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Scene.4 神隠し(2)


 夜、斉木から電話がかかってきた。

「奈緒子がケータイにつながらないんだ」

 それにむっとするよりも、不安の方が強かった。晴彦にも、いまだにメールが返ってきていない。

「充電、切れてるんじゃないですか?」

 急な風邪とかで、寝込んでいるのかもしれない。インフルエンザの季節でもあり、もしかしたらと思った。充電を怠っていれば、つながらない理由になる。それが自然だと思った。

「明日になれば分かりますよ」

 次の日、学校で、犬井が行方不明になっていることが伝えられた。



 一時間目の授業がはじまる直前、晴彦は斉木を呼び出した。

「なんだ急に?」

 怪訝そうな表情を浮かべていた。

「犬井が一昨日の夜から、家に帰ってないそうです」

「はあ!?」

 それが冗談ではないことは、晴彦の必死な表情から伝わった。

「じゃあ、一年生の行方不明者って……」

「犬井です」

 斉木は頭を抱える。

「マジか…… どういうことだ?」

「先輩、直前まで一緒にいたんじゃないですか?」

「あの日は、そんなに暗くなかったから、電車の中でわかれた。奈緒子は、駅から自転車で、十五分のところに住んでいる」

「じゃあその、十五分の間に……」

 言いかけて口を閉じた。中学の時、行方不明騒ぎが一度あったが、その人物は不良で知られていて、実際はただの家出だった。しかし犬井に限って、そんなことがあるわけがない。「誘拐された」と考えるのが自然だった。

 斉木は頭を抱えながら、行ったり来たりして、動揺を隠せずにいる。

 どうすればいいのか、晴彦にも分からなかった。

 斉木は急に立ち止まり、

「俺、奈緒子の親に、何があったのか聞きに行くわ。ついでに俺が、直前までいたこと、警察に話さないと」

 それがいいのだろう。だが晴彦は、軽くうなずくだけだった。



 斉木は学校を脱けだし、犬井の家に向かった。

 晴彦は複雑な気持ちで、一日をすごした。

 昼頃、斉木からメールがあった。放課後、話がしたいと。晴彦はすぐに応じた。

 集合場所は、学校近くの、犬井や斉木が利用していた駅のそばにある、ファーストフード店だった。

 斉木は山積みのハンバーガーを食いながら、落ち着かない様子だった。いらいらするとやけ食いするという話は、冗談かと思っていたが、本当だった。

「警察の野郎、俺のこと疑いやがって。俺が連れ去ったんじゃないかとか、家出を手伝ってんじゃないかって、馬鹿じゃねぇの!」

 どうやら犬井の失踪は、本当らしい。

「駅員は奈緒子が改札をくぐるのを見ていた。明らかに、家に向かう十五分間だ」

「他に、目撃情報はないんですか?」

「家まで、いくつか住宅があるが、ほとんど暗い一本道だ。駐輪場には、奈緒子の自転車がなくなっていたから、その途中に誘拐された」

 誘拐と、はっきり斉木は言った。

「車の通りは多少ある。無理矢理連れ込まれたのかもしれない」

「そんな……」

「ただ気になるのは、自転車ごといなくなっていることだ。車で誘拐されたのなら、自転車は邪魔になるだけだ」

「どこかに隠されているとか?」

「その可能性もある。まだ警察も、これが事件だと思っていないみたいだ。ただ俺の話で、本格的に調べだすようだったけど」

 警察が捜してくれない、という話はよく聞くが、本当に、身近な人の失踪事件で、捜査がされていないのは衝撃だった。

「明日、学校を休んで、周辺を調べに行こうと思うんだが――」

 手伝ってくれないか、そう続く前に、

「俺も学校休みます」

 それに斉木は安心したように、一日ぶりに笑顔を見せた。



 晴彦は制服姿で、犬井の降りる駅に来た。晴彦が学校に向かう方向とは反対なので、着くのに学校に行くより時間がかかった。

 斉木は、晴彦よりやや遅れて、自転車で来る。

「けっこう、自転車ってのもしんどいな……」

 斉木は息を切らして、ハンドルにもたれる。

「どうしてわざわざ自転車で?」

「どうせお前も自転車で来ると思ってな。ついでに、奈緒子の帰り道をたどって、自転車の隠せそうな場所、誘拐しやすい場所を探すため、実際に自転車で探してみようと思ってな」

