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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第ニ章 覚醒編
30/64

第二十九話 デュナミス

第二十九話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

PM2:55


「デュナミスっていうのは、魂から生成されるオーラを具現化したものだ」


「オーラ?」


「言うなれば気迫のようなものだ。お前もその年になるまでにいろんな人と出会っただろう? その中に『この人は気迫が凄いなぁ』とか、『めちゃめちゃ気合入っているなぁ』とか感じたことはあるだろ?」


「あぁ、そういうことか……」


 たしかにアレスには思い当たる節がいくつかあった。その中で最も多かったのが、剣道の試合の時だ。思わず怯んでしまうほどに気合の入った奴が居たのを彼は覚えていた。

 今思えば、彼らもオーラのような気迫が体から漏れ出していたような気がする。

 ああいうのをブラドは言っているのだとアレスは認識した。


「オーラは死者だけのものではない。魂が生まれた瞬間より誰でも持っている。だが、オーラの強さは人それぞれだ。気合がまるで感じられない奴のオーラは薄くて消えちまいそうなほどに弱いものだが、その逆は一目見ただけで強いことがはっきりと分かる。……近年は弱いオーラばっかりの奴ばっかりで、少々嫌になるがな……」


 最後に小声で愚痴のようにブラドが言ったことをアレスは正確に読み取った。世の中には努力をまるでしようとせず、物事に対し、なる様になれば良いと考える人は山ほどいる。

 というより、そういう人が年々増え続けているような気さえアレスはしていた。便利なものが増え続けるにつれ、汗を流して努力をしようと考える人が減ってきているのかもしれない。

 故に、強いオーラを持つ者が少なく、その点についてブラドは、ひょっとしたら神帝教会そのものが頭を悩ませているのかもしれない……


「まぁ、そういうことだ! アレス、お前は真っ直ぐに物事を考えることが出来る上に、なかなか肝が据わっている。今時珍しいタイプだ!」


「そ、そうかなぁ?」


 いきなり自分が褒められるとは思っていなかったので、優は照れ隠しに後ろ頭を痒いて誤魔化そうとするが、頬がにやけきっているのでまるで意味がなかった。

 センナはそんな二人のやり取りを、微笑ましそうに優しい眼差しで見つめていた。


「だが、お前のオーラはまだ覚醒していない! それは断言できる」


「そりゃ、俺が生者だからだろ?」


「いや、そうじゃない。覚醒者には一つ共通点がある」


「共通点?」


「覚醒者は、能力を発動させられるようになったとき、瞳の色と髪の色がオーラと同色になる」


「え、マジか!?」


 瞳の色と髪の色が変色するということだろうか? そんなことが人体に……いや、死者の体は魂その者でできているから、まったくあり得ないとは言い切れない……。

 それに、そう考えれば目の前にいる、センナやブラドの瞳の色はそれぞれの髪の色と同色だ。彼らだけではない。ミキはピンクで同色だったし、メルスに至っては瞳や髪に留まらず武器の色まで金一色だった。あれが全部オーラの色だったのなら、たとえ見たことがない彼女たちのオーラも何色かは一目瞭然だ。

 それ以外にもアレスには思い当たる節がもう一つあった。それはセンナだ!

 初めて彼女に会ったとき、リガードという男と戦っている彼女の体を、鮮やかな青い光が包んでいた。その色はセンナの瞳と髪の色と確かに同じだった。あれがオーラなのだ!


