第二十五話 選択
第二十五話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM1:20
「やめろぉぉぉっっ! 来るなぁぁぁっっ!」
少しずつ近づいてくるルドウ博士に一歩二歩と後退する優。二人の距離は一定のままだが、ここは部屋の中、どれだけ広かろうともいずれは壁に退路を塞がれる。
優はどうにかしてこの場を打破しようと考えるが、センナたちが黙って見守っているところをみると、助け舟は期待出来ない。
自分一人でどうにかしなければならないこの状況下で優は必死に頭を働かせる。
(そうだ、隙をみて爺さんをすり抜けて、出口まで全力疾走! あの老いた体なら追いつけねぇだろ)
(たしかに追いかけっこは面倒じゃのぅ)
(ふっふっふ、そうだろそうだろ……はぁぁっ……)
(またこのパターンか)と、優は心の中でため息をついた。ジト目でルドウ博士を睨むと、年甲斐もなくいたずらが成功したことを喜ぶ子供の様に、にやけていた。
そうだった。ルドウ博士は他人の心の中に干渉出来るのだった。『デュナミス』と言うらしいが、優はまだその詳細を知らない。
だが、このまま策を練っていたところで、それが全部筒抜けだったのでは意味がない。
ルドウ博士は依然優の体に近づいてくる。
(そうだ、いっそのこと無心になれば……その後どうすんだよ……)
『無心』とはつまり『何も考えない』ということだ。何も考えなくては何もできない。捕まるのを待つだけだ。だからこそ、優は完全に手詰まり状態だ。
「だいたい、解剖なんてしたら俺死ぬって!」
「もう死んどるじゃろうが」
「そうだけど、そうじゃねーだろっ!?」
自分が死者の体である以上『それをされたら死ぬ』という表現は使えない。
すでに死んでいるからこそ、何をされても本人の精神バランスが崩れない限り、魂が壊れることはないため、その気になれば『意識のある人間』を解剖することも出来るのだ。
しかし、自分が解剖されている状態で冷静を保てる人間なんているのだろうか。少なくとも優にはそんな自信は皆無だった。
切羽詰まった表情で何とかこの場をしのげないかと必死に周りを見渡しながら策を考える。
「無駄じゃよ、小僧。儂は人の心が読める。もういい加減分かっておるじゃろう」
「それでも解剖なんて御免だ! そんなことされたら俺死ぬわぁ!」
「じゃから、もう死んどるって」
そんな二人のやり取りを部屋の片隅から見ていたセンナたちは黙って見守るのみだった。
できることなら優を助けてあげたいセンナだが、優の中に天牙がある可能性がある以上、調べなければならないのはたしかだ。
優を剣聖だと本気で信じている彼女だからこそ、ここで止めるわけにはいかなかった。
(アレスには気の毒だが、やっぱり解剖を……まてよ。アレスの魂の中に天牙があるのなら……)
「その解剖、ちょっとまったぁぁっ!」
センナ同様黙って優達の様子を傍観していたブラドが何かひらめいたようにルドウ博士に待ったをかけた。
一同はブラドの方に振り向き、何事かと彼を見つめる。
「アレス! 俺の部隊に入るか否か、今ここで決めろ!」
「………はっ!?」
(いきなりこの人は何を言い出すんだっ!?)という表情で優は返事をする。当然だろう。今にも解剖されそうなこの状況に対し、何をどう考えたら部隊に入るかどうかを決めるという発想にたどり着くのか。ブラドの考えがさっぱり分からない。
他のみんなも、ブラドの思惑が分からないようで首をかしげている。
全員の気持ちを代表してか、センナがブラドに尋ねた。
「隊長、今それを決める必要が?」
「おおありだとも! アレスの中に天牙が隠されていると仮定するなら、天牙が自らアレスの中に入ったということだ。センナの言う通り、天牙がアレスを選んだということになる。となると、考えられるアレスのデュナミスは……」
「ま、まさかっ!?」
「なるほどな」
「一理あるのぅ」
「優、貴方やっぱり………」
「……え、なに?」
優にはブラドの言っていることがすぐには理解できなかった。
しかし、優以外は全員納得したようでブドウ博士も優に近づこうとしていた足を止めた。
ビエラも同じく納得したように腕を組み、センナに関してはとても嬉しそうに胸の前で手を握っている。その逆にメルスは至極不満そうに優を睨みつけている。
優自身は何もしていないのだから、睨まれてもどうすることも出来なかった。
(デュナミスってたしか能力って意味だったよな……アレスのデュナミスってことは俺の………)
「まさかっ!?」
ここで優もブラドが言おうとしたことが理解できた。アレスのデュナミスということは優の能力ということだ。能力といえば目の前のルドウ博士の心を読む能力『ヴレポ・カルディア』であったり、センナの水を操る能力『エレンホス・ネロ』、あと詳しい能力は聞いてないが、ルドウ博士が言っていたミキの能力『スコペフティス』。おそらく、ブラドやビエラやメルスにも、それぞれ特殊な能力があるのだろう。
そして、それを駆使して、『レース・ノワレ』と戦うということは優も予想は出来ていた。
しかし、まさか自分にまで能力があるというのだろうか、しかもブラドの言おうとしていることは、例の伝説剣聖、天牙が優の能力になるということだ。それはつまり、剣聖と同じ能力を優も使えるということではないだろうか。
そこまで考えた優は、さすがに考えすぎかとも思ったが、センナがあれほど喜んでいるところをみると、あながち間違っていないのではないかと思えてくる。
「どうするアレス。部隊に入るか! 解剖されるか!」
「…………」
優にとっては『究極の選択』と言っても過言ではなかった。
解剖は何としても避けたい。自我を保てる自身がないからだ。しかし部隊に入るということは、あのドラゴンたちと自分も戦わなければならないということではないだろうか。
優は軍人ですらない。戦場に立てと言われて『はい、分かりました』とはいかないのだ。
今すぐに答えを出すなんてことは優には到底できなかった。
そんな優の心をルドウ博士は得意の能力で読み取り、一つため息をついてから提案を出した。
「ブラド、この返答は少し待ってからでも遅くはなかろぅ。今は小僧に時間をやるべきじゃないか?」
「……そうだな、少し時間を空けてから」
「必要ないのでは?」
同意の言葉をかけようとしたブラドの言葉を遮り、冷たい言葉を発したのはメルスだ。
「今答えられないのはソイツに戦場に立つ覚悟がないということ。そんな臆病者が剣聖な訳が」
「まぁまぁそう言うなメルスゥ!」
いかにも優を突き放すような言葉に待ったをかけるブラド。メルスの肩に手を置き、落ち着くように促す。
「お前も知っての通りアレスは『生者』だ。いきなりあんな光景見せられて、臆さない奴はいねぇだろう?」
「………」
「少しだけでいい、時間をやろうぜ?」
「……了解」
「よし、それじゃあセンナ!」
「はい!」
「アレスをどっか一息つけそうな所に連れて行ってやれ」
「分かりました」
「では、一時間後にまたこの部屋に集合してもらおう。それまで一同解散!」
すべての話がまとまってきたところでビエラが指示を出し始めた。次々と部屋を退室していき、センナが優のところに向かってくる。
「ほら行こ、優」
「お、おう………」
「「失礼します」」
果たして一時間後に優は自分の考えを纏められているのだろうか。
どちらの選択をとっても優には明るい未来とはとても言えない。
センナに連れられ、部屋を退室する優の表情は不安に満ち満ちていた。
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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多分次回で一章が終了になります。宜しければ見に来てください。




