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褒美をねだる爽やか系に用心しよう

作者: akiyama

恭太郎よりもある意味凶悪かもしれない雅文さんでした。やっぱり溺愛されています。

 悲鳴ではないが、叫び声が聞こえた。

 あれは、親友のセリの声。間違いないと座っていた椅子を慌てて立ち上がる。

 親友の危機なら助けに行かなくちゃ、と。立ち上がったものの「大丈夫ですよ。別にセリさんは恭太郎にいじめられているわけじゃありません」

 と、落ち着き払った雅文さんの声に呼び止められてしまう。

 


 「え、でも」と未練たらしく開いているドアの方を見ていると、雅文さんが丁寧に入れてくれていた紅茶をティーカップに注いでくれている。

 


 「お茶も入りましたし、美味しそうなクッキーやタルトがあったので持ってきましたし。さあどうぞ」

 爽やかな外見で、仕事もできる上に、優しい雅文さんはとても女性にモテる。

 


 九歳の年の差は大きい。十六歳と二十五歳では恋愛対象にはなりえないだろうと思っていた。相手にも、してもらえないと考えていた。

 

 なのに、降って湧いたような婚約の話に舞い上がって、子供っぽい自分を少しでも大人の女性に見せようと努力もした。

 親友のセリを巻き込み黒いドレスを着て大人の女性に負けまいとして。

 



 結果、どういうわけか兄の恭太郎と親友セリとの急な婚約が成立し、私も大好きな雅文さんとの婚約を正式発表されることになった。

 雅文さんのようなしっかりとした大人の男性に早く釣り合うようになりたいけど、現実的に何をしたら良いのかわからない。

 今日も、テスト明けにクラスメイトの万里香嬢の家のガーデンパーティーに出席してみたらどういうわけか、偶然にもその場に仕事でいたらしい、恭太郎兄様と雅文さんに会ってしまった。

 


 恭太郎兄様は以前のパーティーで何かセリにしたらしく、密かに鬼畜と呼ばれるようになったけど。

 私も、同じパーティーの時に黒いドレスを着替えるように強要もされたし、叱られたけど雅文さんは別に鬼畜じゃない……よね?

 

 「あ」

 

 「どうしたんだい?レイナ」

 

 ああ、雅文さんにレイナと呼ばれるようになったのは、あの正式な婚約発表をして以来なので、未だに慣れない。

 

 以前はレイナちゃんだったから。

 

 雅文さんの声は低くてちょっとだけかすれている。その声で呼ばれると嬉しくて舞い上がってしまうのは、知られてはいけないと思う。

 これ以上、子供扱いされるのは、不本意ですもの。

 そう、私は大人の女性。しっかりとしなくては。

 


 「え、と。その今日の万里香様のお屋敷での事って」

 

 「ああ、葛城邸でのこと、気にかかる?」

 

 「葛城監督は知っているよね?葛城万里香嬢の父親なんだけど」

 

 「存じあげています。映画監督をなさっておいでですよね?お母様は有名女優ですし」

 

 「そう、葛城監督は、国内の評価よりも海外での評価の方が高いけどね。で、葛城邸は広い庭が自慢なんだけどね」

 

 雅文さんは、立場上、守秘義務があるので詳しくは教えてはくれませんでしたが。

 

 葛城邸の広い庭を維持してくれていた庭師が代替わりしたのが事の発端らしい。

 

 少し前まで雇っていたイギリスの頑固な庭師は寄る年波に勝てずに涙ながらに引退を決意し、祖国に帰っていったのだ。

 

 急なことだったので、後に残された助手が庭師として繰り上げにされる。

 まだ、若い庭師は突然の昇格に喜んだのはいいが、プレッシャーもあって派手に遊んで憂さを晴らすようになった。

 やがて借金を背負い込み、借金相手に目をつけられて大麻栽培の話をもちかけられる。

 断れるはずもなく、そのままズルズルと……いうことになる一歩手前で葛城監督が庭と庭師の異変に気づいてね。

 

 

 僕のところの会社は海外で葛城監督の護衛を務めさせてもらったりした縁もあるので相談されて……。

 有名女優と映画監督の家の庭で薬物の栽培や取引がされていた。なんて警察ざたは避けたかったんだろう。娘も巻き込みたくはなかったろうし。

 


