無給の家政係にされる前に、持参金証書を返して荒れ屋敷を二十四時間で我が家にします
「従妹が花嫁で、わたしは無料の家政係。ずいぶん具の偏った鍋ですこと」
ビョルン様の指が、執務机を二度叩いた。
「家政係ではない。トーヴェとの婚姻後も君の生活を保障すると言っている」
「賃金は?」
「家族に払うものではない」
「私室は?」
「使用人控室が空く」
「辞めたくなった場合の退去権は?」
「なぜ辞める必要がある」
なるほど。空っぽの鍋に蓋だけは立派だ。
トーヴェは花嫁用の真珠飾りを髪に挿し、私の椅子を食堂から運び出すよう使用人へ命じたばかりだった。献立、帳簿、使用人の賃金、雨漏りの修繕依頼は「お姉様のほうがお得意でしょう」と、机のこちら側へ残してある。
「三人で家族になれるのよ」
「安心して同じ鍋を囲めない人とは暮らさないことにしています」
私は婚約指輪を机へ置いた。
ビョルン様の指が、今度は三度鳴った。
「勝手は許さない。明日の正午までに別の居住契約を成立させられなければ、旧家の命令で君を連れ戻す」
「では、あと二十四時間ですね」
「マイヤ!」
「持参金証書もお返しします。あなたへの金銭請求も放棄します。これで、わたしの進路へ口を出す根拠はなくなります」
返事は待たなかった。ビョルン様は、私だけが相手なら返事など待たない方なので、お互いさまだ。
正午、私はヨルゲンと荒れ屋敷の前に立った。
蔦に呑まれた壁は灰白色、割れた窓は曇った銀、屋根には空と同じ色の穴が七つ。けれどヨルゲンは外壁を剥がし、柱を見て、槌で三度打った。
「骨は生きている」
彼が以前ビョルン様へ提出した構造修繕の見積もりは、玄関を金色に塗る予算を減らしたくないという理由で退けられている。家も人も、見えるところだけ飾れば働き続けると思っているらしい。建物は人間ほど遠慮深くないので、先に潰れる。
「フォルケ、雨仕舞いをお願いします。二十一時までです」
「四人でやる。青灰色の石板二百四十枚、樫の桟三十六本、銅釘八百本、安全縄二本。揃ってるな?」
「琥珀の櫛一本分、きっちり揃えました」
母からもらった櫛は、午後の光を閉じ込めた蜂蜜色だった。惜しくないと言えば嘘になる。だが髪は指でも梳ける。屋根は指では塞げない。世の中、優先順位である。
不足分は一か月払いの材料手形にし、ヨルゲンが保証署名を入れた。
四人が安全縄を張り、濡れた石板を剥がす。ヨルゲンは腐った桟だけを選んで落とし、私は下で枚数を読み、欠けのない石板を屋根へ送った。
「先に寝具を入れたいのですが」
「屋根が空を通すうちにシーツを敷けば、上等な寝具が上等な雑巾になります。却下です!」
「聞いただけだ!」
フォルケの怒鳴り声に、屋根の上で三人が笑った。
二十時四十八分、最後の石板が青灰色の鱗のように重なった。二十一時、雨粒が一つ落ち、傾斜を滑り、樋へ消えた。
フォルケは残った銅釘一本をヨルゲンへ放った。
「乾いた家の予備だ」
* * *
「木屑を一片でも残したら、麻布が食べます。木屑は食べても太りません。掃いて!」
二十一時からは、ラグンヒル率いる三人の番だった。
灰材の寝台枠十二台。麻縄二百八十八尋。乾燥葦の敷布団十二枚。生成りの麻シーツ二十四枚。
屋根が閉じて初めて、布を荷車から下ろせる。湿った庭を越えて運び込まれた生成りの布は、灯火の下で淡い金色を帯びていた。粗い麻なのに、今の私には宮廷の絹より美しい。絹では眠れないが、これは眠れる。
「一台目。縦、横、斜め。結び目は枠の下へ」
ラグンヒルの指は速い。太い麻縄が灰色の木枠を渡り、交差し、掌で叩かれるたび低い音を返した。
私は寝台へ一から十二まで札を結び、使用者を割り当てた。屋根職四人、寝具職三人、左官職四人、そしてヨルゲン。実際に働く十二人だけが立会人として認められる。名義だけ貸しても、敷居は鼻で笑うらしい。鼻があるかは知らないが。
