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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第5章『彼の秘密』
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第47話 彼の秘密


「──え?桐谷くんと?」




 花火大会から3日後の補習終わりに、私は凪沙を捕まえて話を聞いていた。あの時言っていたあの人とは誰の事だったのか。湊くんと一緒にいた、女性の事も気になるし……。もし、凪沙がその場面を見てしまっていたら……。変な考えが巡る前に、まずは本人に聞いてみることにした。


「いやいやっ!桐谷くんとまわるなんて無理だよ!あの人って言うのは、綾人くんの事だよ?」


「え、あ、ひ、樋野くんだったのかー!そっかそっか!」


 私のその様子に、凪沙は少し目を細める。



「……何?何かあったの?」


「えっ!?な、何もないよ!気にしないで!!」


「……分かった」


 凪沙は納得のいかない顔をしていたが、それ以上は追及してはこなかった。



***



「──湊くーん」


 補習を終え、下駄箱で靴を履き替えている時、後ろで聞きなれた声がした。



「瀬戸さん?どうしたの?」


「いや、一緒に帰ろうと思ってね!」


「一緒に帰ろうって」



 俺は、キョロキョロと辺りを見回す。幸坂の姿はない。



「……幸坂はどうしたの?」


「直登なら、今日は久しぶりにお父さんが帰って来るからって、ダッシュで帰って行ったよ?」


「あー、そういえば単身赴任って言ってたね」


「そうそう!だから今日は一緒に帰ろう?」



 瀬戸さんはニコッと笑みを浮かべると、靴を取り出す。


「後で怒られても、俺責任とらないからね?」


「良いの良いの!それに、湊くんには聞きたいこともあるしね!」



 靴を履き終えた彼女は、そう言って俺の隣に並ぶ。



「……聞きたいこと?」


「まあ、話しながら帰ろうよ!」



 普段より変に明るい彼女の様子に違和感を感じなからも、俺はその誘いを断ることが出来なかった。

 高鳴る鼓動を彼女に気づかれないようにするのに、必死だったからだ──。




***




「──あ、そういえばさ、湊くん花火大会行った?」


「……え?」


「今年の花火、すっごい綺麗だったよね!!」


「……あー、実は俺見に行って無いんだよね。用事があってさ」


「……え?」


「……え?」


 瀬戸さんは、俺に向けて困惑の表情を見せる。その彼女の表情を見て、しまったと思った。




「あ、間違え──」




「──わざわざ嘘つくって事は……やっぱりあの人と何かあるんだね……?」




 瀬戸さんの鋭い目つき。俺は下唇を噛んで、プイッとそっぽを向いた。

 あの人って……アイツの事だよな……?まさか、一番見られたくない人に見られてたなんて……。




「……あの時の湊くんの表情が忘れられなくてね……ずっと気になってた」




 瀬戸さんの落ち着いた声。聞きたかった事って……この事かよ……。




「一人で何か抱え込んでるんじゃない?」




 見え透いたようなその言葉。俺は、下を向いて抵抗し続ける。




「前にも言ったけど、私はどんなことがあっても湊くんの味方だから。だから、苦しいときには話してみて?話すだけでも、楽になることってたくさんあるし」




 ダメだ。ちょっと一回黙ってくれないと、俺落ち着けないわ。





「私はね、湊くんの力に──」



 そう言って、握ろうとしてきた手を俺はパシッと振り払った。ようやく彼女の顔を見たが、大きく目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。




「……話すことなんてないから」




「でも、あの時の湊くん──」




「──うるさいんだよっ!!!!」




 自然とそう叫んでいた。俺は、そう叫んだ直後ハッとする。彼女は、悲しげな表情を浮かべていた。




「……ごめん……なさい」



 彼女は振り払われた手をさすりながら、謝ってくる。

 謝罪の言葉なんて……欲しくない……。



「私じゃダメなら、直登だっているから……。凪沙も、樋野くんもいる……。湊くんは、一人じゃ──」




「──ごめん」



 瀬戸さんは、俺の声に顔を上げる。しかし、そんな彼女を俺はどん底まで突き落とした。







「──全然響いてこないわ……。もうこれ以上首突っ込まないで」







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