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異世界への迷人  作者: Siba
1章
4/7

形持たぬ者

「入ってきてください。」

フロトに呼ばれその部屋に入ると、見たことも無いような光景が広がっていた。

 

壁は外から見たものと同じ色の石で作れらている。

ドアの入り口から一番遠くの椅子にまで届くほど長い絨毯。その下に明かりを反射して光るまで磨き上げられた床。

 その絨毯の両脇に鎧、ローブ、俺らでも着るような布服をきた人間が、縦一列にズラッと並んでいる。その人達の目が俺らを捕らえて離さない。

 中学校の卒業式なんかよりはるかに沢山の目がこちらを見ている。

言葉が発っせられないことが、より一層、迫力に磨きをかけている。

 何か怪しいことをしようものならすぐ殺されそうだ。


「国王様、この者達がさきほど説明した者でございます。」

フロトはその視線を一切気にせず、一番奥に座っている男の前に行き、片足の膝をつき手を胸の前で合わせた。


「きみらが・・・。」

 フロトが国王と呼んだ男が(いや実際国王なんだろうが、)立ち上がり、こちらを見てくる。

 髪の色が茶色。いや、少し白い。顔にも、しわがある。けっこう年をとっているようだ。


『王の御前です。無礼、無きよう。』

 フロトが呟く。

これは俺らに言っているのだろう。

現に俺らは王の前で、礼儀も何も無くただ突っ立っていただけだから。


『フロトと同じような姿勢になって。』

『はぁ?なんであたしがそんなこと・・・』

『この場所で一番偉い人だろ。』

『それは、まぁそうだけど・・・』

『いいよ。やりたくないなら』

清水と小声で短い会話をしてから俺はフロトを真似る。


『あぁ、もうやればいいんでしょ!』

 納得したのだろうか。それとも俺とフロトがそうしているから、やらざるを得なくなったのか。

どちらにせよ、突っ立ったままではないのでよしとしよう。


ほんの少しの間の沈黙。

最初に口を開いたのは国王だった。


「まず一つ。きみらに言いたい。・・・すまなかった。」

 

え?

なんで王様が謝ってるの?

俺と清水はなんかやられたの?

横を見てみると、清水も首をかしげている。

俺同様、なんのことかわからないらしい。


「えっと、なんのこと?

間違った。何のことでしょうか?」

敬語、敬語、自分に言い聞かせる。


「? きみ達はあそこにあった村の住民ではないのか?」

「いえ。」

「じゃあ、旅人か何かか?」

「いえ。」

話がかみ合っていない

この世界に来てから、こういうことが多いな。」


「それよりもまずは、なぜ謝られたのか知りたいです。」

「あぁ、そうだったな。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あそこには村があった。小さな、小さな村だ。

 だが、北で『形持たぬ者』が現れてな。


そいつらはまず周辺の村を襲った。

 都市も襲った。

わしは国を治めるものとしてこれ以上、被害を出すわけにはいけなかった。

 よって、軍隊を編成し、討伐を始めた。

 

しかし、彼らの力は強力だった。わが軍は徐々に後退を続けた。

 そこで最終防衛ラインとなったのがあそこだ。

 

わしはそこにいた村民を都市に家を与え引越しを促した。

大半のものがそれに従った。

 村民の全てが避難した時、

旅人も、

商人も、

誰も危険な目に会わぬようこの区域への立ち入りを禁止した。


わしはフロトから君らが森にいたと聞き、

もしかしたら逃げ遅れたか。と思ったんだ。

 

 よって謝った。

 わしの力及ばぬゆえにきみらを危険な目に合わせてしまったんじゃないかと思ったから。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 王の話はそこで途切れた。

 

王は俺らを危ない目にあわせてしまったと思い込んでいる。


 俺らが、立ち入り禁止区域にいたのは、この人のせいではない。


 俺らは違う世界から来たのだ。

その到着点がたまたまあそこだったというだけ。

しかし、立ち入り禁止区域に人がいても、そのような発想はまず浮かばない。


「王様、それは違います。私達は気付いたらあそこにいたんです。」

俺がどう説明すればいいのか迷っていることを清水が説明をしてくれた。

だが、そんなこと言っても誰も信じてはくれないだろう。

むしろ馬鹿じゃねぇの?と思われるくらいだ。


 考えてもみてほしい。

 自分の目の前にいきなり、私異世界からきましたー。って言う人が現れたとしよう。

はたして、それを信じるのは何人か・・・。

100人いても1人信じる人がいるかいないか。

いたとしたら、その人は詐欺に要注意だ。

昨日までの俺なら絶対に信じない。

見てみろ。

王様も首をかしげて、どういうことだ?っていう顔してるぞ。


「だから、違う世界からきたんです。」

 これ以上、場を余計に混乱させること言わないで・・・。

フォローが見当たらない。


仮に嘘でもいいからリアリティのある説明をしようとすると、

あの森に住んでました。→ 王様がさっきみたいに謝る。

間違って入りました。 → 俺らが悪者みたいになる。


 真実はどちらも悪くないが、信じてもらえない。

 嘘は信じてもらえるが双方どちらかが悪いということになる。


「よし、きみらの話。信じよう。」

 信じちゃった。王様が長い考察の上で信じちゃった。

ここ数行の俺の考えたこと全部無駄じゃないか・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「フロト。この者達の世話をフォーグルとしてくれ。任せた。」

 なんだかんだで保護者が決まってしまった。

それよりも、同い年が保護者って・・・。


まぁ、俺らはこの世界については小学生以下の知識しかもっていない。

保護者は必要だろう。

 

そういう意味では、趣味とかが合うかもしれないから良い人選だ。

 

それに可愛いし。

ロリコンというわけではない!フロトは同い年だ!

