第24話 クリスマスの夜
「サンタさん!」
「うるさい」
「サーンタさん!」
「やめろ」
私が話しかける度に、面倒くさそうに返事をする直登。先ほど、湊くんの家に行ってプレゼントを渡してから、今はマンションに向けて帰っているところだ。私たちは、サンタさんの衣装を着たまま、歩いている。
直登の家の玄関前まで帰ってきたところで、プレゼントを入れるのに使っていた、白い大きな袋を投げられた。それを受け取って、私は違和感を感じる。
直登は、そのまま家に入ろうとしていた。
「ちょ、直登!!これ、まだプレゼント残ってるんじゃないの!?」
直登は、こちらをチラッと見るが何も答えてはくれなかった。もしかして、湊くんへのプレゼントも用意してて、渡しそびれたってこと?もー、本当に素直じゃ無いんだからー。
そう思って、袋からプレゼントを取り出して、私は固まった。
「……え?」
そのプレゼントには、『可鈴へ。』というカードが付いていた。私は、プレゼントと直登を交互に見る。直登は、遠くを見ながら頭をポリポリと掻いている。
「……それも……サンタからのプレゼントだよ」
その言葉に、私は直登に思いきり抱きついた。一瞬、よろめいた直登だったが、しっかりと受け止めてくれた。嬉しくて、本当に嬉しくて、にやけが止まらない。
「直登サンタさん!!本当にありがとう~……!!」
「はいはい」
「嬉しい!!大好きだよー!直登っ!!」
「……へ」
私は、直登から離れると、プレゼントの中身を確認しようと、リボンをほどく。と、その時ガシッと腕を掴まれた。
え?まだ開けちゃダメだった?
不安になって、直登の方を見ると、顔を真っ赤にして私の方を見ていた。
頭の中が?マークでいっぱいになる。
「さ、さっきの……もう一回……!」
「へ?さっきの?」
さっきのって?考えて、私は直登に確認をするように呟く。
「直登サンタさん、ありがとう……?」
「ち、違う!その次っ……!」
「へ?──大好きだよ?直登?」
それを言った瞬間、直登の頭からボンッ!という音がした。私は驚いて、直登に駆け寄る。直登は、片手で頭を押さえて、座り込んでいる。
「もう、俺にとってはその言葉が、プレゼントだ……!」
「ちょ、直登?壊れちゃったの?大丈夫?」
「俺は幸せ者だ。もう死んでもいい」
「え、ちょ、直登さん?」
「俺……お前に出会えて本当に良かった」
「……それは、私もだよ……?」
そう言って、直登の手を握る。指先は、とても冷たいけど、手のひらはほんのり温かい。すると、直登は私の事を見上げる。真剣な顔で。その真剣な顔に、私はドキッとする。
「……何か……今日は帰したくない」
「……え?」
「おいで、可鈴」
その言葉に、私は引き寄せられるように立ち上がると、直登についていく。
私だって……今日は一緒にいたいよ──。
***
「──わああっ!!可愛い!!」
直登の部屋に辿り着いて少ししてから、きちんとプレゼント交換を済ませた私たち。今は、直登のプレゼントを開封したところだ。中には、小さなスノードームと、可愛らしい膝掛けが入っていた。
「直登ありがとうっ!!」
「いえいえ~」
得意気に笑う直登。その笑顔は、とても可愛らしい。
そのまま、直登も私からのプレゼントを開ける。
「おおっ!!マフラーじゃん!!」
「直登に似合うかな?って思って買ったの!」
「毎日使うわ!」
「本当!?良かった~!」
プレゼント交換は、大成功に終わった。すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。
「──直登。私は、可鈴ちゃんが泊まるのは全然構わないんだけど、可鈴ママはどうだったの?」
「あ、許可もらったらしい」
「はい!大丈夫です!」
「あら、そう!じゃあ、布団とか持ってくるから、お風呂も順番に済ませちゃってね!」
「おばさん、ありがとうございます!」
「いえいえ!素敵な夜になると良いわね!」
そう言って、ウインクをすると直登のお母さんは出ていってしまった。
「たぶん、姉貴のパジャマと布団使うようになるだろうから」
「え!?お姉さんのお借りして良いの?」
「お前が文句さえ言わなければ大丈夫だろ」
「文句なんかないよ!!」
私たちは、それから色々な話をしながら、ゆっくりと過ごした。お互いにお風呂を済ました頃には、眠くなってしまい、私たちはすぐに布団に入ったんだ。