「なるほど」

 気になったのは、斉木が犬井の自転車を分かるのか、帰り道を知っているのか、ということだった。

 その日の結果、夕方になっても何も分からず、行ったり来たり、横道に入るぐらいで、徒労におわった。

 毎日自転車で通っている晴彦でも、帰る頃には足がぱんぱんに張っていた。



 家に帰ると、晴彦は両親に怒られた。学校から、無断で欠席したことを連絡されたのだ。犬井が行方不明になって、緊張している時期である。一時間は正座させられた。

 そこで、他にも行方不明の女性がいることが分かった。

 さらっと言われたが、きな臭い感じがした。

 斑鳩の話にもあったが、そんな立て続けに、こんな人口の少ない町で、行方不明者が出るのは異常だった。

 なんとなく晴彦は、斉木に電話をした。

「俺もばあちゃんから聞いた。これから斑鳩博士に電話して、会おうと思うんだが、お前も来るか?」

 晴彦の中でも、斑鳩は知識も豊富な、頼れる大人だった。この事態を相談し、なにかヒントを期待できるのは、彼だけだろう。犬井を捜し出す、いい方法を知っているような気がした。

 ただ斉木は、別の意味で期待しているようだった。

「犬井が行方不明になった夜、雷のような音がした、という話を聞いた。もしかしたら犬井は、宇宙人に連れ去られたのかもしれない」

 それを先に聞いていれば、晴彦は断っただろう。

 それからしばらくして斉木から、斑鳩と二日後に会う旨のメールが来た。



 学校での話題は、魚の大量死から、犬井の失踪になった。犬井と仲が良かったと思われている晴彦は、今まで話したこともない女子から、いろいろ聞かれたりした。

「犬井の件とは関係ないけどよ」

 小菅が切り出す。

「近所のおっさん達の話なんだけどさ、最近妙な奴を見たらしいんだよ」

「妙な奴?」

「黒服に、口ひげの、背の高い男らしいんだ。なんか船を借りて沖に出たり、周辺の写真を撮ったりしていたらしいんだ。農林水産省の職員を名乗ってたらしいんだが、漁協の人も知らないらしい」

「それは魚の方と関係あんじゃないのか?」

「それともなんか違うらしいんだよな」

 小菅の話は要領を得なかった。



 斑鳩はまだ風浦町にいたようだ。調査は順調に進んでいるのか、はじめの頃よりも、明るい顔つきだった。

 また『くじらぐも』での待ち合わせとなった。

 斉木は斑鳩が来ると、打って変わって、急に明るくなった。

「たびたび、ありがとうございます!」

「いや、私としても、君たちから得られる情報は貴重だ」

 斉木は犬井の失踪の件を話す。そして他にも行方不明者がいること。晴彦は、黒服の男の話は黙っていた。関係ないと考えていた。

「“星祭り”は、君たちも知っているね」

「ええ」

 星祭りは、星宮神社で行われる夏祭りだ。七夕祭りとも呼ばれていた。

「今は七夕の時期にやっているみたいだが、古くは旧暦の十月、ちょうど今ごろの時期にやっていたみたいなんだ」

「なんでまた七月に?」

「七夕の信仰と結びついたんだろう。ただそうなったのは戦後からだ。それ以前の記録によると、新暦の十一月に行われている。明治以前は旧暦で行っていたようだ」

「そうなんですか」

 斑鳩は急に関係のない話をする。しかしそれは、最後に結びつく。

「その星祭りで、六十年に一度、『星ごもり』と呼ばれる儀式が行われる」

「ほしごもり?」

「いつから行われていたのか分からない。だが『星ごもり』に選ばれる人間は、“神賤”と呼ばれる。これは中世まで、神社などに仕える奴隷のことであり、江戸時代の穢多・非人と同じだ。そして神賤に選ばれる基準は、罪人であったり、クジなどによる神意で決められた」

