第十八話 解剖
第十八話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM00:10
「放せぇぇっ! 俺の体を助けに行くんだぁぁぁっっ!」
ブラドの話より、自分の体が今解剖されていると聞いた優は実験室へ向かおうとしていた。
その彼の襟を(やれやれ)という表情で掴み、行かせないようにするブラド。
センナはそんな二人の光景をただ苦笑いしながら見ることしか出来なかった。
「落ち着けよアレス、今から行っても遅いって」
「いやだぁぁぁっっ!」
もはや我儘を言う子供とそれを相手する父親のような絵面だ。
埒が明かないと思ったブラドは優を正面に向かせ、やや強い口調で言う。
「仮にお前が行っても、バラバラになった自分の姿を見ることになるんだぞ。お前そんなの見て平常心保っていられるのか?」
「う、……」
死者の体とは魂の体、魂は己の精神に直接関係する。
不安や痛み、苦しみにより己の精神状態を維持できなくなれば、体はバランスを失い魂が壊れてしまう。
もし、目の前で次々と自分の体を切り刻まれ、内臓を取り出される姿を見たら、冷静でいられると断言できるだろうか。
ブラドが優を実験室に行かせないようにしているのは、そういったことを考えての事だった。
優はブラドの言葉に何も言い返すことも出来ず、足を止めた。
しかし、今この間にも自分の体を解剖されている事実は優の心に大きな影を作っている。
その顔はとても弱弱しく、暗いものだった。
センナは優の表情から心情を察して言葉をかける。
「あのね優、ルドウ博士に優の体はいつまでも温かいままだったということを伝えたらね、『代謝』の活動は変わらずに機能しているはずだと仰っていたの。だからその機能が停止しないように細心の注意をはらっているはずよ」
『代謝』とは、食べ物から栄養をエネルギーに変えて運動するといった、生命活動にとって重要なこと。
このとき、直接使われなかった残りのエネルギーが、『熱』となる。
人間の場合、エネルギーの七十五パーセント以上が熱に変換され、体温の維持に用いられる。
優の気持ちはセンナの話を聞いても未だ完全に晴れるものではなかったが、自分を元気づけたいというセンナの気持ちは伝わっていた。
(俺、センナに慰められてばっかりだな……)
「ありがとう、センナ! あんなセクハラジジィでも博士だもんな。信じて待つよ、俺!」
「っ! うん♡」
からげんきではあったが、それでもこれ以上センナに気を使わせないように優は明るい笑顔で言った。
その笑顔にセンナも負けないくらいの輝かしい笑顔で頷いた。
(アレスとセンナか……案外良いコンビになるかもしれないな……)
二人のやり取りを黙って見ていたブラドは優とセンナが肩を並べ合う姿を想像していた。
「さて、話がまとまったところでアレス、さっさと手続き済ませに行くぞぉ」
「だから俺はアレスじゃないって! それに手続きって」
「なにをまたごちゃごちゃ言ってんだ。ほら行くぞぉ!」
ブラドは再び優の襟をつかみ引きずりながら歩きだした。
優は抵抗するが、力の差がありすぎる。まるで大人に連れて行かれる子供の様だ。
センナはそんな二人の姿を苦笑いで眺めながら、ゆっくりと後をついて行った。
―――同時刻―――
「なぜじゃ、なぜ見つからん!」
実験室の中では、ルドウ博士の声が響き渡っていた。
「隊長、これ以上は被検体の肉体がもちません!」
「分かっておるわい! しかしなぜじゃ、なぜ天牙が見つからん!」
ベッドに寝かせられた優の肉体を、ルドウ博士と三人の白衣を着た男達が囲んでいる。
ベッドは血で真っ赤に染まり、博士の着ている白衣も両手も血でびっしょりだ。
博士は今も必死に、優の開けられた肉体に手を突っ込んでいる。
他の男達は血相を変えて若い男の体の中の臓器を手で動かし、次々と肉を切っていくルドウ博士の姿に怯んでいた。
「た、隊長………」
「……やむを得ん、解剖はここまでじゃ。あとの事は任せる」
「「「はいっ!」」」
三人の男の返事を待たずして博士は部屋を退室した。
(千年間、儂らを焦らし続けた天牙よ。今度は雲隠れか?いつになったら儂らを導いてくれるのじゃ……)
ルドウ博士の顔はとても暗いものだった……
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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今の優とセンナが組んだら、世話の焼ける弟としっかりもののお姉さんにしかならない気がする……