六台目で、砂時計の上半分がほぼ空になった。
「一台ずつシーツを張りませんか。終わった感じが出ます」
「感じで寝台は支えられないよ。十二台すべての張力を確かめるまで布は禁止」
正論はだいたい腹立たしく、たいへん頼もしい。
縄を張る。叩く。緩んだ一辺を締め直す。木屑を掃く。葦を置きたい腕を止める。全台を二巡して、ようやくラグンヒルが顎を引いた。
「布幅、三尺二寸。端を揃えて」
生成りの麻がいっせいに広がった。
十二台目のシーツを張り終えると、ラグンヒルは親指を立てた。三時の砂時計には、黒い砂がまだひと筋だけ残っていた。
十二人が順に寝台へ横たわる。縄は鳴ったが、ほどけない。誰の背も床へ落ちなかった。
よし。家というものが、ようやく人間を横にしてくれた。
* * *
三時から八時半まで、左官職四人が壁を塞ぎ、床の泥を掻き出した。
ヒルドゥルが鏝を走らせるたび、濡れた灰色の壁が朝の光を受けて白くなる。窓を開け、戸を立て、粉塵を外へ追い出す。料理を先に始めれば、豆より漆喰を多く食べる羽目になる。カルシウムは足りても幸福が足りない。
「壁、乾いたぞ。共食検分だ!」
八時半、ヒルドゥルが蓋つき銅鍋を長卓の中央へ置いた。
乾燥豆三升、塩漬け肉二塊、玉葱二十四個、黒パン四斤。豆は肉の脂を吸って艶々と膨らみ、玉葱は煮崩れて琥珀色になっている。磨いた鍋の縁には、青灰色の屋根と生成りの布と、寝不足で少々ひどい十三人の顔が映った。
ひどい顔でも、煮込みの前では平等に期待する顔になる。
ヒルドゥルが十二杯を並べ、最後の一杯を抱えたまま私を見た。
「数を間違えました?」
「家主が抜けたら十二人分ではない」
十三杯目が私の前へ置かれた。
椅子は寄せ集めだった。背の高い椅子、脚を継いだ椅子、青い塗料が残る丸椅子。誰も上座を探さない。屋根から下りた手、縄で赤くなった手、漆喰の白い手が、同じ黒パンを割った。
同じ鍋を囲むなら働いた手を数える。
私は豆をひと匙すくった。熱い。塩気が強い。玉葱が甘い。
「うまいか?」
「二十四時間寝ていない人間へ温かい豆を出すのは反則です。だいたい何でもおいしくなります」
「もう一杯いるな」
「検分に必要なら仕方ありませんね!」
全員から匙で卓を叩かれた。必要ではないらしい。おかわりはした。
九時、アルネが到着した。
「条件は三つ。屋根。寝床。共食。順に見る」
彼は旧雨漏り箇所へ白布を三枚当てた。一枚目、乾いている。二枚目も白いまま。三枚目を押さえた指先にも水はつかなかった。
「雨仕舞い、成立」
次に十二台の寝台を調べる。二人ずつ組ませ、一台へ同時に腰掛けさせた。三台目でアルネ自身が上着を脱ぎ、ヨルゲンと並んで勢いよく腰を下ろす。
灰材の枠が低く鳴り、麻縄が二人分の重さを受け止めた。
「耐荷重、成立」
「公証人まで寝台を壊しにくるとは聞いてないよ」
ラグンヒルが腕を組む。
「壊れれば不成立だ」
「壊れなければ?」
「良い仕事だ」
ラグンヒルの口元が、針の先ほど持ち上がった。
十三の空椀も数えられた。鍋底には豆が三粒だけ残っていたが、ヒルドゥルが責任をもって片づけた。食べただけで公的検分へ貢献できる。私の得意分野が、ついに制度へ追いついた。
「共食、成立」
アルネは修繕台帳を開き、十二欄を長卓へ置いた。
「家格は書くな。実際に直した箇所だけ書け。立会人は実働者に限る」
一人ずつ、墨を取る。ヨルゲンは別の紙を二部並べ、短い条文を清書し始めた。私が覗こうとすると、彼は手で隠さず、そのまま書き続けた。
退去、財産、家事、病時。
読めたのはそこまでだった。
「ヨルゲン、それは?」
「あとで渡す」
「怪しい借金では」
「違う」
「では、怪しくない借金」
「借金でもない」
十時を少し回ったところで、玄関扉が壁へぶつかった。
