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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第一章 出会い編
21/64

第二十話 優の所属

第二十話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

PM00:30


「イテェェッ!」


「マジイッテェェェッッ!」


 女性に鞭で頭を打たれた二人は、未だに続く痛みに苦しめられている。

 最初は慌てていたセンナも、己が打たれないことを意識して素知らぬふりをしていた。


 女性が椅子から立ち上がり、コツコツとハイヒールの音を立てながら二人に近づいてきた。


「起立!」


「「っ!」」


「休め!」


 まるで軍隊の号令のように鋭く発せられた声に二人はピシッと立ち上がった。

 『休め』の体制をしながら優は、心の中でこの人には絶対に逆らってはならないとひそかに誓ったのだった。

 何も喋っていないのにいきなり鞭で叩かれたのだ。誓うというよりは『トラウマ』に近いだろう。

 それに、叩かれた理由もひどいものだった。

 名乗れと言われても優はどの部隊にも所属していない。名乗る名がないのだ。


「さて、改めて名乗ってくれるかな?」


 女性が優の正面、しかも異様に近く目の前に立つ。

 どう名乗ったらいいのか、優は短い間に考える。

 長々と自分経歴を話したところで叩かれそうな気がする。

 だからといってここに来るまでの流れを簡潔に話すことは不可能だろう。どれほど考えても答えが見つからない。

 もうどうしようもなかった。もう一度叩かれるくらいなら、せめて言えることをすべて言ってから散ろうと思い、優は覚悟を決めて言う!


()()()()!荒野 優です!」


「「「………」」」


 女性だけではない、センナもブラドもそこにいる全員が優の言葉に唖然とし、室内は静寂に包まれた。

 (『せいじゃしょぞく』? 何言ってんのこの人………)誰もがそう思うことは当然であろう。

 しかしこれは、優が短時間で己の身分を簡潔にまとめるために必死に考えた答えなのだ。

 自分が死者ではないこと、それを優は一番伝えたかった。

 『所属』というのは、センナたちがまるで軍隊のような挨拶をしていたので、それに乗っかってほとんど勢いで言っただけだ。

 冷たい静寂が不安を煽り、また叩かれると思った優は瞼に力を入れ、ギュッと目をつぶる。


 しかし、いつまでたっても鞭が飛んでこない。

 不思議に思った優はゆっくりと目を開けると、女性は黙ったまま下を向き、顔が見えなかった。怒らせてしまったのだろうか?

 優は恐る恐る女性の表情を見ようとすると……


「フフッ」


(え、)


「ぷっあはははは!」


「うふふふ」


「ナッハッハッハァァッ!」


 女性は実に楽しそうに、おなかを抑えながら笑い出した。

 それに同調するかのように、センナとブラドまでが笑い始めた。

 ブラドは実に豪快に、大声をだして笑っている。

 センナは大声が出ないように口元を手で押さえ、おしとやかに笑っていたが、それでも爆笑していることは隠せていなかった。

 なぜ自分は笑われているのか?急な展開に優は眼を点にして、その場に立ち尽くしていた。


 最初に落ち着きだしたのは目の前の女性。

 それでも笑いすぎたのか、目元に涙まで浮かべている。


「生者所属か、面白いことを言うなぁ!」


「はぁ……」


(俺なりに一生懸命考えたんだけどなぁ……)


 自分の答えを面白いと言われた手前、優の心境は複雑だった。

 それでもそれを声には出さず、女性の言葉の続きを待った。


「よかろう、生者所属の『あれのすぐる』だな。私は神帝教会全部隊総隊長、()()()だ。よろしくな!」


「よ、よろしくお願いします……」


 女性は笑顔で自己紹介をし、友好の印として握手を求めてきた。

 差し出された手に、優は緊張した顔をしながらもしっかりと握手を交す。

 とりあえずは認めてもらえたのだろうと思い、優の心は幾分かホッとしていた。

 その間に、センナもブラドも大笑いから解放されていた。


 握手のあと、女性は苦笑いをするように言った。


「しかし、『あれのすぐる』とは長いな。もっとこう……」


「姐……総隊長!」


「なんだブラド?」


「あれのすぐるの名前ですが、『アレス』にしてはいかがでしょう」


「アレス、アレスか………うん、良いな!」


「え?」


「よし、お前は今からアレスだ!」


「いや、あの!」


「なんだ、不服かぁ?」


「い、いえ。滅相もありません!」


 アレスという名にあっさりと改名されてしまった。

 止めに入ろうと思ったが、先ほどこの人には逆らわないでおこうと自分に誓いを立ててしまった手前、言い出せなかった。

 というより、ビエラに対し恐怖心に近いものが生まれてしまったため、言い返すことが出来なかったのだ。すっかりトラウマである。

 何も言い出すことも出来ず、その場に棒立ち状態。その間にも、会話は次々と進められてしまった。


「アレスを第七部隊に?」


「ウス! メルスの剣を前にあそこまで冷静でいられたというのは、高く評価すべきだと思います」


「たしかに。自分が斬られた後の事を考えるなど、私でも聞いたことがない」


「きっと()()でも、その強い精神力は十分に活かされると思います」


「なるほどな……」


 メルスに襲われた時のことをビエラに説明し、第七部隊にアレスを所属された時のメリットをブラドは説明していた。

 たしかに、敵に襲われた時にやってくる激痛の事まで考慮しながらその先の事まで考える、更には今まさに自分が攻撃されようとしているその直前で考えることが出来るのだ。

 心の中に芽生える恐怖心に臆することもなく冷静に対処できることをブラドは高く評価していた。


「だがブラド、アレスは戦闘経験がないのだろう? 見たところ()()もしていないようだが?」


「俺たちが責任をもって鍛えます。それにこいつを入隊させたい理由はそれだけではありません」


()()()()()か……」


「?」


 優は首を傾げた。例の可能性とは何のことであろうか。

 それに会話を黙って聞いていれば、自分が入隊する方面で会話が進んでいるではないか。

 (この流れはまずい)と思い、優はさりげなく話をそらそうとする。


「あのぅ……」


「なんだ?」


「例の可能性って何ですか?」


「それは私が説明するわ」


 センナが進んで説明を申し出た。センナは優の方に向き直り、真っすぐに優を見ながら話し始める。


「優、あなたがミキに撃たれて気を失っているときに、私は皆にお願いをしたの」


「お願い?」


「そう、優言ってたじゃない。トランクを開けたら刀が飛び出して自分を刺したって」


「あぁ」


「あれはね、神帝教会が何千年も守り続けてきた()()()()の持ち物なの」


「ある戦士?」


「そしてその戦士の成した功績は伝説となり、現代まで語り継がれている。教えてあげるわ。神帝教会の歴史上、最強の戦士『剣聖』の伝説を!」

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


【お知らせ】

まことに勝手ながら、本日より年明けまで小説投稿の休載をさせて頂きます。

具体的にいつ再開するかは未定ですが、なるべく年明けからすぐにまた始めようと思いますので、来年もご愛読頂きますよう、どうぞよろしくお願いします。


それでは皆さま、どうか良いお年をお迎えください。

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