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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第1章『ふたりの王子さま』
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第3話 まさかの展開



「……はぁ、幸坂くんって本当にカッコいい……」


 私の前で、そう幸せそうに呟くのは、クラスメイトの井上凪沙(イノウエナギサ)。凪沙とは、中学生からの仲。とても女の子らしく、妹のような可愛さがある。


「……そうかな……?」


 私がそう言うと、凪沙は厳しい目付きで私を見る。



「そうかな?じゃない!!幸坂くんほどカッコよくて、優しくて、勉強もスポーツも出来て……って人この学校にいないんだから!!」



 熱を入れてそう言われるが、私の心には刺さってこない。だって、それは彼が作り上げた偽の姿だから。

 まあ、顔はどうやっても作れないから、そこは認めるんだけどね。



「幸坂くんと幼馴染みとか羨ましすぎる…!!しかも、家も隣で毎日一緒に登下校!?本当信じられないんだけど!!私もいつでも側にいたい……!!」


「いれば良いのに……。凪沙、幸坂くんが来るといつも逃げるんだから」


「そりゃあ、カッコよすぎて直視出来ないんだもん!仲良くなりたいと思っても、近づくことさえ出来ないような存在なんだよ!!」


「……へ、へぇー」



 言っている事が矛盾してると思いながら、私は話を聞く。

 皆が、直登の本当の姿を知ったらどうなるんだろう?一気に冷める?きっと、そんな事は無いだろう。

 『冷たい幸坂くんも素敵!!』と、更に騒ぎだす女子が増えるんじゃないだろうか?それは、それで凄いとは思うけど……。



「──瀬戸さーん」


 そう考え事をしていると、声をかけられ私はハッと

する。そして、声のした方へ向くと、クラスメイトの男子が立っていた。


「瀬戸さんの事呼んでるよ」


「え?誰が?」


「隣のクラスのヤツだよ」


「へ?」


 隣のクラスに知り合いなんていたっけ?そんな事を考えながら廊下に出ると、本当に知らない男子が立っていた。



「……ど、どうも。瀬戸可鈴です」




***



 気づけば空き教室に、知らない男子生徒と二人きり。どうして良いのかも分からず、私は男子生徒の事をじっと見つめていた。

 彼は、少し大人っぽい雰囲気を持っていて、余裕を感じる。年上なのではないかと思うほどだ。綺麗な黒髪と、黒縁眼鏡がそう思わせるのかもしれない。



「あ、自己紹介が遅れました。2年C組の桐谷湊(キリタニミナト)です」


「あ、2年B組の瀬戸可鈴です」



「どうも。あの、本当に突然で申し訳ないんですけど……瀬戸さんの事が好きです。」




「…………へ?」



 思わず間抜けな声が出てしまう。

 へ? 好き?

 この人が、私の事を……?




「もし良ければ、僕とお付き合いして貰えませんか?」



「…………え?」




 頭の中が全く整理できないまま、話はどんどん進んでいく。



「混乱させてしまっているみたいでごめんなさい。……とりあえず、瀬戸さんとゆっくり話もしてみたいので、今日の放課後迎えに行きますね。家まで送ります」



「へ?あ、は、はい」



 訳の分からないまま返事をしてしまったが、何か大事な事を忘れているような……?何だろう?まあ、良いか。私たちは、そこで別れて、そのまま、それぞれの教室へと帰って行った。



***




「──告白されたっ!?」



「しーっ!!!!」



 お弁当を食べている時に、凪沙に今朝の事を報告すると、大きな声で驚かれたので、彼女の口を手で塞ぐ。



「ちょっ、声が大きいってば…!!」


「だ、だって、ビックリしたんだもん…!!……それで……?どうするの?付き合うの?」


 小声でそう尋ねてくる凪沙。


「付き合うって言ったって……私、全く知らない人なんだけど」


「はあっ!?桐谷湊くんの事を知らないっ!?」


 再び大きな声になる凪沙。私は、また彼女の口を手で塞ぐ。塞ぎながら、まわりを見ている時、直登とバチっと目が合ってしまった。私は、慌ててそらす。



「そ、そんなに有名な人なの?」


「当たり前でしょ…!?次期生徒会長とも言われているかなりのエリートで、顔良し、性格良し、成績良しの三拍子揃ってるんだもん…!幸坂くんと同じくらいモテるんだから…!!」


「へぇ~…?幸坂くんとね……」




「──僕が一体どうしたって?」




 その声に、二人して振り返る。そして、凪沙が固まるのが分かった。



「こ、こ、こ、幸坂くんっ……!!」


 そこには、笑顔の直登が立っていた。凪沙がプルプルと震えているのが分かる。今日は、逃げないだけ成長してるか。


「凪沙、ちゃんと息吸って?」


 私は、凪沙の背中をポンポンと叩く。

 そして、今朝の事を思い出すと、



「あ、幸坂くん、今日は一緒に帰らないから」


 と、伝える。

 その瞬間、直登の表情が変わるのが分かった。



「……どうして?」



「んー……ちょっと外せない用事が出来たっていうか、先約が入ったっていうかー」



「ふーん……?そうなのかー」



 直登のその口調から、イライラが伝わってくる。ん?これは、ちょっとヤバイ感じじゃないですか?このままイライラしてると、素の直登が出てくるのでは……?




「分かった!じゃあ、また後でね!」




 私の心配をよそに、直登はそのまま席に戻っていった。そして、いつもと変わらず皆でお弁当を食べ始める。

 何だ。私の心配しすぎか。私は、凪沙を介抱しつつ、またお弁当を食べ始めた。



***



「おい」


 トイレから出てくると、待っていたのは直登。私は、驚いて一瞬固まる。


「……あんまり女子トイレの前にいない方が良いよ?」


「余計な事言うんじゃねぇよっ…!ちょっと来い」


 私は、そのまま渋々着いていく。そして、昨日の空き教室に辿り着いた。



「……用があるなら、早めに済ませてね?人待たせてるから」


 私が、そう言うと直登がまた不機嫌になるのが分かった。そんな怖い顔しなくても……。



「待たせてるって……誰だよ?」



「隣のクラスの、桐谷湊くん」



「桐谷湊……!?」


 直登が、顔をしかめる。直登が、ここまで人の名前に反応するのも珍しいな……。


「何で桐谷を待たせてるんだよ……?」


「あー、実は今朝告白されたん──」


「──告白っ!?!?」


 直登が珍しく、こんなに驚いているので私も少し困惑を隠せなかった。



「告白って……返事はどうすんだよ?」


「返事より何より、私桐谷くんの事何も知らないから、まずは彼の事知らなきゃ何とも言えないなぁ」


「…………」



 最終的には黙り込んでしまった直登。



「……じゃあ、私もう行くね」


 そう言って直登に背を向け歩き出す。すると、腕をガシッと掴まれた。振り返ると、直登は俯いたままだった。握る手は、少し震えている。





「直登……?」




「……………からな」




「………へ?」




「…………帰るからな」




 あれ?やっぱり怒ってるのかな?

 私が、そう思った瞬間、直登が顔をあげて話した。




「明日は俺と一緒に帰るからなっ!?いいな!?」




 直登は、真っ赤な顔でそう言って、そのまま教室を出て行った。私は、ポカンとして固まる。


 そして、一人で呟く。














「何、今の……?めっちゃ可愛い」




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