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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第1章『ふたりの王子さま』
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第4話 分からない




 いつもの帰り道。いつも見ている景色。いつもと何も変わらない。ただ一つだけ違うのは、隣にいるのが直登では無いということだ。



「瀬戸さん」



 そう言って、急に肩を引き寄せられる。


 へっ!?!?

 いきなり何!?何なんですか!?


 と、焦っているとすぐ隣を自転車がチャリンチャリンと通っていった。そして、離される手。

 私は、目をパチクリさせながら、桐谷くんの顔を見つめる。桐谷くんは私の視線に気がつくと、クールな笑みを浮かべる。


 ドキッ……。


 何か、桐谷くんって、すごくスマートだな……。クールな感じだから、何を考えてるかは読み取れないけど、優しい人なんだって事は、行動から伝わってくる。



「桐谷くんって、有名な人だったんだね?私、そういう事に疎いから、何も知らなくてごめんなさい」


「え?いや別に気にしなくて良いよ。それに有名だなんて、そんな事ないから」


「でも次期生徒会長って言われてるんでしょ?」


「それも、ただの噂だよ」




「幸坂くんと同じくらいモテるっていうのは?」




 その言葉に、桐谷くんはピクリと反応をした。そして、立ち止まる。



「……瀬戸さんはさ……幸坂の事、どう思ってるの?」


 真剣な顔でそう尋ねてくるので、私も立ち止まった。そして、桐谷くんと向かい合う。



「幸坂くんの事……?」



「──好きなの?」



 ビューッと強い風が吹く。髪の毛で、視界が少し塞がれるが、桐谷くんはずっとこちらを見つめている事が分かる。私は、髪を直すと答える。








「──好きだよ」









 私の言葉に、桐谷くんは少し驚いた顔をした。私は、それに構わず続ける。



「もちろん好きだよ。だって、直登は私の兄弟のような存在だから」



「……直登。……兄弟」


 あ、直登って言っちゃった。皆の前ではお互いに名字で呼ぶって決めてたのに。……まあ、良いか。



「違うよ。俺が聞いたのはそんな事じゃない」


 そんな事を考えていると、再び桐谷くんが口を開いた。私は、もう一度桐谷くんの方を見る。



「幸坂の事、一人の男として好きなの?」



「一人の……男」



 その言葉に、私は何も言えず黙り込んでしまった。直登の事、一人の男として好きとか、考えたこともなかった。小さい頃から、ずっと一緒にいて、そんな感情よりも、本当に兄弟のような感覚でいたから……。




「俺はね?好きになって欲しい。瀬戸さんに。俺の事を、一人の男として。だから、瀬戸さんに勇気を出して告白したし、俺の事を知ってもらおうとして、こうやって一緒に帰ってる。友達としての、好きなんて気持ちはいらない。それくらい、本気だから」




 桐谷くんは、私の目を見て真っ直ぐそう伝えてくれた。その言葉が、真剣な目が、震える手が、私の心を強く揺さぶった。



「……ごめん、熱くなりすぎた……」


 桐谷くんは、そう言って再び歩き始めた。私も、歩き出すと、彼の腕を掴んだ。驚いて振り返る桐谷くん。そのまま私は告げる。




「付き合おう!桐谷くん!」




「……え?」



 目をパチクリさせる、桐谷くん。



「桐谷くんの気持ちは伝わってきたし、心に刺さったから。……私も、桐谷くんの事が好きになれたら良いなって思ったし」



「……瀬戸さん」



「これから、よろしくお願いします!」



「こちらこそ、好きにしてみせるから待ってて?」



 私たちは、目を合わせて笑った。それから、私たちはたくさんの話をしながら、家まで帰って行ったんだ。




***



──ピンポーン。


「はーい!今行きまーす!」


 母親の元気な声が聞こえる。ガチャリと、玄関の扉を開ける音。


「あら、直くん!!何?可鈴が忘れ物でもしちゃった?」


「おばさん、お久しぶりです。そんな事無いですよ!ちょっと用事があって来ただけですから」


 二人の会話が聞こえ、私は自分の部屋の扉を静かに開けた。自分の部屋の、前の廊下を真っ直ぐ進めば、すぐに玄関なので、話している二人とすぐに目があった。



「あ、可鈴。直くん入れてあげなさい!」


「あー、うん。分かったー」


 直登は、母にペコペコとお辞儀をすると、私の部屋に入る。私の、部屋に入ってしまえばいつもの直登に戻る。





「帰ってくるの遅かったんだな」



 直登はそう言いながら、私の方をチラチラと見る。



「そりゃあ、色々と話しながら帰ってたからね!」


「ふーん……。で?桐谷とは、どうなったんだ?」


「あ、付き合うことにしたよ!」


「……は?」


「悪い人じゃ無さそうだし、真剣な気持ちも伝わってきたから、とりあえず付き合うことから始めようと思ったの」


 直登は、私の言葉に驚きと苛立ちを隠せていない様子だった。


「とりあえずって何だよ。よく分かんねぇヤツと、そんな簡単に付き合って良いのかよ」


「簡単な気持ちじゃないよ。ちゃんと考えて──」







「──簡単な気持ちだろ。じゃあ、お前は、もし俺に告白されたらどうするんだよ?」






「………え?」




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