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異世界への迷人  作者: Siba
1章
6/7

旅立ち

 一体どうしてこうなった・・・。

 炎獣の化身を探すなら、彼がかつて所属していた国へ行ってみるといい。

とのフォーグルの言葉を聞き、砦を発ってから3日。

森の中に俺たちはいた。

一見、和気藹々としている3人だが、よく見ると俺だけテンションが低い。


現在、俺は皮製の鎧に身を包み、腰にフォーグルから貰った剣を2本さしている。

片方は当然、俺が貰ったもの。もう片方は元清水の持ち物だ。


 なぜ清水の剣を俺が持っているのか、何故俺のテンションがここまで低いのか、というと・・・

3日前、この世界に来た日にさかのぼる。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


もう1つのプレゼントとしてフォーグルが用意してくれたものは、魔法適正の検査だった。

つまりは、あなたには~属性の才能がありますよー。みたいな事を判断するらしい。


この検査を受けるには多額の費用が必要らしいが、それをフォーグルが全額払ってくれたというわけだ。


ここでふと心配になり、この世界で彼に会ってから1時間くらいしか経過していないのに、こんなにも世話になっていいのだろうか?ということを聞いてみたところ、

「別に構わない。炎獣の化身について私も興味があるからね。」

 とのことらしい。


 さて肝心な適正検査だが、皮膚に検査用の粉を溶かした液体をたらし、その場所を少し引っ掻く。数分後に皮膚の反応を見る。というものだった。 

アレルギー検査に似ているだろう。



さて、数分後に検査の結果がでるというわけでわくわくしながら待っていると、担当の人が来ていろいろと説明をしてくれた。

説明の内容は、

・使い物になる、ならないを考えなければ、誰でも何かしらの魔法の才能を持っている。

・実戦で使えるような才能が見つかれば、魔力を高める薬を飲む。これで初めて魔法はつかえる。またその場合、属性に対応した杖を渡す。

・使い物にならない才能でも薬を飲めば、脆弱だが魔法を使える。

ということだった。


 当然、検査結果はとても楽しみだ。

地球では絶対に使えないと思っていたものをこの世界では使えるのだから。

魔法って使う時どんな感覚なのだろうか?俺はどんな魔法の才能があるのだろうか?

といったことを考えていると、ドキドキが止まらない。


 さて、検査結果だが、先に呼ばれて行った清水が「やったー」と大きな声で叫んでいたところを見ると、なにかしら才能があったのだろう。

学業優秀、才色兼備、それに魔法も使えるならば、清水はもう敵無しだろう。

 俺はどうだ?とよけい楽しみになる。


「あたし、ランク7の雷の才能あるんだって!すごいでしょ。」

 出てきた清水がなにやら胸を張って自慢している。

「ランクってなによ?」

「あぁ、なんか魔法の才能の大きさ?とかそんな感じ。

聞いた話だとフロトは炎9あるらしいわ。」

「ランクはどっからどこまであるんだ?」

「0から10までだって言ってたけど・・・。」

「そうか。」

魔法の才能にはランクがつけられているのか。それは知らなかった。

それにしてもフロトは9ってすごいな。爆発とかはそれによる芸当か?


そんなことを考えていると・・・


「修哉さーん。」

 と呼ばれたので返事をし、 歩いていく。

さぁ、俺にはどんな才能があったのだ?



「真島修哉さん。でしたね。私は今回の検査を担当させていただく・・・・」

細かい説明はこの際どうだっていい。

とっとと結果を教えてくれ。


「さて、検査の結果ですが・・・いまだに信じられません。あなたはとても珍しい。」


お?

そんなに珍しい才能が俺の中に!?

一体どんな才能だ?

俺は今にも立ち上がって喜びたい衝動にかられながらも、それを必死に抑える。

まだだ。まだ喜んだらだめだ。

担当者が口からはっきりというまで。喜んだらダメだ。


「あなたには・・・」

 あなたには?


「あなたには魔法の才能がまるで無かった。」

「やったーっ!・・・え?」

「本当に珍しいんですよ。魔法の才能が全く無い人間なんて・・・。」

 


心の中で期待と希望と今にもあふれ出しそうだった喜びが、一瞬にしてしぼんでいくのを感じた・・・。

 

え?何?そっちの珍しい?

思わず『理不尽だ!』と叫びたかったが、生まれ持った才能はどうしようもない。

この場をみていた人がいれば、10分前の俺からは考えられない落ち込み具合だったと全員が言うだろう。



その後、清水は魔法を使えるようになるという謎の薬を飲み、魔法についての講義を受けに行った。

俺は一人でポツンとしているわけにもいかず、清水についていく。

 


講義が始まって早2時間。

現在、俺はすでに集中力の限界に達している。

受けてるけど、俺は魔法使えないんだよなぁ。

どうあがいてもここでの知識は役に立たない。そう思うと自然と集中が削がれる。

そして、自然とため息も漏れる。

 

 ふと、横に目をやってみた。

視線の先では清水が講義を受けている。

その顔は俺と真逆で真剣そのものだ。

そういえば、清水って学校ではねこかぶってたからな。

集中するのはお手の物なんだろう。

魔法に興味があるってのも一理あるかもしれないが・・・。


講義が終わった後、清水は杖を貰うらしく質問をされていた。

「雷属性の杖ですので宝玉には黄色いものを使用します。これで1目で魔法使いの属性がわかるのです。杖の先端の宝玉はどのような形にしますか?球とデルタ8面体がありますが・・・。」


デルタ8面体?なにそれ?


