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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第4章『3年生』
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第39話 過去①




「──あ、もしもし凪沙?」



 学校終わりに凪沙に電話をかける。その声に元気さは感じられなかった。

 昨日のことがよほどショックだったのか、凪沙は今日学校を休んでいた。桐谷くんも、樋野くんも心配で、そわそわとした1日を過ごしていた様子だった。



「今日泊まりに来ない?明日ちょうど休みだしさ、久々に女子二人でゆっくり話そうよ!どう?」



 少しでも凪沙の力になりたいと思った私は、彼女の過去を知りたいと思った。彼女に過去を話してもらって、痛みを共有するだけでも、少し気持ちが楽になるかもしれない。

そう思って、勇気を出して誘ってみた。



『……行きたい』



 凪沙は、震える声で、でもしっかりと決意を込めてそう言ってくれた。


 凪沙、一人で抱え込ませて本当にごめんね。

 早く私に話して楽になって──?





***




 ──ピンポーン。


 電話をしてから二時間が経った頃、インターホンの音が鳴り響いた。私は、ハッとして立ち上がると、玄関へと向かう。

 扉を開けると、照れ臭そうに笑う凪沙が立っていた。

 もう辺りはすっかり暗くなってしまっていた。



「上がって上がって!」


 私はそう言うと、部屋へ迎え入れる。凪沙が持ってきてくれたお菓子を机の上に広げ、可愛いグラスに入れたジュースで軽く乾杯をする。


 少しの間、他愛もない話をして盛り上がった。凪沙の笑顔も戻ってきたところで、私は話を切り出すことにした。



「……凪沙、聞いても良いかな……?樋野くんのこと」


「……うん。でもこの話をすると長くなっちゃうけど……大丈夫?」


 凪沙は、そう言って心配そうに私の顔を覗き込む。

 私はニコッと笑って答えた。


「大丈夫だよ!朝まででも語ろう!」


「うん。可鈴、ありがとう。あのね──」






***






 ──ピンポーン。


 インターホンの音が鳴り響き、私は「はーい!」と返事をする。ガチャリと扉を開けると、爽やかな男性が立っていた。


「あ、井上さんのお宅ですか?」


「あ、はい。そうですけど」


「僕、今日から菜月さんの家庭教師としてお世話になります、樋野綾人と申します」


「あー!家庭教師の!!ちょっと待ってくださいね!」


 私は、そう言うと二階にある妹の菜月の部屋に向かう。そして、トントンと部屋の扉をノックする。


「菜月!家庭教師の人、もう来てるよ!」


「えっ!?ちょっ、ちょっと待って!!」


 ガチャリと扉を開けると、菜月は絶賛おめかし中といった感じだった。部屋は、いつもよりも綺麗に整理され、ほのかに甘い香りがする。普段、履かないようなスカートを履き、髪も緩く巻いてるし……。



「ちょっ、お姉ちゃん!!開けないでよ!!」



「いやいや、何してるの?そんなにおめかしする必要ある?勉強するのに」


「だっ、だって!お母さんが、家庭教師の男の子すっごくイケメンだったよ!って言うから、ちょっと気合い入っちゃって」


「あー……まあ、確かにね。でも、あまり待たせられないから、とりあえず上がってもらうからね」


「わ、分かってる!!あと五分だけちょうだい!!」


「もー……仕方ないなぁ」


 私は、扉を閉めると再び玄関へと向かう。先程の男性は、私の姿を確認すると苦笑いを浮かべる。



「……もしかして、来るの早すぎましたか?」


「あ、そんなことないですよ!!妹の準備が遅くて、申し訳ないです!!」


「あ、お気になさらず!」


「とりあえず、ここで待ってもらうのも申し訳ないので上がってください。お茶とか入れますから」


「あー……気を遣って頂いて申し訳ないです」


「大丈夫ですよ!どうぞ!」



 そんな話をしていると、階段をダダダダッと駆け降りてくる音が聞こえた。

 菜月は、そのままの勢いで私の隣に立つと、家庭教師の姿を見て、あからさまに頬を赤らめる。



「あ、菜月さんですか?」



「あ、は、はいっ!!井上菜月です!!」



「あ、今日から家庭教師としてお世話になる樋野綾人です。よろしくお願いしますね」


 そう言って優しい笑顔で微笑みかけられ、更に顔が赤くなる菜月。……勉強になるのだろうか。

 そう思いながら、私は二人の背中を見送る。


 まあ、これで菜月の勉強のやる気が出ればそれで良いんだけどね。そう思っていた──。






***





「──へぇ、樋野くんって家庭教師してたんだ!」



 お菓子を食べながら、凪沙の話に耳を傾けていた私。凪沙は「そうなの。」と言って、一度ジュースを口に含んだ。


「彼が家庭教師になってくれてから、菜月の成績はどんどん伸びていってね。両親も大喜びだったの」


「そりゃあ、そうだよね!」



「でも、ここからが問題だった」


「……うん」



 私も、ジュースを一口含んでから、覚悟を決め再び凪沙の話に耳を傾けた。




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