表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第2章『みんなの想い』
12/59

第12話 ついに


「──はぁ、死ぬかと思った」


 ベッドにドサッと倒れ込んだ彼は、真っ赤な顔でそう呟く。本当に苦しそうだな……。

 とりあえず、布団をかけ心配そうにその姿を見つめる。すると、直登は私の視線に気づいたのか、ニッコリと笑みを浮かべてみせた。


「そんな無理して笑わなくても良いよ」


 私が、ボソッと呟くと直登は真顔になる。

 そして、私の頭に手を伸ばすと、わしゃわしゃと撫でてくれた。突然の、出来事に私は戸惑いを隠せない。


「無理してるつもりなんてないよ。お前が来てくれたから、少し元気が出ただけだ」


 そう言って、またニコッと笑う。


「元気じゃないじゃん。そんな真っ赤な顔して、そんな熱い体で。……よく言うよ」


「そんなに熱いか?……でも、お前の手冷たいから、気持ちいいな」


 そう言って、私の手に触れる。

 私は、緊張しすぎて声を出すこともままならなかった。伝わる熱。そして、大きな手に綺麗な指。

 その男らしい一面に、私は釘付けになっていた。



「可鈴、悪いんだけど飲み物取ってきて?」



 その言葉も、耳には入ってこなかった。

 いまだに、手は離されないままだ。



「おーい、可鈴?」



 何だろう……。

 直登が、どんどん大人に近づいていっているのが怖い。

 何か、私だけが置いていかれているような……私だけが大人になりきれていないような……すごく寂しい感じがする。

 私の知っている直登は、もういないのかもしれない。


 直登にもきっと、好きな人の一人や二人はいて、その人に振り向いてもらうために頑張っているのかもしれない。

 直登だって、立派な男の子なんだから……。


 そう考えると、悲しくて寂しくて、私はギュッと直登の手を握り返していた。



「……可鈴?」



「──直登はさ」



 気づけば、私は声を発していた。直登は、心配そうに私の顔を見る。私は、構わず続ける。






「直登は……好きな人って……いる……?」





「…………え?」






 私が、そう言って直登の目を見た瞬間、彼は目をそらした。そして、パッと手を離して、自分の顔を隠す。



「いっ……い、いたら何なんだよ……?」



 直登は、顔を隠したままそう答える。

 やっぱり、好きな人……いるんだ……。

 直登にも、好きな人が……。




「そっ、そういうお前は……どうなんだよっ……?」





 直登に、そう尋ねられ私はハッとする。


 へっ……?

 私っ……!?


 先程まで、少し悲しい気持ちになっていたのに、今は顔を真っ赤にして焦っている。



「なっ、何、顔真っ赤にしてんだよ!?お、お前だっているんじゃねぇか!!」


「ちっ、ちがっ……!!これは、直登の風邪がうつっただけで……!!」


「そんな短時間でうつるわけねぇだろ!!誤魔化しても無駄だからな!?」


「う、うう……うるさいってば!!」


 私は、その場に立ち上がる。



「私、直登の恋なんて応援してあげないんだから!!」



「別にお前に応援されなくても良いし!!だって、俺は──」



 そこまで言ったところで、直登はハッとする。

 私は首を傾げる。



「だって俺は……?」



 直登は、顔をさらに真っ赤にして唇を噛み締める。




「俺はっ……俺は……好きなんだよっ……」



 心臓が飛び出そう……とは、まさにこの事だろう。

 呼吸をするのにも苦しくて、顔がものすごく赤く熱くなって……。


 直登が、起き上がって、私の目を見つめる。

 そして、告げる。





「お前の事がっ……好きなんだよっ……!!」





 時間が、止まってしまったかのような感覚。

 直登の、真剣な表情は変わらない。


 私の事が……好き……?

 私だって、直登の事が好き。





「…………私っ………私──」




「──ただいまー!直登、愛する我が子の為に色々買って帰ったわよ~!」




 そこへ響き渡る、場違いの言葉。

 私たちは、そのまま固まってしまう。



「え!?可鈴ちゃん!?ちょっと、久しぶりじゃない!!元気してた?まあ~、また一段と綺麗になって~♪いつも、直登の事ありがとうね!」


「あ、え、えっとお久しぶりです。おばさん」


「せっかく来たんだし、お茶でも入れるわ!こんな、男くさい部屋にいなくて良いから、リビングおいで!やーん、本当に可愛い~!」


 一人で話し続けるおばさんに、背中を押され私はそのまま直登の部屋を出る。





***



 バタン。

 扉が閉まった途端、静かになる部屋。俺は、そのままベッドに倒れ込む。そして、先程の自分の発言を思い出す。


 熱があるとはいえ、よく言ったな……俺……。


 自分で自分を褒めてから、さらに我に返り、俺は顔を覆い隠す。

 いやいやいやいや、本当によく言ったな!!俺!!

 多分、平常時だと、まず言えてないぞ!?


 ていうか、母さんタイミング悪すぎるだろ!?

 俺、返事聞いてねぇんだけど!?


 そんな事を考えながら、頭をぐじゃぐじゃと掻き乱す。

 あー、ダメだ。何か、さらに熱が出そう……。

 俺は、そのまま気絶するように眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