表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界で一人で生きたら閻魔大王に怒られた。

作者: 蒼稲風顕

 突然だが、俺は地獄の閻魔大王に怒られている。



「お前は、異世界に転移したのに何をしておったのじゃ」

「普通に生きてましたが?」



 俺は特に人さまに迷惑をかける事などしていない。

 というか、異世界で人と会わなかったから迷惑のかけようもないといったところか。

 俺が32の時にいきなり山奥に転移させられ、あちらの神からユニークスキルと小屋というか家を貰った。


 ちなみにそのユニークスキルは、「藁が1日に10kg届く」という訳のわからないスキルだった。

 確かにコレはユニークだわ。

 他の人にも真似できないし、ギャグのようなスキルだ。

 子どもの頃にユニークなお子さんだねと言われたことがあるが、スキルまでユニークとは思いもしなかったよ。

 当然、ガチャで引き当てた時に思ったね。こりゃハズレだと。

 まあ元々、人とのコミュニケーションを取るのは面倒だった俺は、これを引いて一人で生きて行こうと決意したね。


 それから10年後の42で肺炎を起こして死んだという訳さ。

 で、この間の10年だが、俺なりに精一杯頑張って生きたつもりだ。

 小屋にあった農業用具と農作物の種で必死になって畑を作ったり、置いてあった釣り竿で魚を釣ったり。

 生きる為に頑張ったんだけどな?


「それは、スローライフというものだ!!」


 まあ確かに言われてみればそうだ。

 確かに一年目は大変だったが、二年目からは慣れてきたので楽になったな。

 で、三年目くらいからは、余裕が出て小屋を改造したりして快適にしたっけ。

 藁が毎日届くからそれで、防寒具を試行錯誤をしながら楽しく作ったのもいい思い出だ。

 結果、始めはどうなるかと泣きそうだったが、途中からは田舎暮らしを楽しんでいたと言われても否定できない。(藁、結構いい)



「向こうの神から、やりすぎなければ何をしてもいいと言われなかったか?」

「はい。ですから自重したつもりですが……」

「お前な……それは、やりすぎなければ日本の文化を広めてもいいぞ。いや、お前にはハッキリ言った方が良かったか……。日本文化を広めろ、ただし世界が傾くような事は止めてくれ! そう言ったのだ」

