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異世界への迷人  作者: Siba
1章
7/7

 ふと周りを見渡すと、

足元には生い茂った草。道らしき道はない。横には無数の木がある。というより俺の真横にも木がある。目の前にも木がある。


さて、

「なぁ。ほんとに、この道であってるのか?」

「わかりません。」「わからない。」

これは・・・俗に言う遭難というやつでは?

幾度と無くその考えが頭に浮かぶ。

 そもそも、俺たちは、炎獣の化身が所属していたという国へ向かっているはずだ。

その国は南に位置するため、フロトやフォーグルの所属国を通ることになる。

今はそこへ向かう途中。


当然、フロトもいるため、まさか迷いはしないだろうと思っていたが、そのまさかが起きてしまった。

 さぁて、何故こうなったのか経緯をまとめてみようか。


俺らは整備された『道』を歩いていたはずだ。その時、突然目の前にウサギらしきかわいらしい生き物が現れた。清水が意外にもそれに反応。その生き物を追いかけていってしまった。俺らは、放っておくわけにもいかず、清水を追いかけた。

 

俺はその時、道はフロトが覚えておくだろう。と思い、全力で追うことに集中したのだが・・・、

わかるだろう?

運動神経抜群の清水が相手だ。やっと捕まえた頃には『ここどこ?』である。

個人的には、小柄なフロトがよく俺と清水についてこれたな、と思うところだが今は全く関係ないため、省かせてもらう。


さて、ここで誤算が発覚する。フロトもかわいいものには目が無いというではないか。

歩いていた道に戻る道筋はフロトが頼りだったのだが、全然覚えていないらしい。

360°あたりを見渡しても変わり映えしない草木があるだけ。


 立派な遭難の出来上がりである。

というか遭難に立派も何もないだろう。



「どうにかして、道に出ることはできないか?」

「地図も無く、方角もわからない今、それは難しいでしょうね。」

「今日中に出れそうか?」

「運と根気によるんじゃないでしょうか?」

 ここでの根気は歩き続けることを指すのだろうか?


「どうするかなぁ。」

「いずれ、なんとかなるわよ。」

 清水にはもう少し真剣になってほしい。ウサギを真っ先に追いかけていったんだからな。


木、木、木、さっきから風景が変わらない。

ん? 木?


「そうだ!木の年輪とかでなんとかならないのか?幅が広いほうが南とか・・・。」

 我ながらこのアイデアは素晴らしい。よくやった俺。ナイスだ俺。すごいぞ俺。

「あ、それなら無理。」

「俺のアイデア一刀両断するのやめてくれる!? 無理ならなんで無理なのか説明してくれよ。」

 折角思いついたアイデアなんだ。もう少し考えてくれ。


「あんた、周りみてみなさいよ。」

 周り?折れた木なら沢山あるけど・・・。

「その顔じゃわかって無いみたいね・・・。

・・・いい?ここは割と傾斜が多いの。

その傾斜に対して木は真上に立っている。

木だって馬鹿じゃないのよ。当然倒れないように、斜面の方向は頑丈に育つ。

そしたらその方向の年輪の幅は広がるわ。

斜面が東に向かって下がっているなら東の方角の年輪の幅は広くなるってこと。

それに、年輪を見られるほど滑らかな切り口の木はないでしょ。」


「まいりましたーっ。」

清水の言ってることは多分正しいのだろう。

確かに、斜面により年輪の幅は変わるかもしれない。

しかもほとんどの木はへし折れている。

チェーンソーなどで切ったような木はない。

 

さすが頭がいいだけのことはある。

俺もそこらへんは認めているし、否定のしようもない事実だ。

しつこいが、性格をどうにかしてもらえないだろうか。今回は棘が少なかったけど・・・。

攻撃的な上に魔法が使えるんだったら、俺いつか殺されるかもしれない・・・。

一体いつになったら、命だいじに、から抜け出せるのだろうか。



 といった、この世界に来てから考えるの何回目だよ?とつっこみたくなるような思考をめぐらせていると、ふと、視界に黒いものが映った。

 それも俺らの姿を確認したのかこっちに寄ってくる。


どうやら最初は遠くにいたらしく、近づいてくるにつれ大きく見えるようになった。

見つけたときはウサギ程度の大きさ。でも今は違う。

俺たちの前に立つそれは2m50cmはあろうかという熊だった。

って熊!?