「その『星ごもり』は、どんな祭りなんですか?」

「それはまだ分かっていない。祭りの夜は、決して外に出てはいけない。星宮神社の者にしか分からないが、岩井さんは養子で入った人だ。『星ごもり』の祭りは、戦争によって途絶えてしまった」

 それに斉木は残念そうにため息をもらす。

「ただ、その祭りのあと、三十人の神賤が、姿を消すことだけは分かっている」

 斉木も晴彦も息を呑む。

「神隠しですか……」

「そして君のおばあさんが子供の時に起きた集団失踪。それが前の『星ごもり』から六十年目であり、そして今、ちょうど『星ごもり』の年と重なっている」

 晴彦はぞっとした。犬井は誘拐されたのではなく、神隠しに遭ったというのか。

「その、神隠しに遭った人達は、帰ってきた人は――」

「いない。神賤の多くは罪人であり、そのまま出て行ったのかもしれない。同時に行方を気にする者はいなかった」

 だとして、犬井が何の罪を犯したのか。神隠しが事実だとして、それはいったいなんなのか。晴彦は頭が混乱した。

「神賤とは、そもそもが神に仕える存在で供物。古代、航海の際に、“持衰”という人間を乗せた。船が難破した時など、“持衰”を生贄として海に投げ込んだりした。神賤とは神の怒りを鎮める、人身御供だ」

「じゃあ奈緒子は、生贄として誘拐された?」

「分からない。だが今年が『星ごもり』なら、三十人は失踪する」

 まだこの異常事態は続くというのか。

「いったいどこに……?」

 斉木は唇が震えていた。

 斑鳩は両手を組み合わせ、唇を一度、きつく結ぶ。

「分からない。記録では、『星ごもりの宮』に集められたとある。星宮神社のことかと調べたが、儀式に使われたような場所は見つからなかった」

「ほしごもりのみや……」

 斉木は口の中で繰り返す。

 晴彦には途方もなく、関連づけて考えることができなかった。



 それぞれ『星ごもりの宮』を探すことに決まり、解散した。晴彦は斑鳩の連絡先を教えてもらったが、これ以上関わる気になれなかった。

 斑鳩は車、斉木は電車、晴彦は自転車で、別々に帰る。

 冬の日が出ている時間は短い。まだ昼を回ったばかりなのに、町の輪郭は淡かった。

 それから数日がすぎた。犬井の行方はいまだに分からない。そして次の行方不明者が出た。関連性は分からないが、噂になるには十分だった。

 ここ二週間で、六人が行方不明になっているらしい。新たな行方不明者の中に、日丘高校の生徒の兄弟がいた。ただでさえ人口が少ない。どこかしらで、町民の多くはつながっている。まだ氏子といった家柄も残っており、人々の結びつきは密接だ。晴彦の親戚を、遠い近いに関わらず集めれば、五十人以上になる。

 たった一人でも行方不明になれば騒ぎになるのに、六人ともなれば、さまざまな憶測が飛び交った。

 それと同時に、黒服の男の噂も広まっていた。

 実際に、クラスの中にも目撃者がいた。ただ噂の中の人物は、人によって、背が高かったり低かったり、一人だったり二人だったりする。仮にもし本物がいるとしても、ほとんどが見間違いではないだろうか。

