第二十七話 優の存在
第二十七話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
「俺は……部隊には入らない!」
「「「っ!」」」
優の言葉に、ブラドも、ルドウも、ビエラも一瞬驚いた顔をしたが、まったく予想していなかった回答ではなかったので、すぐに表情を戻した。
センナは目をつむって優の続きの言葉を待っている。
当然、優の回答にはまだ理由が含まれていない。それを聞かなければブラドたちを納得させることは出来ないだろう。
いや、むしろ部隊に入らないということは、残ったもう一つの選択肢を選ぶということになる。
優は真っ直ぐに前を向き、口を開いた。
「でも、解剖は断る!」
「なにっ!?」
優の言葉に今度こそ声をあげて驚いたのはビエラだ。最初に部隊に入らないと答えた以上、彼に残った選択肢は『解剖』以外にない筈だ。
それを大見得を切って断ると言ってきたのだ。ビエラが驚くのも当然だろう。
一方、ブラドとルドウは未だに表情を崩さない。優が何故その答えに至ったのか、その答えを一言一句聞き漏らさぬようにと、鋭い視線で優から目を離さなかった。
「考える時間をくれた後、センナにいくつか質問をしたんだ。そしてそれを聞いた後、俺なりに真剣に考えて出した答えだ」
「ほぅ、では儂らにも聞かせてくれんか? その質問とやらを。いや、その質問から何故この答えに至ったのかを」
ルドウの言葉に、優はしっかりと頷いた。
―――時を遡る―――
PM2:00
「分かったわ。何でも聞いて!」
「うん、じゃあまずは、俺は現世に帰る事が出来るのか?」
「それについては安心して。優が気絶しているときに総隊長が決めていたの。たとえ天牙が見つからなくても優を現世に帰すって」
「随分すんなり帰してくれるんだな……」
「仕方ないわよ。優にはまだ現世での居場所がある。急に姿が消えたとなれば、大騒ぎになるわ」
「あぁ、そういうことね……」
気前よく帰してくれるのかと思いきや、ただ騒ぎを避けたいだけという理由に対し、優は苦笑いをするしかなかった。
「ただし、この世界で見たこと聞いたこと、この世界のすべての事について他言は厳禁! もちろん私たちについてもね!」
「分かっているよ。もともとそういう約束だったし」
(と言ってもこんな話、たとえ話しても誰も信じないだろうけどなぁ……)
優の思うことは至極当然である。現代では、あの世があると思っている者も日本では少ない。
それを実際はあったと言い、しまいには自分が行ってきたと公言すれば、精神科医を紹介されるのが関の山だった。
「まぁ良いや。次に、俺が部隊に入ったとして、もし壊された時、現世での俺はどうなる?」
「えっ!……あぁ、そういうことね……」
「一応、俺まだ家族いるし、いきなり部屋で死んでいたってのは無理があると思うぞ?」
「そうね……じゃあ、赤信号の歩道に優の体を投げ飛ばすっていうのは?」
「殺人事件!?」
「いいえ、だってもう死んでるもの」
「そういう問題じゃねぇだろっ!?]
「大丈夫。自然な形に……ぼうっとしていた青年が、赤信号に気付かず飛び出した風にするから」
「なんか言っていることが暗殺者みたいなんだけど……」
ツッコミどころは沢山あったが、センナの様子から察するにこのことはまだ未定なのを優は理解した。優は『ふぅっ』と一呼吸を置いた後、次の質問、最後の質問に移ることにした。
「最後に、俺の存在について聞きたい」
「存在?」
「今の俺は生者なのか、それとも死者なのか?」
「あぁ、そのこと……ね……」
センナは腕を組み、考えるように目を閉じた。
現世に居た頃、センナははっきりと『幽体離脱はあり得ない』と言った。ならば今の優の存在、すなわち立場はどうなのか。彼女はどう答えたら良いのか迷っている。
優はセンナを急かすこともせず、じっと答えを待っている。
センナが瞼を上げ、少しためらいがちに答えた。
「正直、分からないわ。……前にも言ったと思うんだけど、優の状態はすごくイレギュラーなの。生身に戻れる時点で死者ではない……でも霊体の時点で生者でもない……私には答えられないわ」
センナはとても申し訳なさそうに答えた。しかし優はそんなセンナに不満を言うことは一切なく、むしろ、満足したような顔をしていた。
「ありがとう! センナ」
「えっ!?」
「センナの今の答えってさ、すごく真剣に考えなければ出てこないと思うんだ。だから、ありがとう」
