初 魔物退治 ~槍を持った豚~
アルマ王国を救うべく、1人の勇者が立ち上がる。
「国を救えるのはお前だけじゃ。頼んだぞ!」
「お任せ下さい 国王様」
俺は、 剣 勇太だ。一応勇者をやっている。
勇者だから勇太というのかは知らないが、別に好きで勇者をやってる訳じゃない。ただ、勇者は割と金が手に入るので、俺にとってはありがたい職業だ。
今回の魔物退治。報酬は、なんと1匹50万円。目ん玉飛び出るくらい高いので、ついつい引き受けてしまったが、実際魔物を倒すのに3時間近くかかるし、本当は怖い。うん、勇者として情けないけどまじで怖い。だって、仲間もいないんだもん。
いつものクエストは、強そうな仲間と一緒に簡単なクエストに挑み、仲間に頼りながらクリアしてきた。実際、1人でクエストなんて初めて。
仕方ないのでとりあえず木刀を持って普段着を着て、魔物退治に行く。
ああ、怖い。外へ行くと、すでに槍を持った豚みたいな魔物が人間を食べていた。
そいつらはこちらに気づくと、槍を構えて襲って来る。あまりの怖さに俺は、おしっこを漏らした。なんと、そのおしっこは魔物にかかる。
ジョボジョボジョボジョボ
おしっこを受けた魔物は鳴きながら逃げて行った。なんかわかんないけど、勝ったのかな?国王に、あれは勝利ですか?と聞くと、
「う、うむ…… あれも、勝利なのだろうな。」
この時国王はあの勇者を信用していいのか分からなかっただろう。俺は察していた。なんと、これは勝利として認められる事に。報酬の50万はきちんと貰ったが、なんか俺は納得がいかなかった。おしっこが武器の勇者なんて、今までにいただろうか。そろそろ、真面目に考えなきゃ。
普通に考えて、木刀や普段着で彼らに勝つ事は不可能。仕事に金を使いたくはないが、武器屋と防具屋でとりあえず戦力を強化することに。
-------1時間後-------
立派な鎧と盾、さらに鋭く光っている剣を買った俺は、自信満々に魔物退治へと再び出かける。またさっきの豚と出会い、俺は剣でやつの首を斬ろうとした。しかし、槍でガードされ、そのまま身体を突かれる。槍は鎧に当たり、
ガキン!
鎧はひびも入らず欠けもせずに、豚の槍を弾く。
驚き戸惑っている豚の首を、俺は一気に斬った。
「やった、勝ったー!」
が、ほっとしたのもつかの間、豚は首がないままこちらを襲って来たのである。
目もないのに、こちらを見ているかの様に、ぴったり付いて来る。驚いた俺は、今度は腕を斬った。豚の腕はスッパリと斬れたが、豚はまるで動じず、こっちを襲って来る。そして、俺の身体を突こうとするが、なんとか盾でガード。その隙にもう片方の腕をスッパリ切断する。切れ目から確かに血は出ているし、見てる感じすごく痛そうだが、豚はまるで動じず俺を槍で襲って来る。
ここで、俺は考える。
「そうだ!足を斬れば奴は動けなくなるぞ!」
早速、盾でガードしつつ足を斬ろうとする。しかし、
ガキン!え?豚の足は防具も何もつけていないのに、異様に硬い。見兼ねた俺は膝を斬りつける。硬い。腹を剣でついても、硬い。頭と両腕を失った豚は、硬くなったと同時に俺の前に倒れた。
勝った。今度はちゃんと勝った。しかし、今度は喜ばず、非常に不思議なこの生物について考える。とりあえず国王から報酬を貰った後、王国の巨大な資料館で、あの豚について調べてみる事にした。調査の結果をまとめたのがこれだ。
名前:オーク 非常に鋭い槍を持ち、人間を見ると、身体辺りを突こうとして来る。身体を斬られても、全く動じずに目的の攻撃を続けるというタフな魔物だ。死ぬ直前に、何故か異常に身体全体が硬くなり、どんなに鋭く硬い剣でも通用しなくなる。
へえ、魔物って……なんか、面白いな。