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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第一章 出会い編
22/64

第二十一話 優の答え【一】

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


第二十一話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

PM00:40


 センナだけではない。ブラドもビエラも顔が真剣になり、雰囲気が一変した。


 伝説というのは、『迷信』であったり『作り話』というのがほとんどだろう。例えば、過去の名のある武将が使っていたという刀や槍というのは現世でも展示品として飾られている。

 しかし実際は本当に本人が使っていたものなのかというと、疑わしい代物も存在する。センナが先ほど言っていた『刀はある戦士が使っていたもの』というのも、聞く人によっては疑う者もいるだろう。


 だが優は、そうは思わなかった。センナを信頼しているからというのも当然あるだろうが、それ以外にも彼には思うところがあった。

 自分を刺したあの刀、あれが優を生きていながら霊体へと変えてしまったこと。そして彼女らはそれを探すために優の体を解剖までするということ。

 優を襲ってきた者達の狙いもおそらくはあの刀だ。一本の刀を巡ってここまで大きな出来事が連続しているのだ。疑うほうが無理な話だろう。


 センナが優の前に立ち、真っ直ぐ優を見ながら話し始める。


「伝説の剣聖の話をする前に、まずはこの『神帝教会』さらには二度にわたって優を襲ってきた『レース・ノワレ』について話すわ」


「れーす・のわれ?」


「そうよ。信じられないかもしれないけど、彼らも生前は貴方や私たちと同じ人間だったの」


「に、人間!?」


 彼らの見た目はとても人間とは思えなかった。いや、傘を差した少女だけは額の角さえなければ人間と言われれば信じたかもしれない。

 しかしリガードという男は、皮膚の色が血の色のように赤かった。生前にあんな姿だったわけがない。あんなのが人間だと聞かされれば驚くのは当然だろう。


 センナは優の反応は予想していたかのように、優の言葉には反応せず、次々と話を進める。


「人間には動物や虫よりも高い知性がある。そしてその高い知性によって感情を大きく揺れ動かされるのも人間なの」


「どういうことだ?」


「動物や虫にだってもちろん感情はあるわ。感情とはすなわち『心』。心のない生物なんて存在しないわ。ただ、人間の場合、心や感情は時にその人の思考によって大きく変化してしまうの」


「変化?」


「一つの物事に対し、それについて真剣に考える人と適当にしか考えない人。ポジティブに考える人とネガティブに考える人。何かについて考えることが出来る人間だからこそ、その意見が分かれた時、わだかまりが生まれる」


「わだかまり………」


「人間同士のわだかまりは、時に大きな()()を呼ぶわ」


「災いってまさか!?」


 優には思い当たる節があった。それは人間同士が激しくぶつかり合い、互いにたった一つしかない命を奪い合い多大な犠牲を払いながらも己の目的を果たそうとする、人類の最も醜い所業。


