予想外の出来事
「………あ、あのッ
「え、お前○○中なの?!仲本卓哉っているだろ?そいつと保育園一緒だったんだよ!」
「まじで!俺、仲本と3年間ずっと同じクラスだったぞ!」
「まじかよー!やべえな!それでさ〜……」
勇気を振り絞って出した声は、私の目の前にいる男子2人の声によって掻き消された。
前の黒板に名前順で席の指示がしてある。私は窓側の1番前だ。そこに座って周りに子に声をかけて友達を作ろうという作戦だったのだけれど、まだその作戦を遂行できていない。
それは、先ほど自分たちの話に夢中になって私の存在に気づいていないであろう、目の前の男子のせいだ。
君達が鞄を置いて座ってるその机は、私の席なんだけどな。あと、座るなら椅子に座ってほしいデス。
こうやってタジタジしている間に、周りはなんだか打ち解けているようで、次々とグループが出来上がっている。
あぁ、もう!君達がいなければ私も今頃は「よろしくね!部活何に入る?」なんて笑い合いながら会話をしている予定だったのに!
でも、強く言える度胸はなく、その男子が1秒でも早く自分たちの席に行くことを心の底から願った。
「ねえ、」
後ろから聞こえてきた声が私に向けられているものだと瞬時にわかり、これは'お友達になりましょう'の合図…!
「あ、よろし「邪魔。」
振り向くとそこには薄っぺらい学生鞄を持ったスラッとした男子生徒がいた。
いや、ていうか、何?
この人さっき何て言った…?邪魔……??
「ここ、俺の席。」
'ここ'と男子生徒が指差した場所は私のすぐ側にある席。私の本来の席の右隣の席だ。
「あっ!ごめん!」
私が早くどけと願っている間、この人はきっとお前が早くどけと思っていたことだろう。
パッとその場を離れるとその人は何も言わずに座って、頬杖をつき目を閉じた。
わ…、睫毛長い…。それに、鼻も高いし…。こうやってまじまじと近くで見てみると、この人が高レベルな容姿の持ち主だと気づく。
「何?」
さっきまで塞がっていた両目がパチリと開き、その黒まなこは私を見据えた。
「ああああ!ごめんなさい!!」
しまった、つい。