 そんな中、宇宙人特集の広報紙はひっそり貼られ、それを見た誰かが、宇宙人の仕業ではないかと言い出したが、話題の域を出なかった。

 ただ誰も、本気で心配しているわけじゃない。次は自分じゃないかという恐れも、刺激でしかなかった。誰もがこの状況を楽しんでいた。

 晴彦も小菅と、

「黒服の奴は、暴力団じゃないか? 誘拐して、臓器を売ってるとか」

 小菅は真面目に考えながら、

「実は政府の人体実験とか」

「おいおい、こんな町でか?」

「工場排水に、隠さなければならない物質が混ざっていて、それで魚が大量に死んだ。それを偶然食べた人間がいて、それを政府が隠蔽しようとした」

「さすがに無理があるな」

 そんなある日、斉木からメールが来た。最近は委員会は開かれず、斉木も学校に、めったに顔を出していなかったようだ。

 メールには、「『星ごもりの宮』を見つけた」とあった。明日、調べに行くから峯火山に来い、とも続いていた。晴彦は返信しなかった。

 仮にあったとして、それが犬井につながると思えなかった。

 ただ間違いなく、この町では異常なことが起きている。それをすべて宇宙人のせいにするのは、安直に思えた。



 晴彦も義理堅いものだった。約束の時間より遅れて、峯火山の麓、以前三人で集合した、バス停に来た。直前に行くことをメールで送ったのだが、返信はない。さすがに怒らせてしまったようだ。

 すでに斉木は行った後だ。案外まだ周辺にいるかもしれない。晴彦はそこらに自転車をとめ、辺りを散策した。

 そして石段の下に、背を向けてたたずむ黒服の男がいた。晴彦の心臓は早鐘を打った。弾かれたように、物陰に隠れる。容姿は、最初に小菅が言っていたものに近い。背は高く、横から見た限り、口ひげを生やしている。体の線は細いが、姿勢がよかった。

 何かを待っているように、石段の上を見ていた。その上から、斑鳩が下りてくる。

 晴彦は寒気を覚えた。

 斑鳩は黒服の男に手を上げて、親しげに話しかけた。

 二人の会話は断片的に聞こえた。

「……宮は……うん……どうやら……」

 男は低い声で言う。

「……そこに……そうか……」

「……連れ去った……隠して……」

「……ああ……残念だが……」

 神隠しに関することを話しているのだろう。黒服の男は、口ひげをなでる仕草を見せ、

「……もはや誰も……戻ってはこない……」

 なぜそんなことを知っているのか。晴彦の中に確信が生まれた。一連の失踪事件の犯人は、この黒服の男か、斑鳩で、最悪は共犯なのだ。

 恐ろしくなり、その場をあとにする。斉木は、斑鳩と一緒にいない。もしかしたらすでに。怖くなり、自転車を取りに戻ると、斉木に電話をかける。

「ただいま電波の――」

 晴彦は戦慄した。斑鳩は、斉木を誘拐した。もしくは自分に近づいたため、消したのでは。その可能性に気づいても、晴彦にはどうすることもできない。

 警察に通報するか。信じてもらえるとは思えない。両親に話そう。とにかく家に帰らなければ。

 晴彦が全力で自転車をこいでいると、ケータイが鳴る。取り出すと、斉木からのメールだった。

「来ないと思って先に行ってた。星ごもりの宮は、祠だった」

 とだけ書いてあった。晴彦は安堵し、

「斑鳩博士が怪しいです。妙な黒服の男といました。気をつけてください」

 と返した。

 しかしそのことを、晴彦は後悔した。



 委員会に顔を出すと、相変わらず斉木は来ていなかった。代わりに斉木の友人の、二年生がいた。

「なあ、斉木と仲良い?」

「ええ、まあ」

「昨日からあいつと連絡がつかないんだよ。今日も学校来てないし。最近休みがちだから心配して、ちょくちょくメールしてたんだが。今日から行くっていうから、貸してたCD返してもらおうとしたら、メール返さないし、ずっと圏外なんだ。お前なんか知ってるか?」

