第一話 俺、死んだ!?
第一話になります。
序章のところから読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
AM1:35
夜の住宅街。広い道路も近くにないため、夜がふけると車の音はほとんど聞こえてこない。真冬の時期、太陽が沈んだ今、外に出ようと思う人も少ないだろう。深夜一時にもなると、住宅街ではほとんどの照明が消えるのだ。
だが、ある一軒家では二階に未だ光が灯っていた。
「あぁあ、そろそろ寝るか」
一人の青年はまるでやる気を感じさせない声で呟いた。
彼の名は荒野 優。今年二十歳の浪人生だ。黒い髪を目にかかるほど伸ばし、鼠色のジャージに身を包んでいる。
現役の頃は剣道を小学生から続けており、それが彼の生き甲斐でもあったが、浪人してからは辞めて勉強に専念することにしたのだ。
もともと彼はそれほど成績は悪い方では無い。むしろ高校では学年上位にいることが殆どだった。しかし浪人一年目、偏差値では十分狙える筈だった名門大学の受験で結果を出すことが出来ず、それからというもの、すっかりひねくれてやる気をなくしていた。
今日もやはり何もせず、勉強をする素振りだけ見せる。夜が来れば灯を消し、眠る。動物のような生き方だ。
「最近体動かしてねぇもんなぁ、全然眠れねぇ」
当然だろう。この一週間、ほとんど外にすら出ていない。引きこもり同然の生活なのだ。心はやつれていても体は全く疲れていない。夜も更けて尚、退屈を持て余していた。
しかし、そんな優の退屈を吹き飛ばす出来事が訪れた。彼は暗闇の部屋の中で急激な眩しさに襲われた。
「な、なんだ!?」
優は驚きのあまりベッドから飛び起きた。天井から迸る閃光と、眼球を突き刺すような眩しさに襲われる。痛みから逃れようと、彼は必死に腕で顔を覆う。
天井全体を照らしていた光が優の頭上の一点に集まりだした。次第に光は弱くなり、優は多少マシになったものの、未だ感じる眩しさに耐えながら目をゆっくりと開け、天井を見上げた。
改めて確認する。これは部屋の電気でもなければ懐中電灯の類が誤作動で光りだした訳でもない。何も無い普通の天井がいきなり光りだしたのだ。
光は3D映像のように真ん中が凹んでいき、天井に光の穴が空いたように見える。
あまりに突然の出来事に優はどうすることも出来なかった。暫く眺めていると、真ん中の凹みから黒い影が見えてきた。何かと思い目を凝らすと、影は徐々に大きくなっていく。ここにきて漸く彼は、何かが自分の真上に落ちてきているのだと理解した。
ドンッ!
「イッテェ!」
優は落ちてくる影に気付いても、先ほどからの驚きの出来事で反応が遅れてしまい、動くのが遅れてしまった。影はそのまま優の顔にクリンヒットした。
顔面の痛さに両手で顔を抑える。そしてゆっくりと落ちてきた影を見ると、それは真っ黒なトランクだった。
優はまた何か落ちてくるのではないかと見上げるが、役目を終えた光の穴はたちまち縮んで消えていった。
優は固まって動かく事がままならなかった体をゆっくりと動かし、慎重にベッドの上に立ち上がる。光の穴が開いていた天井を触ってみたが、どこにも穴は開いていなかった。
それを確かめるや否や、優はベッドの上で胡座をかき腕を組み、目の前にあるトランクを見つめながら、今自分の部屋で何が起こったのかを整理することに頭を働かせる。
「まぁ、なんだ! 察するに……。うん! これは夢だな」
当然、いくら考えたところで、まともな答えなど出るはずもない。むしろ全て夢の中だと思うことのほうが彼にとって何より納得の出来る回答だった。
結論付けた優は、トランクをベッドから蹴り落とし、何もかも洗いざらい忘れようとベッドに倒れこみ、あっという間に眠ってしまった。
AM7:00
「ふぁぁあ、よく寝……」
いま、彼の言葉が続かなかったのはわざとではない。予想外の出来事が目の前に起こっている、イヤ、本来ない筈の物があったことに驚き、無意識に発言を途切らせてしまったのだ。
目を覚ました直後、不思議と光の穴の一件の事が忘れられず、優は極自然な動作で昨夜蹴り落したトランクがないかを確かめた。すると……
「嘘だろ!? これ昨日の……夢じゃなかったのか?」
あったのだ、トランクが! ベッドから落とされ、放置したままの状態で。トランクという存在が、昨夜のことを夢でないことを優にはっきりと証明していた。
「オイなんなんだよ! 意味わかんねぇよ! だいたい何なんだこのトランク、俺こんなの持ってねぇし……」
優はトランクを持ち上げ、トランクの外側を見たが、何も書いておらず、手がかりがない。
「中開けたら誰のか分かるかなぁ。イヤでも人様のトランク開けるのは流石にまずいよなぁ。でもこのままにしとくのもなんか嫌だし」
悩んだ優は、結局トランクを開けることにした。トランクには鍵はかかっておらず、ロックを外すだけで簡単に開く仕様だった。
容易くトランクを開けた瞬間、持ち上げてもいないのにトランクは勢いよく開き、中身が光を放射しながら輝き出した。
「うわぁ!?」
再び眩しさに襲われ顔を腕で覆う優。
しかし今回は守る場所が違ったのだ。
グサッ!
「えっ!?」
優は一瞬何が起こったか分からなかった。
急に胸に激痛がはしり見てみると、全体が漆黒の一本の刀が青年を貫いていた。
ハァ、ハァ、ハァ、
自分でもわかるほど呼吸が荒い。
上手く息を吸えない。
痛い、とてもつもなく胸が痛い。
苦しい、息が、息が出来ない。
たちまち優は横ざまに倒れ、どうすることも出来ず、何が起きたか分からぬまま意識が途絶えた。
AM7:10
「う、うぅ」
悪夢に魘されながら、優はゆっくりと目を覚ました。
「な、何だったんだ今のは!? 俺、確かに刺されて」
さっきまでの痛みは無い。苦しくもない。自分の胸を見ても刀はなく、刺されたはずの傷もなかった。
「意味わかんねぇ……」
優は、状況を整理しようと部屋を見渡す。すると自分の真横に、横長の影が見つかった。
最初は驚いたが、よく見てみるとその影は人間であり、さらによく観察するとその人間の着ている衣服に見覚えがあった。
というより、その人間はまるっきり自分と同じ姿をしていた。
優の頭の中に最悪のイメージが浮かぶ。
「いやいや、ありえないって! だって俺はここにいるし。普通に生きてるし」
妙に不安になった優は部屋にある鏡を見てみた。しかし倒れている青年の姿は映るが、自分の姿は映らなかった。
「え、うそ! いやでも、いやいや何かの間違いだって! でも、……」
どんなに鏡に映ろうとしても、自分の姿が映ることはなかった。
「俺、死んだ!?」
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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ハイ、死にました!