第六話『冬にゃん。お別れにゃん』
第六話『冬にゃん。お別れにゃん』
秋も終わり近くににゃるとにゃ。
ネコの生る木の枝から、一枚、また一枚と枯れ葉が舞い落ちてくるのにゃ。
出てきたばっかは濃い緑色にゃったのに今では茶色。
力尽きたかのように地面に埋もれていくのにゃ。
遊んでいた雪ネコの肩にも枯れ葉が乗った。
目にした途端、足をとめたのにゃ。遊ぶのをやめたのにゃ。
他の雪ネコらも。一緒に駆け回っていた子ネコもにゃ。
みんにゃでネコの生る木を囲んでにゃ。
木の葉が『さよにゃら』する姿を、じぃっ、と見守っていたのにゃん。
「ぐすっ。なんか物悲しいでしゅの」
そして……全ての葉が落ちたのにゃ。
秋が別れを告げ、もう季節は冬へと突入にゃん。
雪ネコが『さよにゃら』する季節にゃん。
ミーにゃんやミアン、もちろんイオラにゃんからも、
「ねぇ。ここに、ずぅっ、と居たら?」と勧められたのにゃ。
イオラにゃんのそばに居るかぎり、命は続くというのにゃ。
子ネコも一瞬その気ににゃった。
でもにゃ。脳裏に、あの『ネコの生る木』の姿が浮かび上がったのにゃ。
『帰っておいで』との言葉も確かに心に届いた。
子ネコは悟ったのにゃ。
『これは本能でしゅの』と。
『これこそが自分の運命でしゅの』と。
「これでおいとまをしますでしゅの。
短い間ではありましたでしゅけども、とぉっても楽しかったでしゅの」
親しき友とにゃった三にんは別れ難く、
にゃんとか引きとめようと、
思い直してもらおうと、
言葉を尽くしたのにゃ。しかしにゃがら、
「ありがとうございましたでしゅ。さよならでしゅの」
前後の足を、きちっ、と揃えて、頭を下げた姿。
子ネコの意志がどれほど固いかを思い知らされたのにゃ。
にゃんにもいえにゃくにゃってしまったのにゃん。
涙ぐむ三にんの手を振る姿を背にして、ひとり子ネコは精霊の間をあとにしたのにゃ。
舞い落ちてきた雪。時間が経つにつれ、風とともに勢いを強めていったのにゃ。
子ネコは吹雪に身をさらしにゃがらも歩みをやめにゃい。
運命の命じるまま、『子ネコの生る木』のそばへと戻ったのにゃん。
「帰ってきたでしゅの」
安堵の気持ちと疲れ切った身体とで、子ネコはよろよろとその場に蹲ったのにゃ。
周りを見回せば、仲間の雪ネコがたくさん。自分とおんにゃじ格好にゃ。
「あっ、あれは」
一番親しい真っ白にゃネコ。
身体のほとんどが雪に埋もれる中、今にもおネムしそうにゃ顔を出していたのにゃ。
子ネコは立ち上がった。でもにゃ。弱った身体では歩くのも容易じゃにゃい。
おまけに、吹きつける雪と積もった雪が行く手を阻む。
それでもにゃ。一歩一歩、持てる力の全てを振り絞って進んにゃのにゃ。
「あとわずか…………ふぅ。やっとでしゅの」
よろめきにゃがらも、にゃんとか辿り着いたのにゃん。
向き合う二つの顔。片っ方が声をかけたのにゃ。
「自分もここに居ていいでしゅの?」
返事はにゃい。でもにゃ。まぶたを重そうにしにゃがらも、こくり、と頷いてくれたのにゃ。
「有難うでしゅの」
お礼を口にするも、相手は、ぴくり、ともしにゃい。目も既にしっかと瞑られていたのにゃ。
「安からにゃ寝顔でしゅの」
子ネコは横に並ぶ形で蹲ったのにゃ。
(ここに居れば起きた時、直ぐに話しかけられるでしゅの)
冷たく寒い。動くものもにゃにもにゃい。でもにゃ。さみしさはにゃい。
にゃって見回せば、至るところにネコの姿があるのにゃもん。
埋もれかけている自分の仲間、雪ネコの姿があるのにゃもん。
「みんにゃも居るでしゅの。ひとりじゃないでしゅの」
一段と激しさを増す吹雪が、情け容赦にゃく、子ネコらを白く染め上げていくのにゃ。
最初は、『冷たいでしゅの』と思ったのにゃ。
でもにゃ。身体が埋もれていくうちに、『温かいでしゅの』と感じるようににゃった。
どんにゃに荒れ狂うように降り注ごうとも、もはやにゃんの気にもにゃらにゃい。
「幸せでしゅの」
にゃんの恐怖もにゃい。生まれて間もにゃく知った、
優しい母親ネコの暖かい懐に抱かれているようにゃ心持ちが、今ここにあるのにゃ。
「そういえば、ミアンしゃんがいっていたでしゅの」
自分にくれた名前を想い出したのにゃ。
子ネコは思い当たったのにゃん。
『自分は今、家族に囲まれているでしゅの』と。
『暖かいのはそのせいでしゅの』と。
安らぎを覚える中、次第におネムにゃ気分に。
もうまぶたを開けたままではいられにゃい。
「お休みなさいでしゅの」
子ネコが誰にともにゃく口にした言葉。
そして……それが最後にゃった。
箱座りの姿で、目は静かに閉じられたのにゃ。
(来年、また新しい命と身体をもらえたらいいでしゅの)
そんにゃ願いを心に抱きにゃがら。
子ネコの目が再び開かれることは、もう二度とにゃかった。