「じゃ、じゃあ俺は……?」


 自分の瞳の色と髪の色は生まれた時からの黒だ。一度も染めたことがないからこそ、日本人らしい色ともいえるだろう。

 そんな彼のオーラの色が真っ黒だった場合、さすがにそれは嫌だなぁと思ったアレスは恐る恐るブラドに聞く。


「だから言ってんだろ! お前はまだ覚醒していないって!」


 ブラドは若干呆れたようにアレスの額を小突いた。


「まぁ、いつ覚醒するかは人それぞれだ。()()()即効覚醒した奴もいれば、めちゃめちゃ時間かかった奴もいる」


「な、なるほど……」


「でだ! 『オーラ』の説明については、これでだいたい分かったと思うが、『デュナミス』については寧ろここからだ」


 ようやく本題に入れたというような表情で、ブラドは淡々と説明していく。


「さっきも言ったが、デュナミスとはオーラを具現化したものだ。オーラ自体はすべての人間が魂に宿しているが、それを覚醒させられる奴はそうはいない……」


「どういうことだ?」


「俺もセンナも、元々はお前と同じ生者だった。もうどんだけ昔の話か覚えちゃいないがな……。まぁなんとなく死んで、六道の世界に入った」


「ブラドさんたちも六道に?」


「当たり前だ! いきなり神帝教会のメンバーに入れるわけねーだろ!」


「あははは、なんか抽選で選ばれるのかなぁって……」


「んなわけあるか!」


 抽選で神帝教会のメンバーに入れるなどあり得ない……というより、現世の就職活動でも絶対にありえないと言っていいだろう。抽選とは言うなればくじ引きだ。そんなもので自分の会社に働かせる人を選ぶ組織などあるはずがない。

 アレスの()頓狂(とんきょう)な発言に対し、ブラドは盛大にツッコミをいれ、センナは苦笑いをするしかなかった。


「六道へ送られてきた者達とは即ち死者だ。死者たちは六道にて己の人生を振り返りながら時には喜び、時には嘆く。多くの人間は生きてきた人生に対し、満足するようなことはなく、後悔と無念から出てくる『負の感情』でオーラが()()()()()()


 オーラとは己の魂から溢れ出てくる気迫そのもの。おそらく、後悔の念に囚われることで気迫が弱まり、それがオーラの弱体化につながっていくのだろう。


「だが世の中には、それなりに自分の人生に誇りを持ち、振り返るたびにオーラが強くなっていく者達もいる」


 自分の人生に対し、何かしらの目標を立てることで、それを達成した喜びなどを人生を振り返るたびに感じているのだろう。己が誇らしいと感じているからこそ、気力が満ち満ちてオーラが()()()()()()()ということなのだ。


「そして、オーラが強くなっていく人間の中で、稀に、オーラがその人間を覆いつくし、新たな進化を遂げさせることがある。それこそが『覚醒』だ!」


 自分の魂の中に入りきらなくなる程の大量のオーラは、その人の体、つまり魂から溢れだし、瞳の色と髪の色を変色させる。それこそが覚醒なのだ。

 アレスには全ては伝わらなかったが、大まかにはそれを理解した。同時に、今自分と話しているブラド、そしてそれを黙って見守っているセンナは、自分の人生に誇りを持てたからこそ、今の姿になることが出来たのだと理解した。

 限られた自分の人生を精一杯生きることが出来なければ、そんなことは不可能なはずだ。

 初めてアレスは、二人に、そしてこれまで出会ってきた死者たちに憧れの感情を抱いた。


「アレス、お前はまだ人生を生き抜いたわけじゃないが、気力とはそもそも自分に自信を持つことだけで生まれるもんじゃぁない」


「つまり?」


「つまりだ。お前にとって譲れないもの、守りたいものが脅かされそうになった時、それに対してお前は黙って見るだけか、それとも違うのか。お前が覚醒するには()()()()()()()()()になっていると俺は思っている」


「………?」


 アレスは今のブラドの言葉の意味がまるで分からなかった。

 この時、ブラドはストレートに答えを言わなかったのには理由があった。

 アレスはまだまだ成長段階だ。ここで自分が手取り足取り教えては、かえって彼が覚醒することが出来なくなるのではないかという可能性を考慮しての事だった。

 今はまだ、ブラドの言ったことをアレスは理解出来ずにいる。だが、それが正しいのだとブラドは思っている。

 彼が自分の言いたかったことを理解し、力を覚醒させらるのかはブラドにも分からない。

 しかし、アレスにたしかな可能性を感じているからこそ、自分がこれ程までに彼を育てたいのだとブラド自身は思っていた。


 ブラドは、今も腕をくみ、自分の言った言葉の意味を真剣に考えるアレスの姿に、まるで自分の子供の成長を見守る父親のような視線を送っていた。


「さて、まぁ早い話が、お前が覚醒できるかはお前次第ということだ。先を行くぞアレスゥ! 第7部隊の部屋はもうすぐだ」


 そういうとブラドはアレスの襟を掴み、引きずるような形で再び歩き始めた。

 以前なら抵抗していたアレスは、もう慣れたのか、それともブラドの言ったことが気になるのか、無反応でそのまま腕を組み、考えるようなポーズで引きずられて行った。


(無反応だと、妙な光景ね……)


 センナはそんな二人の姿に若干顔をひきつりながらも、遅れまいと二人の後に続いた。

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


己の人生を精一杯生きる……とても難しいことだ!

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