心の中で宣言。見た目まんま幼女なのに・・・。

これ口に出したらまた泣かせてしまうだろうなぁ。

いや純粋に命が無くなるかもしれない。

だって魔法使いだし・・・。爆発させてたし・・・。

『命大事に』だ!


 

・・・・・フォーグルって誰?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 フロトに案内されて砦内の一室に辿り着く。

ここが戦時中に使う部屋のようだ。


「おかえり。」

 ドアが開くなり中から声が聞こえる。

「ただいま。父さん。」

 どうやらフロトの父親らしい。

「紹介するわ。2人は真島修哉。清水綾。

王の指示でこの2人の面倒を見ることになったけど大丈夫?」

「問題ない。家族が増えるのはいいことじゃ。」

「ありがとう。父さん。」

 どうでもいいけど敬語を使わないフロトをはじめて見た。

 新鮮な感じがする。


フロトは続いて俺らのほうを向き、紹介をしてくれた。

「この人が私の父、フォーグルです。」


フォーグルとよばれた彼は白髪の老人だった。

切れ長の目。それであって優しさを感じさせる。口角は若干上がっていて、微笑んでいるようだ

俺たちの保護者・・・。

優しそうな人よかった・・・。ほっと胸をなでおろす。


フロトの話によると、彼はフロトの育ての親らしい。

なんでも、小さい時に両親は他界してしまったとか・・・。


気がつくとフォーグルの手が目の前にあった。

握手か・・・。

俺はその手に自分の手を重ねる。

「よろしく。わしはフォーグルだ。身分は平民。現在は軍の情報整理官を務めておる。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


軽い自己紹介を終わらせてから俺らは円卓を囲んで話を始めた。

「1つ質問ですが。真島さんと清水さんは本当に異世界からやってきたんですか?」

 真っ先に聞いてきたのはフロトだった。

そういえば異世界から来たっていったのは王の前が初めてだな。


「異世界から来たのは本当だ。授業を受けながら桜を見てたらここに来た。」

「あたしもそんな感じよ。桜を見てたわ。あの授業退屈なんだもん。」

 授業と桜。

これは共通点か?


フロトが疑りの目でこちらを見ている。

「疑っているのか?」

「イエ。ウタガッテイマセン。」

 棒読み・・・思いっきり疑っているな。

まぁ、信じろって言うほうが無理な相談なんだろうが・・・。

服は全然違うもの着てるんだけどなぁ。

俺ら制服だし・・・。


そのときポケットのごしに何かが脚に触れた。

ちょっとした重量。

ん?これは・・・。


 それをポケットから取り出し全員に見せる。

「あんた、それ・・・。」

 横で見ていた清水が驚いている。


 直方体の物体。


「おう、紛れもない携帯電話だな。清水は持ってないのか?」

「校則違反だから。」

 みんな普通に持ってきているんだが・・・。

さすが猫かぶりだ。

自分にとって都合が悪くなることはしないんだろう。


「電話はかけられないが、光るし、音出るし、

科学が発達してないらしいこの世界では証明には十分だろ?」

そういうと俺はアラームを1分後にセットして机に置く。

フロトとフォーグルは頭の上に『?』を浮かべている。

そりゃあ そうなるだろう。見たことも無い電子機器だからな。


1分後、

音楽と共に、朝です!朝です!と告げる電子音が部屋に響いた。

フロトとフォーグルは最初こそ驚いていたが今は目を見開いて携帯電話を見ている。


「信じてくれたか?」

おそるおそる尋ねる。これで信じてくれなかったら・・・もう信じてもらう術は無い。

「「信じざるを得ません。」」

2人が声を揃えて頷く。

ちょっとした達成感が心の奥から込み上げてくる。

ついに俺は信じさせてやったぞ。



 どうでもいい達成感はおいといて、

「フォーグルさん。あの黒い生き物は何ですか?フロトはよく知らないらしいんですけど・・・。」

ここに来るまでにこの質問はフロトにもしている。

しかし、魔法のことはわかっているのに、謎の生物のことはわからないらしい。


「あの生物ですか・・・。

結論から言うと、いまだによくわかっていません。

ある日、大陸の北部で大量に出現したという報告だけです。


彼らの嫌なところはですね。その力とその量にあるのですよ。


地を人の倍の速さで進み、表皮は硬くほとんど剣が通らないんです。

破壊本能のままに動くため、人と違い容赦なく相手を殺します。

1体に対して3人の屈強な戦士で挑んでやっと互角でしょう。

 

更に数に限りがありません。何体仕留めようとも、次から次へと沸いてきます。


北方には少し前まで大陸最強と謳われた軍事国家が存在していたのですが滅ぼされてしまいました。要因は先ほどいった反則なまでの強さです。多数精鋭とでもいいましょうか。


また彼らは種族ごとの特定の形を持たないため、

『形持たぬ者』とよばれております。」


そこまで言ってふっとフォーグルは顔を曇らせる。

そして重く、低い声で続けた


「過去にも『形持たぬ者』と人の間で行われた戦争があったんですよ。」


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