表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第ニ章 覚醒編
32/64

第三十一話 挑発

第三十一話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

PM3:20


「す! れす! アレス! しっかりして!」


「う、うぅ……」


 遠くの方でセンナに呼ばれているような声が聞こえ、アレスはゆっくりと目を覚ました。

 周りを見渡すと、自分を取り囲むようにセンナとミラ、それと、鮮やかな緑色の髪の少女が近くで座り込んでいた。歳は10代前半くらいだろうか。とても幼く見える。


 なぜかその少女は、今にも泣きだしそうに、髪の色と同じく綺麗な緑色の瞳を涙で揺らしながらアレスを見つめている。あからさまに泣き出すのを必死に堪えている様だ。

 これが自分を心配しての涙だったら良いのだが、生憎アレスはこのような少女とはあったことが全くない。初対面の相手がいきなり倒れたとしても、涙まで流す人はいないだろう……。だからこそアレスは、逆に自分がこの子に何かヤッてしまったのではないかと、少女の顔を見た時思わずギョッとしてしまった。

 ちなみにブラドとメルスはテーブルで呑気にティータイムを楽しんでいる。


 アレスは眼前の少女に何とか泣かれまいと、慌てて話題を作ろうとする。


「なんか、花畑が見えた気がした……」


「ひょっとして、あの世が見えたってこと? ここ、あの世なんだけど……」


「………」


 今アレスはボケで言ったのではない。話のネタを適当に考え、とりあえず思いついたものを口に出した。結果、とんでもない墓穴を掘ってしまい、おまけにセンナに鋭くツッコミを入れられてしまった。

 あまりのドジっぷりにアレスは何も言えなくなり、話題を振るどころか、逆に部屋はシーンっと静まり返ってしまった。冷たい空気に余計居心地を悪くしてしまったアレスは何か手を打たねばと必死に打開策を練る。


(おいやべぇよ、皆無言だよ。ミキなんてなんかスゲェ冷たい目を向けてきてんだけどぉ、なにこの痛い視線……)


「おう、目が覚めたか?」


 冷たい空気を何とかせねばと試行錯誤をしていたアレスに助け舟を出したのはブラドだ。まるで今のワンシーンがなかったかのように呑気な声で話しかけてきた。


「まったく、仲間を紹介するためにここへ連れてきたってのに、来て早々気絶しやがって」


「きぜつ? ……あ、」


 ブラドに指摘されてアレスは思い出した。自分が何故こんなところで眠っていたのか。いきなり自分の頭上に人が現れ、持っていた椅子の座席部分がヘッドショットしたことが原因だった。


 思い出したことにより、自然とアレスは、自分の隣に座りこみ、未だ泣きそうな顔をしている少女の方を横目で見た。

 目が合った瞬間少女は一層怯えた表情になり、慌てて目を閉じる。体がぶるぶると震え、まるで猛獣に襲われそうになっている小動物のようだ。


 彼女の様子から、アレスは頭の中ですべてを察した。早い話が、椅子をぶつけてきたのはこの少女なのだ。


(はぁ……なんか、こういうパターンばっかりだな、俺)


 アレスは心の中で、これまで出会ってきた人たちとの出会いのシーンを思い出していた。


・ミキ:銃で撃たれる


・ルドウ:解剖される


・メルス:剣で斬られそうになる


・ブラド:名前改名される


・ビエラ:鞭で叩かれる


・センナ:ビンタされる 後に()()()()


(まともなヤツがねぇぇぇぇぇっ!)


 もはやアレスは、目の前の少女に椅子をぶつけられたことなど、どうでもよく感じてしまった。


「あぁ、うん。まぁ、なんだ……気にするな」


「え?」


 少女はアレスの言葉にゆっくりと目を開け彼を見る。まだその瞳には不安の感情が浮かび上がり、涙が今にも零れ落ちそうだった。

 しかし、今度はアレスは動揺することもなく、落ち着いた口調で自分の気持ちを伝える。


「変な話だけど、俺こういうの慣れててさ。もうなんかワンパターン……みたいな?」


「………」


「だからさ、あれくらい気にしてないから! 君も気にしないで!」


「っ! はい!」


 アレスの言葉に、少女は慌てながらも力強く返事をした。

 タイミングを見計らったかのように、再びブラドが声をかける。


「よし、仲直り出来たところでアレス! 紹介しよう、内の()()()()『サクラ』だ」


「よ、よろしくお願いします! サクラです!」


 サクラは緊張した口調で自己紹介をして、勢いよく頭を下げた。小さな体に幼い表情が加わって、動作がいちいち可愛らしい。

 逆にアレスはとても落ち着いた表情で挨拶をする。


「こちらこそ初めまして。あれの」


「ん、んんっ!」


 荒野 優と名乗ろうとすると、後ろからブラドが如何にもわざとらしそうに咳ばらいをした。まるで何か(名前)を訴えかけるように。


(もともとそっちが本名なのに、まさか自分で名乗るとはなぁ……)


