表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第4章『3年生』
38/59

第38話 深まる謎



「──何?見てたの?」




 そう言って笑う樋野くん。

 ゾクッと冷えた背筋に、大きな恐怖。

 触れてはいけないことに触れてしまったような気がする。

 しかし、湊くんと直登は全く怯んでいないようだった。



「じゃあ、井上さんといたってことは認めるんだね?」



「認めるよ。でも……見られてたのなら、僕かっこ悪いね」



「え?」



 さっきの怖さは何だったのか、一瞬で普段の雰囲気に戻る樋野くん。コロコロと変わる彼の表情に、私は戸惑いを隠せなかった。



「だって、最近凪沙が一人になることって少なかったし、チャンスだと思ったんだよね……。何か、桐谷くんが守ってるような感じだったから」


 え?どういうこと?

 ていうか、今『凪沙』って呼び捨てした?

 しかも、チャンスって何が?



「何を企んでるの?」



 落ち着いてきたのか、湊くんの口調も、大分元に戻り始める。



「企んでる訳じゃないよ!ただ……僕は凪沙と話がしたかっただけだよ」


 キーンコーンカーンコーン──。

 昼休み終了の合図が鳴り響く。


 すると、樋野くんが慌てて話をし始めた。



「と、とりあえず簡単に説明すると、幸坂くんが凪沙のもとを離れた間に、空き教室に行ったんだよ。そしたら、めちゃくちゃ怒られて、机は倒すし、お弁当は投げ捨てるし……。嫌われてるから仕方ないんだけどね……。それに多分怒って家まで帰ってると思う。

僕から詳しいことを話して良いのかは分からないから、全部は話せないけど、とりあえず凪沙は乱暴されたって訳ではないよ!

あの状況を見てきたなら、僕の話は信じられないかもしれないけど」



「し、信じるよっ!!」


 私も、樋野くんの焦りを感じたのか、焦り気味で答える。湊くんも納得いっていない様子だったが、小さく頷いていた。


 とりあえず、樋野くんと凪沙は昔何かあったんだ。

 そういえば、樋野くんの話を凪沙に投げ掛けた時、様子がおかしかったもんね。

 でも机をなぎ倒したり、お弁当を散らかしたりするほど怒ったってことは……樋野くんが、かなり酷いことをしたって事だよね……?


 結局謎は深まるばかりだったが、今は凪沙に話をしてもらうしかないのだ。


 そう思いながら、教室に戻るとすぐに凪沙にメールを送った。







『今まで気づいてあげられなくてごめんね。私で良かったらいつでも話聞くから』









***




 ガチャン。


 玄関の扉を閉めてようやく心が落ち着いた。


 何か勢いよく学校飛び出して来ちゃったけど、大丈夫だったのかな?今考えてみると、とんでもないことをしてしまったのかもしれない。

 とりあえず、自分の部屋に行って休もうと思い靴を脱ぐ。すると、リビングの扉がガチャリと開いた。



「何?今日早くない?」



 扉から顔を覗かせた母は、時計を確認しながら私に尋ねてくる。



「あー……5、6時間目の先生が体調不良で帰っちゃって、早く授業が終わっちゃったんだよねー!」


「……ふーん?そう」


 私の言葉があまり信用ならないのか、母は生返事をしてリビングへと戻っていった。ホッとため息をつき、重い足取りで二階にある自分の部屋へと向かう。


 自分の部屋の扉に手をかけた瞬間、隣の部屋の扉がガチャリと開いた。その音に、ビクッとして固まってしまう。その部屋から出てきたのは、私の妹、菜月(ナツキ)だ。菜月は、私の姿を見るとプイッと顔を反らし階段を降りていく。

 はぁ……とため息をつくと、部屋の中へと入る。


 菜月と会話をかわさなくなったのは、一体いつからだろう?もう随分と昔のことのように感じる。


 部屋に入り、ベッドにドサッと崩れ込む。そして、何も考えずにスマホを開き、私は固まった。





『今まで気づいてあげられなくてごめんね。私で良かったらいつでも話聞くから』




 可鈴からメールが届いていた。

 その文章を見て、涙がじわっと滲んでくる。

 私、本当に何してるんだろう。バカだな……。


 これ以上何も考えたくなくて、私は静かに目を閉じた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