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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第1章『ふたりの王子さま』
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第8話 分かったよ



 待って?

 私、今何って思った?


 直登の事が…………好き?


 い、いやいやいやいや、それは無いでしょう?

 だって、直登は幼馴染みでそんな感情なんて生まれないって。私は、ずっとそう思ってきた。

 それは、今までもこれからも一緒で……。


 それなのに、この胸の高鳴りは何?

 この熱く火照る体は何?

 この苦しくてどうしようもできない感情は……何?


 それは、直登に恋をしているから。

 もしかして、ずっと気づかなかっただけで、私は直登の事が、前から…………?


 い、いやいやいやいや、そんな事は無い!!

 断じてあり得ない!!


 だって、直登は学校では王子さまを演じて、それにコロッと落ちる女子生徒を見て、嘲笑うような最悪なヤツだよ?

 そして、そんな王子さまの影には私をいじめ倒す、悪魔が潜んでいる。

 そう、私には全く優しくなかったじゃない!!

 そんなヤツの事を、好きになるなんてあり得ないんじゃないの!?



「…………可鈴」



 ドクンッ──!!


 突然呼ばれた名前に、嫌でも心臓が飛び跳ねる。

 体は正直って、こういうことを言うのかな。



「……何っ……?」



「……これは、お前を傷つけるだけかもしれないけど……話していいか?」



「……え?」



 抱き寄せられたまま、そんな事を言われ、私は訳が分からなくなる。




「桐谷は、やっぱり俺の中では、すすめられない」




 ここで出てきた桐谷くん。本当は、一番聞きたかった事だ。でも、なかなか口に出せなかった。二人の間で、何かが起こったことは確実なのに……怖くて何も聞けなかった。

 でも、直登の方から勇気を出して口にしてくれている。本当に、何でも分かってくれるんだな……。



「……どう……して……?」



「……アイツは、俺みたいに本当の自分を隠してる。表の顔は確かに優等生かもしれないけど、裏の顔はとんでもない。……その証拠に、アイツは……」


 その時、直登の腕に力が入るのが分かった。





「──可鈴の事、好きでも何でもない」




「…………え?」




 え?好きじゃない?

 じゃあ、あの言葉の数々は?

 私に対する、悲しげな笑顔は?

 全部騙されている私を、嘲笑うためのものだった訳?


 悲しくないといえば嘘になる。

 でも、どこかで安心している自分もいる。

 桐谷くんは、私の中で掴めない人だったから。

 それも今思えば仕方の無い事なのか。

 だって、彼は私に対して真の姿なんて見せなかったから。

 私に対して、何の感情も無かったから。


 心に溜まっていた物が、ストンと落ちる感覚。

 何か、すごくスッキリした。


 私は、直登の腕からスッと逃れる。直登は、私の事を心配そうに見つめる。




「直登……ありがとう!!教えてくれて良かった!」


 私の言葉に、目を丸くする直登。その様子がおかしくて私は声を出して笑う。


「変な顔しなくて良いから!!あーあ、何かスッキリしたー!!」


 私がそう言って伸びをすると、その腕を掴まれ、グイッと引っ張られる。

 驚いて直登の方を見るが、彼は真剣な目をしていた。

 その目に、思わずドキッとする。




「……無理して笑ってないよな……?」



「……無理してないよ……?どうしてっ……?」



「いや……違うなら良い」




 そう言うと、直登は優しく笑った。

 その笑顔が、あまりに綺麗で……素敵で……

 高鳴る鼓動を抑えることが出来なかった。



 ああ、ダメだ……。

 否定したって、もう無駄だ。



 私、あなたが好き。


 いつの間にか、あなたに恋してたみたい──。




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