「は、初めまして……アレスですぅ」


「は、はい!」


「あはは……」


 アレスの自己紹介にサクラは相変わらず緊張気味に答えている。アレスはそんな彼女に対し、怖がられない為に、ごく自然に対応するつもりだったのだが、結果はだいぶぎこちないものだった。言うまでもなく、名前が原因である。ブラドはアレスの自己紹介に満足したように腕を組みながらコウコクと頷いている。すべてを知るセンナとミキは彼の心境にただ苦笑いをするだけだった。ちなみに、メルスもすべてを知る一人なのだが、知らぬ存ぜぬというように全く関わろうとしない。


「よし、自己紹介が終わったところで、アレスは我ら第七部隊が鍛えることになった。皆でコイツを一人前の戦士にしてやろうぜぇ!」


 大きく腕を突き出し、親指を天に向けてピンっと立たせている。俗に言う『サムズアップ』だ。

 二っと口を開け、白くきれいに整えられた歯がキラーンと輝いているように見える。顔もそこそこイケメンなので非常に男らしく……


(見えねぇんだよなぁ……メイド服のせいで!)


 発言も行動も非常に頼りがいがある。隊長を務めているのも納得できる。自分の身内にこんな人がいれば、紹介したくなるほどだ。でも出来ない! メイド服を着ているオッサンなんて本当に身内に居たら思わず他人を装いたくなるだろう。

 センナ達もブラドの言葉に否定こそしないものの、雰囲気に飲まれてしまい、再び部屋は冷たい空気に包まれた。


「ったく、要は伝説の剣聖を私たちの手で育てろってことね。笑い話ならよくできてるわ」


 しかし、そんな静寂を破ったのは、呆れたように現状を話すミキだ。

 彼女の気持ちはもっともだろう。剣聖はかつて、勝負では負けたものの、結果的に滅びかけていた世界を救っているのだ。それは伝説となり、現代まで語り継がれている。

 そんな英雄のような力を持つ可能性のある人材が果てしない年月を経て漸く見つかったというのに、その力が覚醒するまで育てなければならないというのだ。

 センナは肺の底に溜まった息を、心の中にある不満と一緒に吐き出すように大きなため息をついた。


(ん? 剣聖ってどういうこと? そもそもアレスさんって何者?)


 サクラは心の声を口に出すことはなかった。人知れず迷いを体で表現するように首を傾げる。


「隊長、その必要はないのでは?」


「どういうことだメルス?」


「いちいち育てなくても、コイツが()()()()()()()()()()()()()ということです」


 メルスはゆっくりと立ち上がり、アレスに向かって真っすぐに指を向けた。

 その眼には一切の迷いを感じない。自分の言っていることは正しいと言葉ではなく、態度で伝わってくるようだ。


「……何をさせる気だ?」


 ブラドは腕を組み、メルスを訝し気に見つめる。


「簡単な話ですよ。俺がこのヴラカスと模擬戦をするんです」


「「「っ!」」」


 メルスの言葉にセンナ、ミキ、サクラは衝撃が走ったかのように目を見開く。慌てるようにミキとセンナがメルスとアレスの間に入り、彼を止めようとする。


「アンタ話聞いてたの!? コイツまだ力覚醒していないのよ!?」


「だから何だ? 覚醒していなくても木刀を振るくらいは出来るだろう?」


「無茶よ! アレスはまだ何の訓練も積んでないのよ?」


「センナ、君はそんな素人(ルーキー)を剣聖だと言うのだろう?」


「っ!」


「何も壊そうと言うんじゃない。ただ試そうと言っているだけだ」


「「…………」」


 メルスの言葉に二人は押し黙ってしまう。確かに彼の言うことは一理あった。通常戦士になるにはそれ相応の訓練を行ってからが一般的なのだ。それには長い年月を費やし、ゆっくりと確実に力をつけていかなくてはならない。しかしアレスは生者なのだ。いつまでもこの世界にいる訳にはいかない。いちいち帰っては都合の良い時に訓練というだけでは、通常より遥かに効率も悪く時間がかかってしまう。問題は山積みだ。


 しかし、メルスの本心はその事ではないと二人は気付いていた。先ほどメルスは『剣聖でないことを証明』と言ったのだ。彼は模擬戦でアレスを完膚なきまでに叩きのめし、見ている者達にアレスは剣聖でないと証明するつもりなのだ。『試す』というのは建前で、彼の本心はアレスを倒すことだということは明らかだった。


「……アレス、おまえが決めろ」


「隊長!?」


 メルスとセンナ達の会話を黙って聞いていたブラドは、アレスに答えを求める決断に出た。

 センナはブラドの言葉に反論をしようとするが、それよりも早く、アレスが口を開いた。


「受けるぜ! その模擬戦!」


「「「っ!」」」


「ふっ」


 アレスは考えるような素振りは一切見せず、その発言に全く迷いを感じない。真っ直ぐにメルスを見据えながらはっきりとメルスからの挑発を受けた。

 アレスの言葉にもう一度衝撃が走るセンナ達、メルスはアレスの態度が気に食わないというように顔をしかめ、ブラドはアレスの言葉に若干口元を上げている。

 この時、アレスが何を思ってメルスの挑発を受けたのか、誰にも分からなかった。しかしブラドは、アレスの言葉にすぐに応える。


「よし! では修練場の確保が出来次第模擬戦を開始する。それまでに準備しておくように!」


「「はいっ!」」


次回、アレスVSメルスの戦いが切って落とされる!

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


毎日投稿してる人マジで憧れる……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