼が逃げる要素は全くない。時が来れば姿を現すだろう。アレスを倒すために……。
現在部屋にはアレスとセンナとミキだけだ。サクラは隣にある給湯室で皆の飲み物を用意している。
センナは準備が整うまでの短い時間の中で、どうしても聞いておきたいことがあった。
「どうして、メルスの誘いを受けたの? アレスは好戦的な人には見えないけど……」
「もちろん、争いごとは嫌いだよ。喧嘩も好きじゃない。でも、……知りたいんだ」
「知りたいって……何を?」
アレスは少し間を空けながら目を閉じて、己の精神を落ち着かせるようにゆっくりと息を吐く。そしてセンナに視線を合わせながら質問に答える。
その時の彼の視線から、とても重要な話なのだろうと、センナとミキは悟った。
「メルスはなぜ、俺が剣聖でないことに拘るのか」
「「っ!」」
二人の心の中に衝撃が走る。表情からそれを読み取ったアレスだが、取り合うこともせず先を進めた。
「ずっと気になっていたんだ。初めて会った時から、アイツは俺に敵意みたいなものを向けていた。それは俺自身が気に食わないということなのかもしれないけど、俺は他の答えがある気がする」
「他の答えって?」
「俺が剣聖の武器、天牙に選ばれたということ」
「「…………」」
アレスの言葉に対し、二人は肯定こそしなかったが、否定することもなかった。
ただただアレスの真剣な眼差しに対し、一切視線を逸らすこともせず、彼の言葉を聞くことに専念していた。
「二人も知っての通り、それはまだ可能性の話だ。でもメルスはその可能性があること自体が気に食わないのだとしたら、納得できる。何故かはわからないけど、アイツは俺が剣聖であることを完全否定したいんだ」
「……その通りよ」
アレスの言葉に対し、小さく、しかしはっきりと答えたのはミキだった。
彼女は肩に溜まった余分な力を抜き、話し始めた。
「正直、アンタは知らなくても問題ない話なんだけど……」
「いや、教えてくれ」
「……それは、単なる好奇心?」
「……どうだろうな、はっきりとは否定できないかもしれない。でもそれ以上に俺は知らなけらばならない気がするんだ!」
「どうして?」
「俺はこれから、第七部隊と一緒に戦うことになる。それ以前に力が覚醒するまでの間、情けないけど、皆に支えて貰わなければ俺は強くなれない。当然メルスにもだ。アイツとこれから仲間になるためには、どうしてアイツが俺を否定するのか知らなければならいと思うんだ」
(コイツ、そんなことまで考えていたんだ……)
ミキは正直とても驚いている。メルスがなぜアレスを毛嫌いしているのか、彼女は知っている。そしてソレは、簡単には解決しないということも……。
まだ何も知らないからアレスが言っても説得力は薄いかもしれない。しかし彼の眼はどこまでも真っ直ぐなのだ。
ひょっとしたら、彼なら何かを起こしてくれるのではないか……、なにも根拠はないが不思議と彼と会話していると、そんな気にさせられる。
ミキは彼の言葉で迷いが吹っ切れたように、今度は肩だけでなく全身に凝り固まった力を吐き出すように息を吐く。その姿はとても清々しいものだった。
「分かったわ! 教えてあげる。良いわよね、センナ?」
「もちろん! 私は大賛成よ♡」
同意するセンナの表情は見るからに嬉しそうだ。先ほどのアレスの言葉にとても満足したらしい。
一方、閉まっていた筈の給湯室へと繋ぐ扉が僅かに開いている。先ほどの彼らの会話を偶然聞いてしまったものが居たのだ。
(ど、どういうこと!? アレスさんは剣聖の力、天牙に選ばれたって……)
サクラだ!
