第十七話 絶叫
第十七話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM00:05
「あの! ちょっと!」
「ん? どうしたアレスゥ?」
真っ白な廊下の中を優は巨漢の男に引きずられている。何度も抵抗をしようとしたが男の力が強すぎて全く振りほどけなかった。
依然呼び名はアレスのままである。すっかりこの男の中ではアレスが定着してしまったらしい。
優はどうにか彼を止めようと声をかけるが、男は答えながらも足を止めようとしない。
「だから俺はアレスじゃなくて、俺には荒野 優という名前があるんです!」
「いや、だってそれ長いじゃねぇか。それによう、アレスの方がかっこよくねぇか?」
「かっこよさ関係ないでしょ!」
「ナッハッハッハァァッ!」
(ダメだ、この人全然人の話聞こうとしない)
巨漢の男は大笑いをしながら歩いていく。
どこに向かっているのかは優には分からない。
『手続き』と言っていたから、それをするための場所に向かっているのだろうが、優はこの世界に住もうだなんてこれっぽちも考えてはいなかった。
そもそもこの世界に来たのだって、一方的にセンナに幽霊にされて、強制的にあのトンネルを潜らされただけなのだ。
しかも来たらきたで今度は解剖するとか言われ、ずっと振り回されっぱなしだった。
挙句の果てにドラゴンに襲われそうになるわ、金色髪の青年に斬られそうになるわ、まさに踏んだり蹴ったりだった。
このままこの男の思い通りにさせては取り返しのつかないことになるだろうと思い、打開策を講じる優だったが……
「隊長ぉぉっ!」
「ん?」
女性の呼ばれる声に巨漢の男が足を止めた。
後ろからセンナが走ってこっちに向かってくる。
優はこの時、助かったと思った。事情を知っているセンナであればこの状況を変えてくれると思ったからだ。
「センナか? どうした?」
「あの、優の事なんですが」
「優じゃないぞセンナ、こいつはアレスだ!」
「いや優だから! 訂正するとこじゃないから!」
「え、えっと……」
優と呼ぶセンナに対し巨漢男は訂正を入れるが、それに対し優がツッコミを入れた。
どうしようかと迷うセンナは視線で優に(ゴメンね)と伝えてから、会話を進めることを優先した。
「隊長、アレスのことでお伝えしたいことが」
「アレスが死者から生者に戻れるということはルドウから聞いてる」
「「えっ!」」
巨漢男の言葉に優もセンナも声を上げて驚いた。
優がもともとこの世界の住人ではないことを知っていて尚、部隊に入れようとしているのかこの男は!
優はそのことが分かり、言葉も出ないほど驚いていた。かなり身勝手な人だとは思っていたが、ここまでとは思わなかったのだ。
センナもどう会話を続けたらいいのか分からず、言葉に詰まる。
そんなのお構いなしという風に、男は一方的に会話を進めた。
「センナ、お前はアレスの事をあの剣聖だと思っているのだろう?」
「あ、はい!」
いきなりの質問だったが、センナはあたふたすることもなくはっきりと答えた。
男はその返事に満足したように笑顔で頷く。
しかし、優だけは思い悩む顔をしていた。
最初は現世でセンナが言っていた『剣聖』、次に金色髪の青年に乱暴に言われた『剣聖』、おそらく同一の意味を示すのだろうが、優には全く分からなかった。
センナは優が剣聖であると信じているようだが、あの青年は間違いなく否定的だった。それどころか、危うく斬られるところだったのだ。
何か深い訳があるのは間違いないだろう。
それ以外にも優には聞きたいことが山ほどあったが、とりあえず今、簡単に聞けそうなことから片付けようと思うことにした。
「なぁ、センナ」
「なに?」
「さっきこの人の事『隊長』って呼んでたけど」
「おう、そういや自己紹介がまだだったな!」
答えたのは巨漢男。掴んでいた優の襟を放し、左手を腰に当て、右手の親指を自分の顔に突き立てる。男らしいポーズに笑顔で名乗った。
「俺の名は『ブラド』! 神帝教会第七部隊隊長だ。よろしくなっ!」
「第七部隊ってことは……」
「そうよ。私やミキ、それと彼の隊長なの!」
「彼ってまさか………」
