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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第4章『3年生』
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第28話 苦しい時間



「──でも、まさか4人が集結するとは思ってもみなかったよ」


 湊くんの言葉に、私と凪沙はうんうんと頷く。

 今日から3年生になった私たち。

 私、瀬戸可鈴と井上凪沙、幸坂直登は3年生でも同じクラスになり、そこに桐谷湊が加わるという奇跡の展開が起きた。

 ということは、学力トップ2と、イケメントップ2がこのクラス集まってしまったという訳ですか!!



「でも、せっかく皆同じクラスになったっていうのに……この大きな溝は何なの?」



 湊くんに痛いところを突かれ、私はうっと声を漏らす。


「ま、まあ、桐谷くん、そこには触れないであげて……?」


「井上さん、僕すっごく性格悪いからそれは無理だよ」


 開き直って、凪沙にそう伝える湊くん。

 私は、ため息をつくしかなかった。



「……私が悪いの。すべては私がね」



「悪いと思ってるなら、謝るべきじゃないの?いつまで、こんな状態でいるつもりな訳?」



「そ、それは……分かってるよ……」



「分かってないよ。全然分かってない。分かってないから、何も進まないんだよ。瀬戸さん」



 私も凪沙も、それ以上何も言えなかった。

 正論だ。言い返す言葉が見つからない。



「とりあえず、俺は幸坂と仲良くするから、羨ましくなったら、さっさと謝ることだね」



 そう言って、私たちの元を離れていってしまった。


「可鈴……」


「分かってる。でも……3ヶ月の溝は……大き過ぎるよ」





***



「──ダメだ……。疲れた」


 私のその声に隣を歩いていた凪沙は足を止める。


「大丈夫?」


「私のことは気にしなくて良いから、先に行きなよ」


「えっ、でも……」


「湊くんと歩きたいんでしょー。早く行きなよー」


 私が、小声でそう言うと


「へっ!?!?」


 と絵に描いたように驚く凪沙。



 私たちは、毎年の春の行事である山登りをしている。

 新しいクラス、新入生との交流を深める行事なのだが、全く楽しめない。本当に今すぐ帰りたい。


 私の隣であたふたしている凪沙。その様子から、湊くんと一緒に行動したい事は図星なのだろう。

 初詣に、一緒に行った時から、凪沙の様子がおかしいとは思っていたが、湊くんの事を好きになっちゃうとはねー。その人、性格悪いのにね。



「──瀬戸さん、何してるの?」


 そこへ、張本人が声をかけてきた。


「ちょっと疲れてるから休憩するね。湊くんは、凪沙と先に行ってて?」


「え?大丈夫なの?」


 湊くんは、そう言って隣に立つ直登の顔を見る。


 そう。疲れてしまうのはもう1つ理由がある。

 直登と同じ班になってしまったからだ。仲の良いメンバーで固まるなんて話になってしまい、知らない内にこの四人が固まっていた。



「本当、ちょっと休憩したらすぐに追いつくから。気にしないで」



「んー……。分かった、じゃあまた後でね」


「無理しないでね?」


「ありがとう」



 そう言って前を向く二人。

 と、その時直登とバチっと目が合う。


 ドクンッ……!!胸が激しい音を立てる。


 しかし、プイッと顔をそらし前を向いて歩き始めた。



 何か、すごく久しぶりに目が合った気がする……。

 ドクッ……ドクッ……。

 心臓の音が大きく聞こえる。


 休憩している私の目の前を過ぎていく人の波を眺めながら、私はボーッとしていた。今も、心臓の音は大きく響いている。

 あれ?……何か、目の前が変。ぐにゃぐにゃして見える。私は、頭を抱え込んで俯く。

 ヤバい……。何か体も熱い。


 と、思っていたその時──




「──瀬戸さーん」




 その声に、ハッとして声をあげる。

 そして、目の前を見て固まった。



「何一人でうずくまってんの?超ウケんだけど」


「今まで調子乗ってた罰っしょ」


「アハハッ!とうとう捨てられたって?」


「最近一緒にいるところ、あんまり見ないしね。ざまぁみろって感じだわ」



 目の前で、どんどん進んでいく話。そこには、いかにもガラの悪い女子生徒が4人。

 私を囲んで、腕を組んで見下ろすその姿に、少し恐怖を感じる。



「幸坂くんと幼馴染みなんだって?それを理由に、ずっと付きまとって?正直、幸坂くんも迷惑してたんじゃない?」


「今一緒にいないっていうのが証拠だよねー。アハハッ!超かわいそー」


「やっぱ幸坂くんは、アンタみたいな奴相手にしないよね!!」


 嘲笑う態度、言葉。くらくらする頭を、押さえ込んで必死で4人を見る。




「はぁ?何睨み付けてんだよ。何か言いたいことあんの?」


「負け犬の最後の足掻きってやつ?超ウケる!」



 4人で手を大きく叩いて大笑いをする。私は、何も言わず、ひたすら時間が経つのを待った。

 大丈夫。変な事言わなければ、呆れてどこかに行ってくれる筈だから。

 今は我慢。我慢だよ、私。





「──おいお前ら、何してんだ」


 その時、近くを通りかかった先生が、異変に気づいて近寄ってきた。4人の女子生徒は、一斉にクルッと振り返る。



「私たち、今大事な話し合いしてるんです」


「先生は関係ないので、下がっていてください。大丈夫ですから」


「だよね?瀬戸さん」



 こちらを向いた、その女子生徒の威圧する態度。今、先生が来ても無駄だろうと思い、素直に頷く。



「……そうか。あまり長くならないようにな」



 そう言って、先生は離れていってしまった。




「──そういえばさ、瀬戸さんと一緒にいる、あの女の子だけど」



 その言葉に、私は目を見開く。

 何っ……?凪沙に何かしたのっ……?



「最近、アイツも幸坂くんに近づいてるよね」


「てか、桐谷くんも狙ってるんじゃない?」


「えー!!ヤバいじゃん!!」





「結局あの子も、その二人に近づくために、アンタと仲良くなったんじゃない──?」









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