皆の飲み物を持ってきた彼女は部屋に入ろうとしたところで、中からアレスたちの会話が聞こえてしまい、思わずその場に立ち尽くしてしまった。
剣聖という言葉に彼女の顔は青ざめ、血の気を失っている。体はぶるぶると震えあがり、手に持っているトレイからティーカップがカタカタと音を立て、彼女自身の体が震えていることを伝えている。
しかし彼女はその音も耳に入らないまでに動揺していた。
サクラは自分の存在がアレスたちに気付かれるのを恐れ、静かにトレイをキッチンテーブルに置き、給湯室から第七部隊への扉ではなく、外へと通ずる扉を開いた。そのまま彼女は部屋から、彼から逃げるように走り去って行った……。
「メルスわね、アンタと同じなのよ……」
「同じって、何が?」
「アンタが現れるまで、メルスは神帝教会全戦士の中でもっとも剣聖の可能性を秘めた有力候補だったの」
「え、それってまさか……」
天牙は自身の主を自分で決める刀。何千年もの長き時に渡りながらも誰一人として2代目剣聖になることはなかった。
それでも、剣聖の力を欲した神帝教会は、有力な戦士を『剣聖候補』という名目で仕立て上げ、候補に選ばれた人間は、ほかの人間よりも恵まれたトレーニング環境で、日々己を鍛え続けていた。
しかし、アレスが現れたことにより状況は一変した。まだ彼が力を覚醒させていないため、候補制度は撤廃されたわけではないが、もしもアレスが本当に剣聖だった場合、自分たちは何のために己を鍛え上げてきたのか、分からなくなってしまう。
「ほかの候補者たちも選りすぐりの実力者ばかり、その中でもっとも強く、そして誰よりも努力をしてきたのがメルスよ」
「…………」
「彼が候補者に選ばれたのは200年前、それから彼はただひたすらに自分を鍛えることに励んでいたわ。もっと強くなれば、天牙が認めてくれると信じて……」
「……そうだったのか」
アレスはそれから、言葉を発することはなかった。俯いているため、ミキ達からでは表情が見えない。彼がショックを受けているのか、それとも自分にはどうしようもないと考えているのか、定かではなかった。
そのまま時は流れ、ブラドからの一報によりアレスたちは修練上に向かうことになった。
「じゃあ、行きましょうか。……あれ、そういえばサクラは?」
センナが先導するように部屋から出ようとすると、ふと給湯室に行ったまま戻ってこないサクラの事を思い出した。
「そういえば戻ってこないわね……。なにしてるのかしら?」
気になったミキが給湯室への扉を開けると、サクラの姿はなく、テーブルには温くなった4人分のコーヒーが置かれていた。
(サクラ…………?)
「ミキー、サクラ居たぁ?」
「居ないわぁ、どこ行ったのかしら?」
「ひょっとしたら、先に行っちゃったのかしら……?」
センナは外に出て廊下を見渡すが、サクラの姿はどこにも見当たらない。
アレスも一緒になって探すが、どこにもいないようだ。
「先に行ったんじゃないか?」
「一人で?」
「アンタがサクラを泣かせるからじゃないのぉ?」
「んな訳ねぇだろ。ていうか泣かしてねぇし……」
ミキがアレスに詰め寄りながら言う。その表情はまるで悪戯っ子のような目つきで笑っている。アレスもミキが本心で言っているわけではないと分かっているので、軽く流した。
センナはサクラの事を心配そうに未だ廊下を見渡しているが、ブラドたちが待っていることを考え、修練上に向かうことにする。
「仕方ないわ、私たちは修練上に向かいましょう」
「そうだな、遅れたら逃げたって思われそうだし」
「アンタなら逃げかねないもんねぇ」
「なんだとっ!?」
ミキはまだまだアレスで遊ぶ気満々の様だ。続けてくるミキの挑発にアレスも流石にムキになるが……。
「こら、先に行くって決めたばかりでしょ! 行くわよ」
「「はぁぁい…………」」
センナが何時までも揉めている二人に軽くチョップでお仕置きをして、先導して先を歩く。二人は頭を摩りながら渋々彼女の後ろを歩き出した。
PM4:00
「ほう、逃げずに来たか」
「当たり前だ!」
アレスとメルスが互いの目の前で対峙する。二人の手には修練用の木刀が握られており、アレスは体に馴染ませるためにブンブンと振っている。一方のメルスは自然な佇まい、彼の瞳は真っ直ぐにアレスを見据えている。
「本気で行くぜ!」
「当然だ。加減をするのは俺の方だ」
「なに!?」
「そこまでだ!」
「「っ!」」
「この試合は私が審判をすることになった。私語は慎め、これより模擬戦を開始する。」
ビエラの指示に従い、二人は意識を集中する。アレスは剣道の基本の構えである『中段の構え』。対するメルスは……。
「なっ!」
右腕を伸ばしたまま胴体に垂直になる様に持ち上げている。握られている木刀は必然的に、矛先を真っすぐにアレスに向けられた。左腕は今もだらんと垂れ流したまま、剣道の心得のあるアレスから見れば隙だらけだ。
(ナメていやがるな……)
「勝負…………始め!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
―――ついに、アレスとメルスの戦いの火蓋が切って落とされた―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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毎日更新できねぇぇぇぇ!




