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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第一章 出会い編
16/64

第十五話 アレス誕生

第十五話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。

AM11:50


 優は瞬きする事も忘れるほど呆気に取られ、ただただその場に立ち尽くしている。金色髪の男にいきなり斬りかかれ、あと一歩遅ければ確実に切られていた。

 その事に対しても、もちろん驚いてはいる。しかしそれは、いつの間にか現れた巨漢の男のお陰で怪我をすることもなく終わった。

 だが、むしろ終わった後のほうが優にとって遥かに刺激が強かった。

 なぜ、これほどまでにたくましい体格なのに、男らしく燃えるような真っ赤な髪の色をしているのに、なぜ、メイド服なんだぁぁ!?

 優が己の中で出るはずもない問題の答えを求め葛藤しているとき、後ろからセンナが巨漢男に駆けて行った。


()()!」


「おう! センナ、遅くなって済まねぇな」


「いえ、こちらこそ二度に渡りレース・ノワレを取り逃がしてしまい、申し訳ありません……」


 センナは暗い顔で深々と頭を下げた。敵を退けたことに一切満足せず、逆にまるで失敗をしたかのようにその瞳には罪悪感が含まれていた。

 優はセンナの事情は全く知らない。だが、少なくともさっきの戦いにおいて、センナは出来る限りのことはしていたはずだ。

 あの少女の邪魔さえ入らなければ、ドラゴンとリガードは倒せていた筈だ。あと一歩のところまで追い込んだセンナがどうして頭を下げなければならないのだろうか。

 無意識に優は拳を握りしめ、おのれでも理解していない言い知れぬ感情を押し殺していた。これからセンナは責められるのだろうか。

 しかし、巨漢の男はそんなことは一切気にしていないかのように腰に手を当て大きな声で笑い出した。


「ナッハッハァァ! そんなこと気にせんで良いわい! そもそも今回は俺が不在だったにも関わらず、よくこの国を守ってくれた!」


「隊長………」


 巨漢男はセンナの肩に両手を置き、真っすぐにセンナの瞳を見つめ、言い聞かせるように話した。


「センナ。お前たちは敵を取り逃がしたのではない、撃退したんだ! それを間違えるな」


「っ、はい!」


 もうセンナの顔には暗さがかけらも残っていない。巨漢男の言葉で完全に持ち直したようだ。

 巨漢男はセンナの返事に頷き、肩から手を離した。

 その後、巨漢男は優の顔を見るとゆっくりと歩み寄ってきた。

 目の前に立たれるとさらに大きく感じる。身長が百七十八センチの優からでは完全に見上げる状態だ。巨漢男は真っ直ぐ優の顔を見つめる。


「さっきの見ていたぞボウズ、あれほど危険な状況なのに声一つ上げなかったな。ビビッて声が出なかったのならそれも分かる。だが、お前の目はまだ諦めちゃいなかった。あの状況で何か策があったのか?」


 巨漢男はまるで優を挑発するような視線で聞いてきた。いや、もしかしたら試しているのかもしれない。

 あの状況下で一体何を考えていたのか、それを聞くことで優の力量を測り、優という人間を見定めようとしているのではないだろうか。

 巨漢男の後ろに立っている金色髪の青年も優を睨みつけるように見つめ、答えを待っていた。自分が感じた不思議な感覚の正体を知りたいのだ。

 優は全く迷いの色のない目で答えた。


「策なんてありませんよ。あの状況では、俺はどうやっても助からなかった……」


「なにっ!? では諦めていたのか?」


「斬られることに関しては諦めました。俺が考えたのは()()()です」


「……ほう」


 巨漢の男はうっすらと笑みを浮かべている。優の答えに興味を示しているようだ。

 センナもミキも金色髪の青年も驚きの表情を浮かべながらも、誰一人として口を挟むようなことはしなかった。全員が注目する中で優は、凛とした声ではっきりと自分の答えを述べていく。


「センナから聞きました。死者の体はたとえ体を切られても消えることはない。でも、冷静を保てなければ、バランスが崩れ、魂が壊れると。裏を返せば、平常心を保つことが出来れば、魂は壊れることはないということですよね?」