優の頭の中に金色髪の青年の姿が浮かび上がる。ミキの時もそうだったが、自分を襲ってくる相手はたとえ敵ではなくても恐ろしく感じてしまうものだ。
しかも、ミキの時とは違う。あの青年は自分の意志で斬りかかってきたのだ。
すんなりと受け入れられないのは当然の事だろう。
センナも優の気持ちを理解して苦笑いになるが、それでも仲間のフォローをしようとした。
「彼だって悪い人間ではないのよ、普段なら敵にしか剣を向けないし」
「俺、向けられるというより斬られかけたんだけど……」
「………」
「ナッハッハァァッ! 許してやれ、アレスゥ! メルスが悪い人間ではないのは本当なんだ。俺が保証する」
フォローどころか思いっきり墓穴を掘ってしまったセンナは苦笑いのまま何も言えなくなってしまった。
どうしようかとセンナが言葉に詰まっているところにブラドが大笑いをして助け船を出した。
優も、少なくともセンナの事は信頼してる。だからセンナが悪い人間でないと言うのであれば、これ以上は追及しないことにした。
「アイツ、『メルス』っていうのか」
「そうよ、第七部隊のエースなんだから!」
「へぇ……」
「さて。世間話もこのくらいにして、早く手続きを済ませてしまわないとな!」
「だぁぁっ! まだそれがあった! なあ隊長さん、俺はこの世界で働くつもりはないんだ。用が済んだら、すぐに戻ろうと思って」
「用ってのは解剖の事か?」
「そうそう解剖……ってそれもあったぁぁぁっっ!」
白い部屋の中で、なぜ自分の体が解剖されなければならないのか。
その理由を説明してもらう途中で緊急事態を知らせる警報が鳴ってしまったため、結局何も分からないままなのである。
「お前の生身なら、今実験室だ」
「え、実験室?」
「優がこっちで横になっていた部屋よ」
「あそこ実験室だったのか!?」
「俺はアレスの生身を取ってくるために現世に行っていた。緊急出動に出られなかったのはそのためだ」
「なるほど……あれ、ちょっと待って……俺の生身が実験室ってことは……」
「いま、解剖中だな」
「なんだとぉぉぉぉぉっっっっ!」
廊下内に優の絶叫が響き渡った。
―――同時刻―――
暗い部屋の中で、リガードは目の前に立つフードを被った老人に土下座をしていた。
センナ達と戦った後、イラに半ば力ずくで連れられ帰還した彼は、勝手なことをしたことに対し老人にお叱りをうけていた。
「この馬鹿者が! 単独でディアキリスティスに向かうとは、死ぬ気か!?」
「ほんとにすまねぇ旦那、この通り!」
リガードはさらに深々と頭を下げる。
普段の偉そうな態度は微塵も感じられない。どうにか許して貰おうと必死なのが見て明らかだった。
老人は呆れ果てたように深くため息をついた。
「まったく。イラを向わせなければ、お主は今頃」
「リガードが世話が焼けるのは昔から……バカなのは生まれた時から……」
「あ゛ぁ!?」
「止めんか、馬鹿もんどもがっ!」
リガードはイラの言葉に反応しケンカ腰になる。
老人とは違い、イラには強気の姿勢だ。
下げていた頭を上げ、イラの方に振り向き、犬が吠えるかのように真っ直ぐ睨みつけている。
イラはリガードに対し全く興味を示さないようで、無反応のままで視線を合わせようともしない。
しかし、代わりに反応したのは老人の方だった。
強烈な怒鳴り声をあげると、リガードはすっかりビビり腰になり、イラもだまった。
イラは見た目通り叱られたばかりの少女のようだが、リガードは怒鳴られて怯むチワワみたいだ。
「はぁぁまったく。それで、その小僧をもう一度見てどう思った?」
「やっぱり変な感じがした……普通の霊体じゃない気がする……」
「そうかぁ? 俺は何も感じなかったぜ? だがよ旦那! アイツら妙なこと言ってやがった」
「妙なこと?」
「あんなガキの事を剣聖だなんて言うんだぜ。笑っちまうよな~」
「なんじゃとぉぉぉぉぉっっっっ!」
こっちはこっちで、部屋中に驚きの絶叫が響き渡った。
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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既に解剖されていたとなれば、声もあげますよね。




