第五話『秋の出来事にゃん』
第五話『秋の出来事にゃん』
秋深まる頃にゃ。
精霊の間、地中、ミーにゃん同盟と、子ネコが交友関係を拡げていく中、
『これは事件です』みたいにゃことに遭遇したのにゃん。
見知らにゅ小さにゃネコ型の生き物が小川におぼれかかっていたのにゃ。
身体から自然放出される霊波が微弱にゃもんで直ぐに、
『霊体じゃない。ナマネコでしゅの』と子ネコは悟ったのにゃん。
……ナマネコとは実体失くして存在し得にゃいネコのことにゃ。
「大変でしゅの」
苦手にゃ水の中へと飛び込んにゃのにゃ。
子ネコが力を振り絞って泳いで、にゃんとかそばまで近づいたらにゃ。
向こうも気がついたのにゃろう。身体にしがみつくや否や、背中へと上がったのにゃん。
「ふぅ。もう大丈夫でしゅの」
子ネコは安心。岸まで連れていったのにゃ。
とそこへ、助けた相手の仲間と思われるネコらが、ぞろぞろ、と現われたのにゃ。
白ネコ、黒ネコ、キジネコ、もちろん、助けたネコとおんにゃじ三毛猫も。
「あんたが落としたのか!」
開口一番、怒鳴られた……にゃけじゃにゃい。
小石を蹴られ、襲いかかられ、とさんざんにゃ。
わけを話すひまもにゃく、子ネコは大急ぎでその場から逃げ出したのにゃん。
逃げて逃げて逃げまくって……やがて、小石も飛んでこにゃくにゃった。
立ちどまって振り返れば、もう誰も追ってはこにゃい。
子ネコは、ほっ、としたのにゃ。
思えば、何度か小石が当たった。
実体波とはいえ、痛覚もあるもんで、ぶつけられば痛みは感じる。
もちろん、身体の、よりも、心の痛みのほうが大っきい。
でもにゃ。今は、助かった、という安心感のほうが、もっともぉっと、大っきいのにゃ。
(怖かったでしゅの)
精霊の間に戻ると、子ネコは身に起きた出来事をイオラにゃんに語ったのにゃ。
どうしようもにゃく小刻みに震える身体と、半ば涙ぐんでいる顔で。
聴き終えたイオラにゃんは白いネコへと変化。母親のようにゃ姿とにゃったのにゃ。
「大変な目に遭ったのね」
そっと抱き締められた子ネコ。全身に伝わる温もりに安らぎを覚えたのにゃ。
自然と身体の震えはとまり、顔も穏やかに。
知らず知らずのうちにおネムにゃん。
翌朝。子ネコを追い駆け回していた連中が湖の広場へとやってきたのにゃ。
助けた子供が気を取り戻して、ことの仔細を語ったのにゃ。
おわびに、と、差し出されたのは盛りだくさんの木の実。種類も数多くにゃ。
聴けば、採れるのは秋にゃけ。
しかもにゃ。『門外不出の』を頭につけてもいいくらいの、
彼らの間でしか食べることの許されにゃい貴重品、とのことにゃ。
「有り難く頂くでしゅの」
木の実のお礼にゃけじゃにゃい。
『今度、通りかかった時には、是非、子供たちと遊んで欲しい』ともいわれたのにゃ。
もちろん、子ネコは元気良く、
「はい! でしゅの」と答えたのにゃ。
(めでたしめでたし、でしゅの)
帰ったあと、子ネコが木の実を食べようとしたらにゃ。
「待つのにゃ。にゃにかあるといけにゃい。先ずはウチがお毒見にゃん」
ミアンがパクついたのにゃ。
「ふむふむ。これは『良し』にゃ。にゃら、お次は」
「アタシが頂くわん」
ミーにゃんもパクついたのにゃ。
「にゃんと! にゃら、お次は」
「ワタシが頂こうかしら」
イオラにゃんもパクついたのにゃ。
「にゃ、にゃんと! にゃら、次こそは」
「自分が頂くでしゅの」
子ネコも負けじとパクついたのにゃ。
「にゃ、にゃ、にゃんと!」
……以後、木の実争奪戦が勃発したのはいうまでもにゃい。
めくるめく日々の中、
『楽しい』『つまらない』『おっかない』『驚いた』『嬉しい』にゃどの思いが、
かわるがわる生まれては消えていく。
こうして子ネコは自分というものに少しずつ目覚めていったのにゃ。