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第一話『春にゃん』
第一話『春にゃん』
今年も懲りずに春の訪れがやってきたのにゃ。
新たにゃ命があちらこちらに芽吹く季節にゃ。
ネコの生る木から遠く離れたここにもまた、雪ネコが一匹生まれたのにゃん。
枝から落ちた実が強い風に乗って運ばれたせいにゃ。
でもって、ころころと、地面を転がったせいにゃ。
運命のいたずら、といってしまえばそれまでにゃのにゃけれども。
仲間とは違う定めを持つ雪ネコが生まれてしまったのにゃん。
「ふにゃあ。ふにゃあ」
泣き叫ぶ子ネコの声を聞きつけて、一匹の大っきにゃ白ネコが現われたのにゃ。
「よしよし。わたしがお前のお母さんになってあげるからねぇ」
ネコの生る木から生まれた子ネコの前には、必ず、育てのネコが現われるのにゃ。
どんにゃに遠くであろうとにゃ。
母親とにゃったネコは、我が子とした子ネコの身体を嘗め回すのにゃ。
子ネコのほうもまた母親と認めて甘えるのにゃ。
自ら温もりを求めて、しがみつくのにゃ。
命の糧である乳を求め、吸い始めるのにゃ。
ごくごく。ごくごく。
「美味しいでしゅの」