 遠近法ってこんなにも変わるんだぁ。


「やはり出てきましたか・・・。」

横ではフロトが杖を構え今にも戦おうとしている。

「ここら辺の森には熊がいると言われていましたが、まさかほんとに戦うことになるとは・・・」

フロトよ・・・知ってるんだったら最初っから教えてくれよ・・・。

「逃げることはできる?」

「できません。ここ周辺の熊は脚が速いうえに跳躍力もすごいですから。背中見せたとたんに、やられますよ。」


 遭難、後ろに女の子2人、目の前には熊、俺の腰には剣。

何この少年漫画的な展開は!?

これが少年漫画か何かだったら、か弱い女の子2人を守るため俺は熊に立ち向かい、死闘の末、見事撃退。好感度うなぎ上り!・・・もしかしたらその後、膝枕で介抱をしてくれるかもしれない!そして「真島君、見直したわ。」チュッ・・・的な実に美味しい展開になるのかもしれない。


 ・・・しかし、現実はそんなにあまくない。

後ろの守るべき、か弱い女の子2人が、実は俺なんかよりはるかに強いし、

死闘も何も、熊から見れば、俺はLV1でも一撃で倒せるような、モブキャラ中のモブキャラだろうし、

俺が大怪我を負ったところで、介抱なんてしてくれないだろう。(フロトには可能性あるかも)

俺はなんにもしなくても大丈夫なんじゃないか?


その考えが頭をよぎる。が直後、清水から俺の後頭部へ蹴りが飛んでくる。俺はその衝撃に耐え切れず熊の前へ飛び出した。

「マシマクン、ワタシキミノコト、ワスレナイ。」

「おい!人を熊の前に押し出しておいてなんだその台詞。俺死ぬこと確定じゃねーか。しかもすっげー棒読みだし!」

 涙目まで作ってやがる。演技が細かいのはいいかとだが(いいことなのか?)その前に迷い無く人を熊の前に押し出すのをやめてほしかった。


「フロト。ここで俺が戦うのは得策じゃない気がするんだが・・・」

「いいえ、得策です。」

「ついに俺の味方がいなくなった!?」

フロトに見捨てられたら俺ここでどうやって生きていけばいいんだろうか。


「勘違いしないで下さい。魔法使うまでに時間がかかるのでそれまでの時間稼ぎです。」

 あぁなるほど。でも今の俺にはそれすらも困難だと気付いてくれれば嬉しかった。


「フロト、魔法あたしに使わせて。」

 清水の言葉に、瞬間、俺とフロトは耳を疑った。

「遊びじゃないんです。もう少し実戦経験を積んでからにしてください。」

「だから、積むために戦うのよ。炎と違って雷なら殺さないこともできるしね。」

清水がどんな魔法を使っても一向に構わないが、その前に1つ言わせてくれ。

「その優しさを俺に分ける気はないのかよぉ!」

「いや、だってあんたどうでもいいし。」

 即答だった。これ以上無いくらいの即答だった。


「俺は今まで清水のことを勘違いしていたようだ。地球から来た者同士、いざとなったら助けてくれると思ってた。でもそれは間違っていた。清水は自分のためなら・・・」

「どうでもいいけど熊のパンチ飛んでくるわよ。」

え?と思い、振り向くと、目の前に黒いものが迫ってくる。俺はどこから絞り出したのかわからない瞬発力で、持ってた剣を体の前に持ってきた。

 

 が、ガキンという金属音と共に地面に落ちる刀身。

熊の攻撃はそれで止まっているが、剣は・・・


 フォーグルさん。ごめんなさい。あなたに貰った剣、たった今1本折れました・・・。

いくら刃こぼれもある剣だからとはいえ、それを一撃で折る熊の怪力を目の当たりにして、俺は思った。

清水とフロト。俺には時間稼ぎなど無理だぁ!

