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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第2章『みんなの想い』
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第10話 そのままで良い


「───へー、それは大変だね」


「そう言いながら棒読みなのはいじめですか!?いじめなんですか!?」


 いつもの空き教室に移動した私たち。

 私の悩みを相談するが、湊くんは既に興味は無さそうだ。


「はぁ……恋する女の子って大変なんだね」


 湊くんは、そう言いながらダルそうに呟く。この人、基本的に面倒くさがりやなのか。少しずつ、この人の特徴が掴めてきたぞ……。


「ど、どうすれば良いと思う?」


「んー?どうすれば良いって言われたって、正直どうしようも出来ないんじゃない?」


 湊くんは、そこにある椅子に深く腰かけると、話を始める。


「好きだって気持ちは否定できないんだし、その気持ちに正直になれば良いんじゃないの?普段通りにって思えば思うほど、逆の行動になっちゃうからね。だから、そのままで良いと思うよ。それで、逆に相手に気づかせれば良いんだよ」


「……気づかせる?」


「そう。あ、コイツ俺の事が好きなんだなって」


「な、なるほどっ……」




 そうか……。そのまま、行動するっていうのも一つの手なのか……。それで、相手に気づいて貰って……?


 い、いや、それはヤバイんじゃないの?

 だって、私と直登は幼馴染みでお互いにそんな感情なんて持ってなくて、もし、私の気持ちがバレてしまったら……!?




『は?可鈴、俺の事好きなの?いやー、無理無理。こんな子供っぽいやつ無理だわー』




 冷や汗がタラリと垂れる。

 こ、これは、まずい。今すぐに行動を修正する必要がある。

 頭の中で、色々な思いが巡っている時、湊くんにデコピンをかまされた。


「余計な事考えるなよ?面倒くさい」


 そう言われ、私はハッとする。


「てか、今から帰るんでしょ?俺といるところ見られたら、また面倒な事になりそうだから、早く帰りなよ」


「あ、うん!ありがとう、湊くん!何か元気出た!」


「そう。それは良かった。その調子で頑張れば?」


「うん!また明日ね!」


 私は湊くんに手を振ると、空き教室を出る。



 そうだよね。始まる前から考えているだけじゃ、何も変わらない。まずは、やってみてから考えないと。そんな事を考えながら、廊下を歩く。

 グラウンドでは、野球部やサッカー部が活動をしている。そんな皆が、夕日で照らされて、とても綺麗だ。


 部活動の様子を見ながら、自分の教室に辿り着いた。ガラララ──と扉を開けると、そこには席に座って本を読んでいる直登の姿があった。

 ゆっくりと、こちらを向く直登。目が合った瞬間に飛び跳ねる心臓。夕日に照らされた直登が、とても綺麗で……声も出せなくて……私の心臓の音だけが、そこに響き渡った。短いけど、長い時間。息をするのにも、少し苦しくなっていた。その時、直登が声を出す。




「──随分と長いトイレでしたねぇ」




「……え」




 場違いの一言に、私は開いた口が塞がらなかった。

 長いトイレ?



「あ」



 そこで、思い出す。そういえば、トイレに行くと言って教室を飛び出したんだった!!

 直登は、本を閉じると鞄にしまう。そして、鞄を背負った。



「さっさと荷物準備して帰るぞ」


「ご、ごめん!トイレから出たら友達に呼び止められたの!」


「あっそ」


 私は、急いで荷物を鞄に入れると、教室の出入り口で待っている直登の元へと向かう。



「……ごめん。怒ってる……?」


「うん」


「遅くなってごめんね」


「違う、そうじゃない」



 直登は、教室の扉に手をかけて振り向くことなく答える。何を怒ってるんだろう……。分からない。分からないから困る。どうすれば良いの?



「──かと思った」


「……へ?」


「避けられてるかと思った」



 そう言って、私の方をチラッと見る直登。その恥ずかしそうな様子に、私もドキッとする。


「いつもと様子が違うから焦った」


「……ご、ごめんっ……」


「可鈴。俺の勘違いだったら申し訳ないけどさ……」


「……え?」


「……お前……もしかして……」



 何っ……?何を言おうとしてる……!?

 今までで一番大きな心臓の音。この音が、直登にも聞こえているんじゃ無いかと思うほどだ。




「──俺の王子モードにキュンとしたのか?」




「…………は?」




 思わず、その一言が出てしまっていた。



「まあ、それも分かるような気がするよ。普段は見せない優しさに、思わずキュンとしてしまう……仕方ないよな。」


 何か、ものすごくイライラするのは、私の気のせいでしょうか?でも、次の瞬間には呆れて、笑いも出てきた。

 直登って案外、鈍感みたい。たぶん、当分の間は私の気持ちにも気づけないんだろうな──。


 そんな事を思いながら、私たちは今日も二人でいつもの道を帰っていった。



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