「デルタ8面体って何?」

さすがの清水でもわからなかったようだ。

そういえばフロトの杖は赤い球体だったよな。

炎は赤いのか。

んで、雷は黄色。

どうやらそこらへんの価値観は地球と同じらしい。


「全ての面が正三角形でできた双四角錐です。」

質問の主は説明を続けている。

しかし、

うん。これでもわからない。とがってそうなことしかわからない。

やばいな俺。どうした俺。負けるな俺・・・。

いや、負けるも何も戦ってないけどね・・・。


よしここは一つ。迷っているようだし清水に提案してみよう。

「性格が丸くなるように球にすれ・・・」バキッ!

 ば?まで言えなかった。強烈なアッパーが直撃したのだ。

痛い。ほんと痛い。


「あんたは黙ってろ。」

「ひゃい。わかりました。」

 下顎をさすりながら俺は答える。

 今後一切、清水をからかわないようにしよう。なにされるかわからん。

命大事にだ。

ん? 前にもこんなことあったよな。


「デルタ8面体でお願い。」

 結局清水は球体を選んでくれなかった。

清水よ。ほんとにいいのか。性格丸くしなくて・・・。



数分後、清水の杖が持ってこられた。

清水の身長より長い棒の先端に輝くデルタなんとか形。

その杖を清水がうけとる。

重量を確かめるようにふっている。先端が尖っているためとても危ない。

やがて、重量を確かめ終わったのか、

「これ、もう使わないから、あんたにあげるわ。」

 そういって清水が渡してきたのはフォーグルに貰った剣だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 というわけだ。

わかってくれただろうか。

俺のテンションが著しく低いのは魔法が使えなかったショックによるものが大きい。

しかも、そのあと剣が1本増え、片手剣使いから双剣使いに予想だにしなかった、不名誉のランクアップをしてしまったし・・・。


 もう諦めろよ。と頭ではわかっている。わかっているけど心がわかってくれない。


例えば、おいしいと評判の店のプリンがあったとしよう。

いつか食べようっ!とそれを冷蔵庫の中に置いておく。

そしていざ食べようと思ったら、なんと目の前で幼稚園児の弟の胃袋に入ってしまった。

その時、どう思うだろうか?

園児を責めることはできない。けど楽しみにしていたプリンを食べられてしまった。

 

その気持ちが今の俺の気持ちだ。

魔法が使えるととても楽しみにしていたのに、

目の前の清水はそれを手に入れたのに、

俺は手に入らない。


学業優秀、才色兼備、ならばもう魔法なんていらないじゃないか。

神様はなにを基準に才能を割り振っているのだろう・・・?

嫉妬とまではいかないが、やはり羨ましい。



「真島さん。どうしたのですか?砦を出発してから元気がありませんよ。お体を壊されたのですか?」

「なんでもない。ただちょっと人生ってなんなんだろうな。って考えてただけだ。」

「それは大丈夫と言っていいんでしょうか?普通ならそんなこと考えませんよ。」

「具体的に言うと清水が俺のプリンを食べたんだ。」

「プリン?何の話ですか?」

「神様の理不尽を呪っていたんだ。」

「最初より大丈夫じゃなくなった気がします・・・。」

 フロトが低い位置から赤い2つの目で見上げてくる。

なんだかんだいってもフロトだけは、俺の心も変化をわかってくれる唯一の味方に思えてならない。


「ほっとけばいいのよ。いずれ復活するから。」

 と清水。

 原因はお前だよぉ!と言いたいが、清水に非があるわけでもないため、言わずにおいた。

「しばらく復活は難しい。・・・かもしれない。」

「じゃあ、それ、気のせいだわ。」

「俺が落ち込んでいるのに、それはあまりにも酷だと思うんですが!?」

「いや、常識、常識。」

「何の!?」

「落ち込んでいる、真島修哉をみたら全力でいじめること。」

「そんな常識あってたまるか! 謝れ! 俺と全国の真島修哉に謝れ!」

「じゃあ、ごめんなさい。」

 お、珍しいこともあるものだ。清水が謝るなん・・・

「全国の真島修哉さん。この場を借りて謝罪を申し上げます。尚、あたしの隣にいる人は除く。」

「俺にも謝れよ!除くってなんだよ除くって。」

「まぁ、まぁ、2人ともそのくらいにしておいたほうが・・・。」

「遮るなフロト。俺はこいつと決着をつけないとだめなんだ!」


 俺はそういうと腰の古い剣を2本とも抜き放つ。

それに応じて清水も先端のとがった杖を俺に向けている。

 一触即発だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 とまぁ、旅立ってから3日、険悪な俺と清水。それをなだめるフロトといった構図が完成してしまっていた。

 

まだまだ、旅立ったばっかりだからなんとかなるよな?


ほんとにこの関係、何とかなってほしい。心の底から切に思う。



 ・・・・・・・・・なんとかなる・・・よな?


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