()()よ」


 やっぱりだ。

 優は大きな衝撃を受けた。意見のすれ違いなんてほとんど日常茶飯事(にちじょうさはんじ)だろう。

 しかし、その人の身分、立場によっては意見の食い違いというだけで国そのものに大きな影響をもたらしてしまうことは確かだ。


 政治関係においても意見が分かれることで、揉め事にはならなくても、そこで決定したことは直接その国に響く。

 だからこそ大きな責任を抱える人ほど、影響の大きさはプラスにもマイナスにも働くのだ。


 まだ侍が生きていた時代も、そこにいる身分の高い人物の決定一つで戦争が勃発した。

 時代がながれ、日本が世界に踏み出した後も結局は外国とぶつかったり、または外国と外国が起こした争いに巻き込まれたりと戦争を繰り返してきた。

 しかしそれもやはり、身分の高い者の決定一つで戦争をするかしないかが決まる。


「優、なぜ人間は命を奪い合ってまで戦いの道を選ぶと思う?」


 センナは真剣な表情から悲しみをこらえたような顔になった。センナにとっても戦争とはとても辛いものであり、叶うなら話題にも出したくないほど嫌悪する存在なのだろう。


 優は戦争の経験なんてない。学校の授業などで触れることが何度かあった程度だ。

 その時は深くは考えたりしなかった。しかし今度は違う。自分なりに考え、出た答えでセンナに答えなくてはならないと彼は思った。


 なぜ命を奪い合ってまで戦いの道を選ぶのか……命を奪い合うということは優にはスケールの大きすぎることだった。ほかの人でも同じことだろう。

 命を奪い合う瞬間なんて、それを体験した人にしか分からないはずだ。

 優は考え方を変えることにした。『命を奪い合うのではなく、ただ人間同士は意見が食い違うとなぜぶつかり合うのか?』と。


 センナは優の真剣に考える姿をじっと見ながら思う。


(優、本当は私がすぐに答えを言って話を進めるのが自然だと思う。でもあの時、『ゲート』を潜っているときに、私が質問した時の貴方の答えに私は感動した)


『死への恐怖から、生きる苦痛から、解放される悦びなんじゃないかな?』


(貴方の言葉は今も忘れられない。その答えを自分で導き出せた優だからこそ、私は貴方の意見を聞きたい!)


 そのセンナの姿を見ていたビエラとブラドは、彼女の気持ちを悟ったかのように苦笑いをしていた。


(センナがここまで評価するとはな。本気でコイツの事を剣聖と思っているということか。しかし肝心の天牙の在り処が分からなければな……)


(センナはここまでアレスを評価しているとはなぁ。まぁ俺もなかなか見どころのある奴だとは思ったけどよ……メルスがなんて言うかなぁ……)


 メルスと優の一件を知っているブラドからすれば心境は複雑だった。

 優を自分の部隊に引き入れようとしている時点で彼もまた、メルスの機嫌を逆なでしている一人なのだが、ブラド自身は優を味方につけること自体に一切の迷いはない。


 三人がそれぞれに考え事をしている間にも優は自分の答えを探していた。


 なぜ意見がぶつかり合うと人は争うのか、確かに子供のケンカだって、もともとは意見が分かれたからだ。たいていは担任の先生や親が仲介する形で仲直りをさせる。

 しかしケンカをするのは子供だけではない。大人になっても揉め事は当然起こる。しかも大人同士の争いは子供のそれとは比較にならないほど大事になりかねない。


 ひょっとしたら、誰もが小さいときから、もしかしたら生まれた時から己の中に自分なりの『正義』を掲げていて、意見の割れるということは己の正義を否定されていると感じているのかもしれない。

 それがどうしても許せず、結果争いが生まれてしまう。大人同士のケンカが大事になりかねないのは、いつも仲介する人間がいるとは限らないから。

 さらに、意見が割れたのが身分の高い人だった場合、その人に仕える人たちの命までもが巻き込まれるのではないだろうか。身分の高い人同士の仲介をできる人なんているはずがない。


 もし、国の中で身分の高い人と意見が別れたから、国に仕える軍隊同士の争い、強いては戦争が起こるのではないだろうか。


 これだけでも答えにはなっているはずだが、優は納得せずさらに考え続けた。

 ()()()()()()()()()()()()()をも答えを出すためのヒントになると思い、ただひたすらに頭を働かせた。

 そしてついに、彼は一つの答えを見つけてしまった。これを見つけ出した優本人が絶望する答えを……


「センナ……」


「なに? 優……」


「馬鹿な意見だと思って聞いてくれ。笑われるのならそれでいい。ただこれが俺なりに考えて出した答えだ」


 優の表情はとても暗い。それだけで優が決して良くはない、でも断じて適当に考えたわけではないことが見て取れた。


 センナはそれだけで十分だった。もしかしたらセンナは優が答えに近いものを自分で見つけ出すのではないかと自分でも気づかずに思っていたのかもしれない。

 ビエラとブラドも優の顔をじっと見つめ、その答えを待っている。


 優が「ふぅっ」と緊張を吐き出すようにゆっくり肺に溜まった空気を吐き出した後で、語り始めた。


「俺の答え。それは、




()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


伝説の話に入る前に不明だった点の説明に入ります。

思ったより長くなりそうなので分けることにしました。

明日も投稿予定ですので、宜しければ見に来てください。

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