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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第3章『冬の私たち』
22/59

第22話 緊張


 静かな帰り道。

 お互いに何を話すわけでもなく、マンションの下まで辿り着いてしまった。何か、すごく気まずい……。



「……まあ、プレゼントも買えたことだし、良いクリスマスになると良いね」


「あ、うんっ……。今日は本当にありがとう」


「いえいえ。こちらこそ、ありがとうね。……また、いつでも遊びに来なよ」


「うん!是非!」


 私がそう言って笑うと、湊くんはくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。その時、私はハッとして思い出す。



「そうだ!これ!」


 そう言って、湊くんの手を両手で握ると、手のひらにあるものを握らせた。



***



「……え?」


 重ねられた手が離れた瞬間見えたのは、可愛らしい包装紙。俺は、その袋と瀬戸さんを交互に見る。

 瀬戸さんはニコニコと笑っている。


「湊くんもメリークリスマス!」


 その言葉を、聞いた瞬間目にジワッと涙が浮かび上がってくるのが分かった。こんなにも、嬉しくて素敵なプレゼントを貰ったのは本当に久しぶりだ。

 そんな嬉しい気持ちを隠して、俺は余裕の笑みを浮かべる。



「ありがとう。すごい嬉しいよ」


「弟がいるって分かってたら、その時に一緒に買ったんだけどね」


「良いよ良いよ。気持ちだけで」


「そっか……。また遊びに行った時にでも、用意しとくね!」


「うん。それじゃあ、春哉も起きただろうし帰るね。本当にありがとう」



 そう言って、背を向けて歩き始める。

 と、その時──



「──湊くん!!」


 名前を呼ばれ、足を止める。



「私は、どんな事があっても湊くんの味方だから!!それだけは、絶対に覚えておいて!!」


 瀬戸さんの声を聞きながら、俺は振り返らずに片手を挙げた。

 そして、歩きながら包みを開ける。中からは、サンタの服を着たトナカイの可愛らしいキーホルダーが出てきた。


「ハハッ。瀬戸さんらしいや」


 そう言って、袖で涙を拭った。




***



「──おーう。メリークリスマース」


 気だるげな様子で出てきたのは、私の恋人である幸坂直登。ボサボサの頭に、眠そうな顔。ゆったりとしたシルエット。


「……おはよう」


「おー……」


「今起きたの……?」


「インターホンの音で目覚めた。わりぃ」


「サイテー」


「知ってる」


 せっかくのクリスマス。二人で出掛けると言ったのに、時間になっても迎えに来なかった直登。しびれを切らして迎えに行ってみればこれだ。

 内心イライラしながらも、少し安心している自分もいた。恋人になってからのクリスマスって、ずっとドキドキして、緊張していないといけないと思ってたから……まあ、いつも通り朝の弱い直登で良かった。


「着替えるから、リビングで待っててー」


「うん、分かった」


 そう言われ、素直に直登を待つ私。お姉さんも、お母さんも今日は仕事なのか、リビングで一人で待つことになった。ていうか、どっちかがいれば直登の事を叩き起こしていただろう。

 そんな事を考えながら、5分ほど経った。

 その時、後ろからフワッと何かに包まれた。それが直登だとすぐに気づく。



「お待たせ」



 そう耳元で呟かれ、低い声が響き、背筋がゾクッと震える。優しく香る、直登の香りが私の胸に染み渡っていく。


「どうする?姉貴も母さんもいないし、俺の部屋でゆっくり過ごしても良いんだけど」


「へっ……!?」


 直登は、私に抱きついたままそう話し始める。

 ど、どうするって……どうすれば良いの……?


「と、とりあえず一回離れ──」


「嫌だ」



 断られて、私はそれ以上何も言えなかった。

 ちょ、ちょっと待って……。

 心臓の音が、本当にすごいっ……!!

 ドクッ……ドクッ……っていうよりは、

 ドッ…!ドッ…!っていう感じで体全体に響き渡ってる……!!





「──ごめん。久々に会ったから、多分独り占めしたいだけだ」






 その言葉に、私はノックアウト。

 完全に直登にやられてしまった。体の力が抜ける。



「とりあえず、リビング寒いから移動しねぇか?俺の部屋暖房効いてるし」


「う……うんっ……」


 私は、そのまま直登に腕を引っ張られ、直登の部屋へと移動した。

 やっぱり、今までとは距離感が違う……。こ、これが……恋人同士って事なんですね……!!

 私は、一人でそう納得をするしかなかった。




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