「その通りだ。だが剣で来られた時の全身を駆け巡る痛みは凄まじいものだ。そう簡単に耐えられるものではないぞ?」


「分かっています。しかし、それしか俺が助かる術がなかった。それが分かっていましたから」


 そう話す優の目には、強い覚悟が感じられた。それは、『絶対に消えない、消えてたまるか!』っという意地なのかもしれない。

 ここにいる誰もが、優が冗談や出まかせを言っているようには感じられない。彼の目は真剣そのものだった。

 その姿に誰よりもセンナが一番驚いた。

 たしかに優は、普通の人とは違う何かがあるとは思っていた。そのきっかけはトンネルを通った時、優がセンナの話を疑うことなく聞いていたことだ。

 それだけではない、センナが優に『人は死ぬときに何を考えると思う?』と聞いた時も、自分なりの答えをはっきりと出して答えて見せた。

 優は事実を受け止めることが出来る素直さ、物事に対し真剣に向き合うことが出来る真面目さを兼ね備えている人間であることは気づいていた。

 しかし、さっき優が言ったことは度を越えている。『自分はこれから斬られる、ならばその次の事を考える!?』口で言うのは簡単だが、実際は違う。

 己がこれから斬られるという事に対し、恐怖を感じなかったのか。人間の恐怖心は思考を鈍らせる。どんなに落ち着いて対処しようとも、恐怖という感情が邪魔をする。

 まさか優は、恐怖を感じないのだろうか? そんなはずはない。感情がある以上、恐怖を感じないということはあり得ない。

 センナは優を疑うようなことはしたくはなかったが、今の彼の言葉を聞いても直ぐに納得できなかった。

 ミキも優の言葉を聞き、茫然自失(ぼうぜんじしつ)状態で言葉も出ない様子だ。そして、金色髪の青年は………


「キサマ! あの一瞬でそこまで考えたうえで覚悟を決めたというのか! ハッタリを言うな!」


「じゃあお前ならどうする?」


「なにっ!?」


「決して逃げられない状況の中でただお前はやられるのを待つだけか? 消えたくないとは考えないのか?」


 優は堂々とした姿勢で青年を見る。その瞳はどこまでも真っ直ぐで優の本気が伝わってくるようだ。

 青年は優の強気な姿勢に一瞬怯んだが、その態度が逆に青年の心を逆なでしてしまった。


「キサマァァッ!」


 青年は再び剣の柄を握ろうとする。無意識ではあるものの、優の質問に答えられないことに対して誤魔化したかったのかもしれない。しかし、


「まあ待て。落ち着けメルス」


 巨漢の男が青年の肩を叩き、落ち着かせる。青年は非常に不服そうだったが、それでも柄から手を離した。


「面白いヤツだな! ボウズ、名前は?」


「……()() ()()


()()()()()()か……長いな」


「え?」


 苗字も名前も特に長いと言われたことはない。至って普通だと思っていたが、この男には長く感じたのか目の前で腕を組み考え込んでいる。


「あれのすぐる……あれすぐる……あれす……」


「あ、あのう……」


「よし、決めたぞボウズゥ!」


「は、はい!?」


「お前は今から()()()だ!」


「はいぃぃぃ!?」


「さらにアレス、お前を我が第七部隊に引き入れることにする!」


「なっ!?」


「え!?」


「ウソォ!?」


 これには青年、センナ、ミキも驚いたようで、全員が声を上げた。


「そうと決まれば、早速手続きだ! 行くぞぉアレスゥ!」


「え、いや、ちょっとまっ」


「ナッハッハッハァァッ!」


 巨漢男は優の襟を掴み、引きずる様に連れて行く。アレスは何がどうなったのか分からない。

 いきなり名前を聞かれ、答えたら長いと言われ、名前変えられ、挙句の果てに部隊に入れるって……


「何がどうなっているんだぁぁぁっっ!?」

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


いきなり名前変えられたら誰だってパニクりますよね。

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