その時、


「よし、真島、あんた、熊の前から避けて。」

 声を聞いて俺は地面を蹴り横へ転がる。それにより清水の真正面には熊しか存在しない状況が出来上がった。


どうやって逃げようかと迷っている暇は無い。清水のことだ、なにかしら魔法でも撃つんだろう。それは俺がいようといまいと関係なく使用するはず。つまり、逃げないと俺も巻き込まれる。

と言うのは避けた後に考えた、微妙にかっこいい言い分(かっこいいか?)だが、まぁ間違いではないだろう。


「えーっと、魔法の軌道を頭の中でイメージして・・・」

 清水が杖を熊に向ける。

「最大の力でいっけぇ!」

 清水の大声が響く。

っておい。熊を殺さないために魔法を使うことにしたんじゃないのかよ。


と思うが、時すでに遅し。

杖の先端から飛び出て、熊と杖を一直線に繋ぐ電気。

バチッという感電音。直後にドサっと音を立て地面に倒れる熊。

動物愛護団体が見たら間違いなく文句をつけてくるだろう。

安心してくれ。俺が代わりに言っておくことにしよう。


「殺さないために魔法つかったんじゃないのか?なのに、なにが最大の力だ。」

 確かにこうしないと、こっちが全滅していた。しかし他にもやり方はあっただろう。

「あんた。何言ってるの?熊生きてるじゃない。」

 え?


確かに熊は死んでいなかった。気絶していた、というべきか。かすかに動いている。

「清水、最大の力って言ってなかったか?」

「えぇ、言ったわよ。」

「それ嘘だったのか・・・」

「いいえ、本当よ。」

 

いやいや、それはない。ランク8(どれくらいかしらないが上から3番目)もある魔法使いの魔法がこんなに貧弱で言い訳が無い。いや熊気絶させたらそれはすごいことだけども。

「ランク8じゃないのかよ。」

「ランク8よ。」

「全力が弱すぎないか?」

「だって初めて使ったもん。」

 そっか。そういえば初めて使ったのか。納得。だから全力でも気絶か。

つまり今の清水は、攻撃的なスタンガンだな。相変わらず恐ろしい。


「話すのは後でもいいですからまずここから離れましょう。」

 とフロト。

全くだ。こんなところとっとと離れよう。」

「で、どっち行くんだ?」

「・・・」「・・・」

 忘れてたけど、只今、俺たち絶賛遭難中☆


「適当にあるこうか。」

 ということになり、暫く歩く。どれくらい歩いたかなんて知るものか。携帯のバッテリーは抜いてある。いつ何時、俺たちが地球人ということに疑いを持つ人が現れるとも限らないからな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やがて、

目の前に見えてきたのは、

 さっき戦った熊だった。

「俺たち縁あるんだな。仲良くしようか。」

と伝えられるものなら伝えたい。誰か熊語を教えてくれ。


その熊は、俺の横を素通りし、

清水の前で立ち止まり、

地に伏した。


 え?何が起こってるの?いつの間に手なずけたの?

清水はキョトンとしている。

フロトは呆然としている。

俺は混乱してパニックに陥っている。

俺、落ち着きないなー、と思ったのは数秒後のことである。


やがて熊は立ち上がり(といっても4足歩行だが)、のそのそと歩き出した。

俺らは何が起こっているのかもわからないまま、ただ熊についていった。


古い武防具に身を包んだ男、スタンガン少女、全身紅の幼女、大きな怪力熊。

ある種の、特殊なチームになってきている。

どうでもいいが、どうも俺だけ弱そうだな。


正月があったためずっと寝てました。

そのため、更新が遅れてしまい申し訳ありません。


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