第20話 振り回される
クリスマス仕様に飾られた街。葉が無くなって、寂しくなった木にも、イルミネーションが飾り付けられている。明日から、クリスマスイブだもんね。
自分で勝手に納得しながら、隣を歩く湊くんを見つめる。私服の湊くんを見るのは初めてだから、いつもと雰囲気が違ってカッコよく見える。
「で?どんな物が買いたいとかあるの?」
「え?あ、それがさっぱりで……」
昨日からずっと悩んでたけど、プレゼントは何も思い浮かばなかった。彼女として、どんなものをプレゼントしてあげれば良いのか……全く分からない。
「まあ、ゆっくり見ながら考えれば良いよ。彼氏からすれば、そうやって悩んで買ってくれたってことが、一番嬉しいと思うからね」
「……な、なるほど……」
そんな話をしながら、私たちは目の前に見えたお店に入ってみることにした。
そして、あるものが目に入る。
「あっ!!これ、直登にピッタリかも!!」
「え?」
湊くんは、私の声に足を止める。
私が手にしたのは、マフラー。大きなチェック柄で緑色。少し大人っぽい落ち着いた色合いが、直登に合っていると、直感でそう思った。
「湊くん!私、これにする!!」
私が、キラキラと目を輝かせながらそう言う。湊くんは、そんな私を見て目をパチクリさせる。
そして、「ブッ!」とふき出す。
えええっ!?待って!?私、何かおかしいこと言った!?
「アハハハッ!!……あー、おかしい」
お腹を抱えて笑った後で、目元に浮かんだ涙を拭う。涙が出るほどおかしかったの……!?
「さっきまで、買うものも分からなくて悩んでたのに……そんな一瞬で決めちゃう訳?ゆっくり見ながら決めれば良いって言ったのに!……やっぱり、瀬戸さんって面白いわ」
「はっ!確かに、さっきまで何も決まってなかった……」
「でしょ?あー、俺が来た意味無いじゃん!」
湊くんはそう言いながら、笑みを浮かべる。
「まあ、とりあえず買っておいで?ここで色々見ながら待ってるから」
「あ、うん!行ってくる!」
***
「──ラッピングいたしますので、少々お待ちください」
「あ、はい」
無事に会計を済ませ、レジから少し離れてボーッと店内を眺めていると、湊くんが二人の女の子に声をかけられているのが見えた。
……もしかして、学校の子……?そしたら、一緒にいるの見られたら、変な誤解を生んでしまうかもしれない。どうしよう……戻り辛いな……。
そんな事を考えている内に、ラッピングは終わってしまい、私はハッとして商品を受けとる。
まだ話してるし……。私は、商品を見ているふりをしながら、少しずつ湊くんたちの方へと近づいていく。
すると、会話が聞こえてきた。
「桐谷くん、今日は一人で来てるの?」
「いや、一人じゃないよ?」
「そっ、そうなんだー」
そう言いながら、頬を赤らめる二人組。
「──何?誰と来てるか知りたいの?」
そう言いながら、意地悪な笑みを浮かべる湊くん。
二人組は、目を丸くして更に顔を赤くする。
「実は彼女と来てるんだよね。──なんて言ったらどうする?」
「えっ!?」
「ど、どういう……!?」
二人が戸惑っている間に、湊くんは歩みを進める。
え、待って……?な、何かこっちに近づいてきてないっ!?
私は、マフラーに顔を埋めて、とにかく俯く。
すると、湊くんに肩を抱かれた。そして彼は呟く。
「そのまま……ね?」
そう言った瞬間、二人組から痛いほどの視線を感じる。ま、待って!!怖すぎでしょ!!
湊くんは、手をヒラヒラと振ってそのまま歩き始める。私も、前が見えない分、湊くんにくっつくしかなかった。
***
「──アハハハッ!!」
湊くんの笑い声を聞きながら、私は頬を膨らませていた。
「そんな顔しなくても良いじゃん!」
「だって!!絶対に誤解されたじゃん!!」
「ちゃんとマフラーで顔隠してたし、大丈夫だよ」
「本当に怖かったんだからね!?」
「はいはい、ごめんなさいー」
「思ってないでしょ!?」
先程の店を離れて、少ししてから肩から手を話してくれた湊くん。歩道を歩きながら、私は声を荒らげる。
「まあ、買い物も済んだことだし、ちょっと付き合ってよ」
「え?どこに?」
「ん?……秘密」
そう言いながら、人差し指を口に当て、ニッコリと微笑む湊くん。あーあ、こういうことするから、皆あっという間にこの人の虜になるんだね。
学校の女性徒の皆さん。騙されないでください。桐谷湊も、幸坂直登も、あの姿は偽物ですからねー?
すると、いきなり頭をバシッと叩かれた。
「いたっ……!?」
「今、変な事考えてたでしょ?」
「えっ……!?」
な、何で分かったの……!?といった風に、湊くんの方を見ると、黒い笑みを浮かべる彼。
「さ、行こうか?」
そう言って、私の手を握り歩き始める。
呆気にとられたまま、湊くんについて行くしか無かった──。