「はぁ……広めて良かったのですか?」

「だが、お前はそれを素直に受け取った」



 そういって閻魔大王は頭を抱えた。

 で、少し考えると何を思ったのか顔をあげ、



「もう一度、あっちの世界に行ってみるか?」

「いえ、結構です」



 当然の如く、俺は向こうの世界に行くのを拒否した。

 何が悲しくてまた藁にマミレテ生きていかねばならんのだ。

 まあ藁にマミレルのも悪くないがね。



「このままだと死んで記憶を消されて転生か、魂の消滅になるぞ、それでもいいのか?」

「はい。でしたら消滅で」



 何というか、また生まれて1からやり直すなど真っ平ゴメンである。

 特に生きる事に執着心が少なかったので、このまま消えるのもいいかなと思っていた。



「本当にそれでいいんだな?」



 閻魔大王が再度確認をとる。



「はい。消滅でお願いします」



 消えれば、苦しかったり痛かったり悩んだりするのもおさらばである。

 生きている限り、そういった悩みはあるが消えればそれもなくなるからね。

 まあ俺も15ほど若ければ転生したいと思ったかもしれないが、もう中年まで生きたからもう生きるのはお腹いっぱいである。

 特に後悔も思い残しもないので、スパっと消滅させて欲しいのだよ。


 俺の返答が閻魔大王にとって予想外のことだったのかウンウンと悩みだした。

 まあ普通の人なら違った回答だったかもしれないな。

 俺の生き方を見ても、そんなに絶望もしていなかったし。

 よくよく見れば、田舎暮らしのスローライフを満喫していたのだからてっきり転生やらを回答すると思ったんだろうな。

 で、俺が消滅を選んだからどうしていいか悩んでいると。


 まあ俺が閻魔大王の立場なら、俺を消滅させて、もっとマシというか行動的(野心?)な人間を送り込むんだけどな。

 多分、俺がまた行っても同じことをすると思うよ。

 そんな事を考えていたら、閻魔大王が俺に話しかけてきた。



「実をいうとな、先方(転移先)の神がな。お前を名指しで指名してきたのだ」

「え……俺をですか?」



 全くもって意味不明である。

 どこを間違えて、俺を選んだかなんてわからない。

 何と言っても当初の神さまの目的であった、あっちの世界で日本文化を広げる事など何もしてこなかった実績がある。


 それに何というか、そもそも何故に俺があっちの世界に行ったかわからないし、何故かそこらへんの記憶も曖昧なのである。

 それこそ I MY ME である。

 とまあ、冗談はそこまでにして閻魔大王が話してきた。



「ワシも違う人間の方がいいと伝えたのだが、何というかあちらの神がな、お前の事が気に入ったらしくてな。何でもお前の生活を見ていてのだが、ほのぼのするとか」

「……ほのぼのですか?」

「うむ。実はあちらの世界は色々あってな。殺伐としておるのじゃ。そんな中で、のんびりというか日々黙々と農作業をしていたお前を神が見てな、楽しんでおったらしいのじゃ」



 おっと、知らない情報。

 なんとあっちの世界は、殺伐としていたとな。

 全然知らなかった。


 まあ俺って奴は、ユニークスキルの1件もあって、42で死ぬまで10年の間、ずっと同じところで移動もせずに生活していたからな。

 それに転移した場所が山奥なのかどうかしらないが、何といっても人間らしき者とは一切出会わなかったからな。

 時折、野生の動物はチラリと見たが、まあ見たのはそれくらいで、気にも留めなかったしな。

 特に獲って食べようとかも思わなかったし。

 というか、一般人だった俺には動物の解体の仕方も当然わからないから、何も出来なかったという理由もあったり。



「それでじゃ、お前にハーレムになれるスキルや、あちらで生きていく為に必要な武力を与えるから、もう一度行って貰えんか?」



 おっと、ハーレムきたーーー!!

 だけど、残念!

 俺はさっきも言った通り、コミュニケーションを取るのが嫌いなんだよ。

 コミュニケーションを取ることが出来る出来ないで言えば出来るが、わざわざ取りたくないのだ。

 そんな俺にハーレムだと?

 それは一体、何の罰ゲームなのだ。

 絶対に人間関係で悩むに決まっているじゃん。

 会話にしても相手に気を遣いながらになりそうだし。

 そして、揉め事の原因にもなりそうな武力だと?

 それなら前回みたく一人で農作業をしていた方が全然マシである。


 時々見る野生の動物を見ながら心を癒されて生きた方が全然いい。

 でも、あくまでも見るのが好きであって、飼いたいとは思わない。

 お世話をするのが大変だから。

 半分というか枯れきった俺の返答は勿論。



「お断りさせて頂きます。当初の話の通り、消滅でお願い致します」



 で、その結果。

 何故かこうなった。



「何で、不老不死なんだよ!」



 神様や閻魔大王は俺の返事など関係なかったのだ。

 言わば、一応質問をしたりしてみたかっただけ。

 俺の戻りは確定済だったのだ。


 以前住んでいた家は回収されたみたいなので、現在歩いている最中。

 今、歩いているのは砂漠。

 暑いけど、喉が渇かない不思議仕様。


 とりあえず、この世界で生きないといけないらしい。

 あまり人と関わりあいたくなかったから砂漠にある誰もいないオアシスを探している。

 何というかもうあきらめた。

 どうせ死なないから閻魔大王にも会わないし。

 もうのんびり生きよう(生きてきたのに)


 俺は、こうしてまたのんびり生きる為に、少しだけ頑張ることにした。

 それをこっちの神が覗いて楽しんでいるとも知らないでいると知らないがままに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] マミレテ、ほのぼの。スローライフ良いです。 [一言] 藁で広める日本文化?って何があるのでしょう。 屋根と腰蓑しか思いつかなかった。 あっ、かつおのたたきがあった。 面白いです。 次回も楽…
[一言] 飼育箱のペットを眺める感覚なんだろうけど、不老不死とかある意味拷問じゃね?
[良い点] 閻魔に会わないのはいいとして神に勝手に指名されてそれで尚一人で生活をする。 不老不死となる、誰にも会わないで一人で生きた時にいつまでも心が満ちているように感じられればいいのですが、変わら…
2017/01/24 12:05 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