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異世界への迷人  作者: Siba
1章
5/7

自分の居場所

「過去にも『形持たぬ者』と人の間で行われた戦争があったんですよ。」


 フォーグルの言葉は過去現れた『形持たぬ者』がいままた現在、現れたことを意味している。

過去に出現して、この間まではいなかった。

一体どういうことだ?


フォーグルは立ち上がり室内の隅にある本棚へ行き、本を一冊とってきた。

それを俺たちのいる円卓の中心で開く。


フォーグルが言葉を続けた。

「過去・・・今からざっと3000年ほど前になりますか。

形持たぬ者の出現が歴史書に出てくるのはそれからです。

 しかし、不思議なのですよ。その記述がされてから今まで、一度も形持たぬ者は歴史に出てこない。

 わかりますか?

3000年もの間、形持たぬ者は何をしていたのか。もしくはどんな状態にあったのか。

全くわからないのです。」

本の行を追いながらフォーグルは、説明をしている。


「その戦いの結末はどうなったんですか?」

 思い切って尋ねてみる。すると信じられない答えが返ってきた。


「人が勝った。」

 問題はその先・・・



「異世界からきた人間によって決着がついたのだ・・・」



その言葉を聴いた途端、俺は・・・瞬間的に鼓動が速くなるのを感じた。 

過去にも俺と清水と同じ状況に立たされた人間がいる。

それだけで十分。

不安が体から抜けていく。

おそらく、王様もこのことを知っていたのだろう。だから俺らの説明を信じてくれた。


「その異世界から来た人は元の世界に帰ることができたのですか?」


「わからない。そこまでは記されていない。ただ、・・・こう書かれてはいる。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


異世界から来た者は4人。

男3人。

女1人。


男の1人は形持たぬ者との大戦後に処刑。

また1人は何者かに襲われて死亡。襲撃者は不明。

女は大戦により戦死。


残った1人の男はその風貌、戦いのスタイルから『炎獣の化身』と呼ばれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「4人の内、3人はわかるだろう・・・。

もう1人・・・炎獣の化身はどうなったのかわからない。」

 フォーグルが告げる。


4人の内、3人も死んでいる?

残った1人も不明・・・。

 地球へ戻る方法はわからない・・・か。

 せっかくてがかりが見つかったというのに・・・。

3人はこの世界で死んでたなんて・・・。


「終わった・・・。」

 終わった・・・。

帰る方法はわからない。4人の内、3人も死んでしまっていた。

それはつまり、彼らは最後まで帰る方法を見つけることができなかったのだろう。

形持たぬ者に勝つ力があったとしても、地球に帰る方法はなかった。


チェックメイト・・・だ。


これからどうすればいいんだろうか。

 どっかで農業なり工業なり商業なりをして生きていこうか?

その場合、まずやり方を覚えるところから始まるのか。大変そうだな。

 軍に入ってあの化け物と戦うか?

無理だな。俺にはそんな力は無い。

俺はどこにでもいる一般的な高校生だ。


 俺がこれからの生活について考えを巡らせていると、

清水が椅子から立ち上がり言い放った。


「まだ、終わってない。

その残った1人についての情報を探せばいいじゃない。

この人たちはこの世界における私達の先輩なのよ!

諦めるのは、先輩の残したものをなにかしら探してからでしょ。」


「清水・・・。」


俺の言葉を最後に直後訪れる沈黙。



まっ先に沈黙を破ったのはフォーグルだった。

「清水さん。そのとおりだ。

この世界では知りたいことが身近なもので理解できない場合、旅に出る。

わしも昔は、よく旅に出たものだよ。

君達も、旅出ってみるといい。

 その結果、過去を繰り返すことになるかはわからない。

だが、何もしないよりはいいだろう。」


過去を繰り返すというのは俺らがこの世界で死ぬことを意味しているのだろう。

つまり、死ぬかもしれないけど、それしか戻ることのできる可能性は無いということだ。

虎穴に入らずんば虎子を得ず。ということか。

 しかし、炎獣の化身なる人が地球に戻れたとは限らない。

その人もどこかで死んでいるかもしれない。

 

・・・でも、帰れる可能性が1%でもあるのなら、


俺はそれに賭けてみたい!


「俺も賛成だ。どうせこの世界で俺らが生きていくのは難しい。戦争もあるしな。」


「君達2人は本当にそれでいいのか?

旅に出たとしたらどこで形持たぬ者に出会うかわからない。

出会ったとしたら、君達は自分で自分の命を守らなくてはいけない。

その覚悟はできているのかい?」


「フォーグルさん。

勿論、俺は死ぬのは怖いし絶対に嫌だ。

だけど、俺らがこうしている間にも地球では

家族が心配しているかもしれない。

友だちが心配しているかもしれない。


家族と友だちってさ。いつも一緒に話して、笑って、馬鹿なことして、

時には喧嘩にもなるけどさ・・・

それでも一緒にいたいって思うんだよ。

会えなくなると悲しいって思う。

あそこは、こんなにも居心地のいい場所だったんだ。

俺のいたい場所はここじゃない。

だから俺は探す。

自分の居場所へ帰るために。」


「あたしもおんなじ。地球に帰りたい。だから旅に出る。」


 清水と意見が一致した。

そんな俺らを交互に見てフォーグルは言う。


「そこまで帰りたいのなら、もう止めはしない。

だが、約束してほしい。

『絶対に死なない』と・・・。

真島君が言ったとおり、私も家族と会えなくなるのは悲しいから。


ん?不思議そうな顔をしてるね。

きみらは、紛れも無く私の家族だよ。

国王陛下にきみらの世話を任されたときからね。

だから、会えなくなるのは悲しい。


それとフロト。

きみも一緒に行きなさい。そして真島君達を守りなさい。


大丈夫、軍にはわしから話をしておく。」


「わかりました。2人についていきます。」

 フロトも一緒にきてくれるのか。

 正直、不安がかなり消えた。半減などというものではない。

80%くらいも消えた。

だって、爆発させる魔法使えるからな。


「さて、旅立つきみ達に餞別といっては難だけど2つプレゼントをしようじゃないか。」


そういうとフォーグルは部屋にあった2つの袋を俺らに1つずつ渡してきた。

「開けてみなさい。今のきみたちに必要なものが入っている。」


 指示に従い袋を開けると中には、

茶色い皮製の鎧と短い剣が入っていた。

鎧はかなり使い古されているようで、いたるところが傷ついている。

剣はいたるところが刃こぼれしていたが、今にも折れそうというほどではない。

清水の袋にもおなじ物が入っている。


「性能は低いが無いよりはましだろう。もって行きなさい。

本当は軍の使う武防具をあげたいのだが、今は前線でも武防具が不足しているんだ。

だから私の一存で渡すことはできない。許してくれ。」


「謝らないでください。これをもらえただけでもとても心強いですよ。」

 お世辞ではなく本当に心強い。

素手と剣なら剣のほうが絶対にましだし、鎧も制服を着て戦うよりはよっぽどましだろう


「そう言ってくれるとありがたい。

さてもう一つのプレゼントだが・・・ついてきなさい。」


 そう言うとフォーグルは部屋を出て歩き出す。

俺、清水、フロトはただそれを追う。

 

やがてフォーグルは一つのドアの前で立ち止まった。


正直、誰も読んでくれないだろうなぁ、と思っていたのですがその予想は外れました。

想像以上の人が読んで下さっているようです。まぁ初期予想が1桁だろうなぁでしたし・・・。

読んでくださっている方々、このような小説に時間をとってくれてありがとうございました。

感想、評価してくれるとありがたいです。

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