「そ、そんな! 聞かれたことに真剣に考えるのは当然の事でしょ!?」
「ううん、俺は違うと思う」
優は笑顔を絶やさず、センナの瞳を見つめていた。その視線は優しくて、でもどこまでも真っ直ぐなものだった。
センナはその視線に囚われたかのように、優から目を逸らせなかった。
「センナはさ、俺に部隊に入って一緒に戦ってほしいって思っているだろ? いや、少し違うか。正確には俺じゃなくて……剣聖に」
「っ!」
「センナが剣聖に、何を求めているのかは分からない。でも、何か希望のようなものを抱いているのは分かるよ……」
「そ、それとこれとは!」
「同じだよ。仮に俺が解剖を受けて、刀が見つかったとしても……君は納得しないんじゃないかな?」
「っ!」
優の指摘にセンナは何も答えることが出来なかった。沈黙は図星とも解釈できる。
優はセンナの返答を待たずに続けた。
「刀を取り出すことが出来ても、それは解決にはならない。俺と君が出会う前の状態に戻るだけだ。……これは俺の予想だけど、センナは刀が誰かを選ぶのをずっと待っていたんじゃないか?」
「っ!」
「そして俺という存在が現れたから、最初は涙を流して喜び、俺を殺してまでこの世界に来させた」
「………」
センナはとうとう優と目を合わせられなくなり、逃げるように視線を逸らした。
優の眼差しは依然厳しいものではない。まるで友人と会話しているかのような極普通のものだった。だが、どんどん核心に迫ってくる彼の言葉はセンナに大きなプレッシャーを与えている。
「センナ。君は人に何かを強制させるような人じゃないと俺は信じている。でも、君だって何かを求めることはあると思うんだ。そして君が俺に求めているのは、剣聖としての力を発揮して君と、神帝教会と共に戦うこと!」
「っ!」
「だからこそ、俺の質問に対し、ウソの情報を教えて仲間になるように誘導することは出来たと思うんだ。でも君はそんなことはせずに、正直に答えてくれた。だからありがとう!」
優はセンナに頭を下げ、精一杯の感謝の気持ちを彼女に届けた。
センナは驚きのあまり言葉も出ず、目を見開いた。優は彼女の本心にとっくに気付いていた。気づいて尚彼女の立場を考え、自分を掌握する可能性を考慮しながら話し合いをしていたのだ。
まるでルドウ博士のデュナミスのように、心を覗かれたような気分だ。
彼が相談をしているときも、説明をしていた時も、視線はまるで友達と会話するかのような自然なものだった。だが実際は違った。その瞳は、ただセンナを見ていたのではない。相手のすべてを見透かすために研ぎ澄まされた『千里眼』だったのだ。
ただ、優はやはり一般の人とはどこか違うところがあるのも確かだった。
そこまで見据えていたからこそ、彼はセンナが真剣に考えてくれていたことに感謝し、頭まで下げた。
礼儀やマナーではない。相手の気持ちをくみ取ったからこそ、最小限ではなく、最大限にその心意気に応えようとする。こんなことまでする人をセンナは今まで見たことがなかった。
というより、人によっては『そこまでする必要はない』と感じる人。『やり過ぎだ』と批判する人さえも少なくはないだろう。それほどまでに優の感謝の気持ちは大きかった。
だからこそ彼の行動はセンナに大きな衝撃を与えた。どう答えたら良いか分からず、センナは言葉に詰まり、なにも言えなった。
優はセンナの返答の前に頭をゆっくりとあげ、眩しい程の笑顔で言った。
「センナのお陰で、答えが決まったよ!」
「えっほんと!?」
「あぁ! 俺いまスゲーすっきりしてる。これぞ迷いが晴れたって感じだ!」
優はとても心地よさそうに大きく背伸びをした。
もうその顔には、一切の迷いは感じない。優は本当に答えを見つけられたのだとセンナは思った。
優は満足したのか、勢い良く立ち上がった。
「よし、戻ろうセンナ! 決まった答えは向こうで話すよ」
「……うん、分かった。楽しみにしてるね!」
「おう!」
もうセンナも、いつもの表情に戻っている。いや、それ以上にセンナもどこか吹っ切れたような顔だった。
(優、貴方がどんな答えを出したのか、私には分からない。……でも貴方の答えなら不思議と納得できそう。今ならそう思える……)
センナと優は横並びになり、話し合いの場に向かって行った。
―――現在に至る―――
「俺はイレギュラーな存在。……生者なのか死者なのか、自分でも分からない。だったら、己が何者なのか、自分で決めてしまおうと思ったんだ」
「自分で決めるだと!?」