 僕がしたのは、葛城家が薬物の栽培や取引とは何ら関わりがないこと。薬物を実際に管理していた人間と取引していた相手の特定なんかを証拠をきちんと揃えて警察に提出することだったのさ。と教えられました。

 



 「ま、まあそうでしたの」雅文さんは、おそらくは私なんかでも分かるように簡単に説明くださったのでしょうが、あまりの事の大きさに言葉にならなかった。

 


 こういう時に大人の女性ならばどうするべきなのでしょうか。

 

 「お疲れでしたのね?ごめんなさい!私ったら何て気の利かないこと」どうぞ、私に構わずに休んでくださいと言い出すと

 

 「レイナ、優しいのですね。疲れてはいませんけど、ご褒美をいただけるととても嬉しいですね」

 

 「まあ、私に差し上げられるものですか」働いたことがない私なのでお金ときたら両親に毎月いただくお小遣いしかないのですが。

 


 今月の残金は残り少ないのですが、間に合うかしら?

 

 


 「どんなものですか?」ドキドキしながら聞いてみると品物ではなかった。

 

 「雅文、愛していると耳元でつぶやいてください。百回ほど」

 

 「あ、愛しています雅文さん」照れくさくはあっても雅文さんへの愛ならば千回でも誓える私なので簡単なことである。

 

 「ダメです、そんなにはなれていては聞こえません。耳元でって言ったでしょ」優しくはあるけど、有無を言わさずに両手が掴まれて雅文さんに抱き込まれるようにして膝の上に座らされてしまう。

 


 これって、いわゆる……お膝抱っこってやつじゃあ。恥ずかしくて急いで降りようとしたら、背中に腕を回されて身動きがとれなかった。

 


 強引に顔を耳元まで寄せられると「さあ、つぶやいてください。ああ、逃げようとしたので条件を追加しましょう。愛しているって証拠につぶやいた後にキスをしてください」

 小さな子供ではないので、このお膝抱っこは恥ずかしい。逃げようとしたのは無理もないのではと思うけど雅文さんの心を傷つけてしまったのなら……と思ってつぶやいた後にそっとキスをする。

 


 雅文さんとキスをするのは、始めてではないので抵抗はない。

 でも、こんなに密着するのは始めてだし、私からするのも始めて。

 始めて尽くしが多くて、悩んでしまうが大人の女性への第一歩なのかも。と私は決意した。

 結論として、そんなに時間がかかるとは思えなかったのに途中で雅文さんがルール変更などをしたりしてくれたので妙に時間がかかり夜中過ぎまで眠れなかった。

 


 朝、起きると何故か、未だに雅文さんの腕の中にいて密着した態勢は続いている。

 ベッドの中にはいたが。服を着たままだったのでホッとしたけど。

 とりあえず、雅文さんへの褒美は無事に済んだようだ。朝からご機嫌だったのが嬉しい。

 鏡を見たら、唇が腫れていた。キスを百回もしたから?今度から気をつけよう。

 


 朝食の支度をキッチンで雅文さんとしたら、恭太郎兄様だけが現れた。

 レイナは疲れているのでもう少し寝かせておく、と言って自分の食事だけをさっさと済ます。

 トレーに綺麗に見繕ったレイナの朝食を並べるとイソイソと部屋に戻っていった。

 朝食の後片付けが終わるとレイナの様子が気になった私はそっと様子を見に行く。

 後悔した。雅文さんにとめられたのに強行してしまった自分を。

 



 だって、親友が自分の兄の膝に抱っこされて朝食をあーんさせられていたのです。

 私も昨夜させられたお膝抱っこに加えて「あーん」ですよ。

 セリが恭太郎のきょうは恐怖の恐といっていたのに少しだけ納得してしまった私でした。

 まあ、私も雅文さんにお膝抱っことか愛しているとかつぶやかされてキスの強要もされましたが、あれよりは……多分マシなはず。

 

恭太郎とセリの影になっていた感の強い雅文さんとレイナのことも書いてみたかったのです。

誤字脱字を気づいたら教えてくださると嬉しいです。

読んでくださってありがとうございます。

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