 ここ最近の失踪事件は学校中の話題であり、斉木と連絡がつかないことを怪しんでいるのだ。

 晴彦は背筋に寒いものを感じながら、斉木のケータイに電話をかけた。再び、電話はつながらなくなっていた。

 斑鳩の存在が頭をよぎった。底知れぬ悪意が垣間見えた。

 間違いなく斑鳩は、この失踪事件に関わっている。



 晴彦が家に着いたのは、辺りがすっかり暗くなった頃だった。明るいうちに学校を出ても、着く頃には暗くなっている。その暗がりの中、見覚えのある車が、家の前に停まっていた。

 晴彦はぞっとした。それは斑鳩の車だった。

 車のドアが開く。

「お帰り」

 この時間になっても、斑鳩は相変わらずサングラスをかけていた。

「どうも……」

 声が震えた。

 斑鳩は気さくに話しかけてくる。

「君が帰ってくるのを待っていたんだ。少し時間いいかい?」

 断りたかった。しかし家の場所まで、ばれている。断ったとして、家族に何をされるか分からない。この男は卑怯だ。

 晴彦は意を決した。

「いいですよ」

 こちらも真実を知りたい。

「ああ、助かる。車に乗ってくれ。道すがら話すよ」

 晴彦は自転車を、わざと目立つようにとめ、斑鳩の車に乗り込んだ。あえて後部座席に乗る。斑鳩は何も言わなかった。

 そしてヘッドライトが、闇を切り裂き、エンジンのうなりが、静かな町中に響く。

 車は走り出した。

「斉木くんと連絡がつかないんだ」

 斑鳩は本題を切りだしてきた。晴彦は臆するも、踏み込む。

「あなたが誘拐したんじゃないですか?」

「私が? まさか」

「斉木先輩が失踪する直前、一緒にいたはずだ」

「ああ。一緒に『星ごもりの宮』を調べに行ったんだ」

「それだけじゃない。黒服の男も一緒にいた」

 それに斑鳩は少し驚いたようだ。

「佐藤氏か。彼はある情報組織のエージェントだ。私がこの町に来たのも、彼からコンタクトがあったからだ」

 怪しい話だった。

「いったい何のために、人を誘拐しているんですか? 人体実験が目的ですか?」

 小菅の受け売りだ。斑鳩は笑う。

「面白い話だね。しかし私が誘拐の犯人だというのは勘違いだ。私はむしろ、その真相を明らかにしようとしているんだ」

「その真相とは?」

 皮肉を込めて聞く。

「すぐに分かるさ。すべては『星ごもりの宮』にある」

 車は、闇の中、いっそう暗い影を落とす、峯火山を目指す。斑鳩はそれ以上語ろうとしなかった。



「なぜ六十年だと思うね?」

「何の話ですか?」

「『星ごもり』の話だよ」

 二人は真っ暗な、山道を登る。先頭は斑鳩だった。小太りの割には、軽快な足取りだった。

「さあ、知りません」

 その話自体信じていない。斑鳩は構わず続ける。

「もしも星と星の間を、旅する船がある。その船は通過する星で、食料を獲得していく。地球までの道のりが、六十年と決まっていたら? 効率的に食料を獲得する必要がある」

「宇宙人が人間を食料にするため、誘拐していると?」

「そう考えると筋が通らないかい? そしてもう一つ――」

 言いかけて、斑鳩は口を閉じる。

「ああ、着いた」

 そこには崩れ、苔の生えた、祠があった。

「これが『星ごもりの宮』だ。すっかり忘れ去られ、こうして打ち捨てられている」

「斉木先輩はどこなんですか?」

「宇宙人に会ってみたいと思わないかい?」

「斉木先輩は――」

「今日は『星ごもり』の夜、きっとここに来る」

「話を――」

 まばゆい光に、晴彦は言葉を失った。斑鳩は空を見上げている。晴彦は手をひさしにして、空を見た。

「嘘だろ……」

 昼の日差しよりも眩しく光る、巨大な円盤が、目の前にあった。

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