ビエラは正直優の考えがまるで読めなかった。彼女だけではない。ブラドもルドウも、センナでさえそうなのだ。ただセンナだけは、優の言葉に耳を傾けながらも、目を閉じるばかりで驚く表情は一切見せない。
なぜ彼女だけは驚かないのか。その答えは、センナだけが答えを知っているとか、そういうわけではない。ただ、優がイレギュラーなのは存在だけではないと、理解しているかどうかの差だった。
センナにも、この後優が何を言うのか見当もつかない。ただ、彼は自分たちが予想もしない答えを用意しているのだろう、と彼女は心のどこかで確信していた。
優は着々と話を進めていく。
「自分は生者でもなく死者でもない。そう言う考えだからこそ、いつまでも答えが見つからないのだと俺は思う。だから、考えそのものを変えることにした」
「して、その考えとは? アレスは自分の存在をどう考えたのだ?」
………………………………
すぅぅ、はぁぁ。
優は大きく深呼吸してから、はっきりと答えた。
「俺は……生者と死者の掛け持ちした存在なんだと」
「「「はぁっ!?」」」
「生者の俺も、死者の俺も、どっちも俺なんだ。だったらどっちかに拘らず、どっちも取ることにした」
「それで、お前はいったいどうするつもりなのだ……?」
もはや会話についていけなくなったビエラが、呆気に取られながらも今後の方針について尋ねた。
「神帝教会のメンバーは死者の集まりなんだろ!? だったら生者である俺が入るわけにはいかない。でも解剖なんてされたら生きている自信ないから、断る!」
「「「………」」」
三人とも言葉が出てこない。優の言葉は、言うなれば詭弁だ。彼が生者であることは誰にも否定することは出来ないだろうが、だからといって死者の組織、神帝教会のメンバーに入らなくて良いというのはいささか無理があるだろう。
解剖に関しては論外だ。
「だけど、何もしないでこのまま返してくれるとは思っていない。そこで、頼みたいことがある」
「はぁ……なんだ? 一応聞いてやる」
ビオラは心底疲れたという表情で、ほとんど投げやりに聞いていた。
「俺を鍛えてくれ!」
「「「……はっ!?」」」
これまた優の予想外の言葉に再び三人は呆気に囚われることになった。
優は続けざまに言った。
「俺の中に剣聖の力が入っているんだろ!?
偶然だけど、俺は一度センナに救われたし、ミキにも救われた。ブラドさんにも、あの金髪野郎から助けてくれたしな! だから俺は、その恩を返すために、エキストラ戦士になる!」
「「「………」」」
呆然と立ち尽くすとは、まさに今の彼女らの姿を言うのだろう。口を小さく開き、目は優を見ているはずだが、どこか遠くを見ているようだった。たった一人を除いて……
「プッ」
「「「っ?」」」
「あはははっ! やっぱり優はすごいね!
びっくりしちゃったぁ!」
「え、そんなに意外だったか?」
「そりゃそうだよ。『生者と死者の掛け持ち』とか、『エキストラ戦士』とか、聞いたことないもん。というか、普通思いつかないよ!」
「そうかなぁぁ?」
優と話をしているセンナは実に楽しそうだった。彼の回答は、十分にセンナにも衝撃を与えた。ただセンナは、この話し合いで自分は必ず驚くと予測していた。いや、もう分かっていたと言う方が正しいのかもしれない。
そんな彼女の対応が後押しをしたのか、三人の中で一番調子を取り戻したのはブラドだった。
「ナッハッハッハー! アレス! お前の頼みというのはよく分かった。ならば俺が率いる第七部隊が責任をもってお前を鍛えてやろう! それで文句はないだろ?」
「あぁ!」
ブラドの提案に対し、優は大きく頷いた!
ルドウとビエラも、『やれやれ』という表情をしたのち、元のモチベーションに戻った。
「良かろう! アレス。お前を我が神帝教会のエキストラ戦士に任命する!」
「はい!」
「よし、アレス。ならば一度俺の部隊に来い! メンバーを紹介してやる」
「あ、そうだ。そのアレスっていうの出来れば辞めてもらえたら「行くぞー! アレスゥ!」聞いてねぇや」
「ナッハッハッハー!」
―――こうしてアレスは、神帝教会初のエキストラ戦士になるのだった―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。
これにて第一章完結致しました。
ファンタジーなのにバトルシーンが少なかったと思う方も沢山いらっしゃるかと思います。
続きます第二章からは、戦士になったばかりの優がいきなり~~~!?
ぜひ見に来て下さい!