「マイヤ、帰るぞ」
ビョルン様は旧家の紋章入り命令書を掲げていた。隣のトーヴェは薔薇色の外套に白狐の襟巻き、手には羽根扇。荒れ屋敷へ来る服装ではないが、働く予定がなければ正装でも困らない。
「職人も全員、こちらへ回せ。東棟の客室を婚礼までに整えさせる」
ビョルン様は私へ向けていた声量のまま言った。
誰も立たない。
フォルケは椅子の背へ腕を置いた。
「代金を払わない家の屋根へは上がらん」
「これは家同士の相談だ。職人が口を挟むことではない」
公証人と十二人を見た途端、ビョルン様の命令から私の名が消え、主語が家になった。便利な変身である。宴会芸なら拍手した。
トーヴェが扇の陰から笑う。
「お姉様、意地を張らないで。戻って献立を決めてくださればいいの。使用人の賃金表も、東棟の壁紙も、婚礼菓子の手配も残っているのよ」
「では、花嫁殿は何を担当する?」
ヒルドゥルが尋ねた。
「わたくしは、皆様をお迎えして——」
「石板は何枚いる?」
フォルケが重ねる。
「そういう細かなことは」
「寝台一台に縄は何尋?」
ラグンヒルも加わった。
トーヴェの扇が鼻先まで上がった。
ビョルン様は机がないので、代わりに命令書の端を指で叩いた。
「マイヤは婚約者だった私を捨て、家を捨てた女だ。旧家には連れ戻す権利がある」
自分がトーヴェを花嫁に選んだ件は、どうやら朝食と一緒に消化されたらしい。
「アルネ殿。これは家同士の——」
「ビョルン様」
敬称を戻した声へ、アルネは命令書を受け取った。
封蝋を見て、文面を一度読み、紙を裏返す。そのままビョルン様の胸へ返した。
「家政命令は、家政を命じた本人へ」
「何?」
「正午までは、マイヤの居住契約が成立するか否かだけが効力を持つ。賃金なし。私室なし。退去権なし。あなたの書面には居住保障が一項もない」
「旧家の慣例がある!」
「条文ではない」
アルネの声は平らだった。
「紙まで働かせて、ご自分はずいぶんお楽ですな」
フォルケが天井を見上げた。屋根職三人が揃って頷く。
ヨルゲンは作業予定板をビョルン様へ見せた。東棟の欄へ引かれていた仮線を、太い墨で消す。
「構造修繕の予約は失効。未払いの見積もりも再提出しない」
「待て。それでは婚礼に間に合わない」
十二人の誰も予定板へ手を伸ばさなかった。
これでビョルン様は私の無給労働を失い、ヨルゲンの予約を失い、ここにいる職人全員の信用を失った。よろしい。未払いの請求書は、まとめて届くと見栄えがいい。
「敷居起こしに入る」
十時半、ヨルゲンが玄関の古い木を外した。
削り直した樫の敷居一基を運び込み、その前へ粘土の環を置く。十二人は自分の工具を押し当てた。槌の角、鏝の縁、針の頭、鉋の刃。異なる痕が円をつなぎ、誰が実際に手を動かしたかを土へ残す。
私は持参金証書を広げた。
厚い羊皮紙には旧家の封印、金額、私の名。隣へ元婚約者に対する請求放棄書を置く。財産を返す。支援も受けない。その代わり、誰にも私の進路を買わせない。
「ビョルン様。お受け取りください」
「こんな荒れ屋敷と引き換えに、持参金を捨てるのか」
「いいえ。わたしを家政係にする権利と引き換えです」
アルネが受領欄を示した。
ビョルン様は動かなかった。
「受け取らなければ、公証人預かりとする」
アルネが封筒へ収め、受領印を押した。請求放棄書にも私が署名し、ビョルン様との間に残っていた金銭の線が切れた。
トーヴェが一歩、敷居を越えようとした。
「それなら、この家の一室をわたくしたちの別邸に——」
十二人が同時に工具を持ち上げた。
扇が閉じた。トーヴェの足も止まった。
ヨルゲンは屋根工程で残した銅釘一本を敷居の中央へ立て、槌を振り下ろした。
硬い音が一つ、家の骨へ走った。
十一時半。
「立会人。仕事と名を」
アルネが呼ぶ。
フォルケが最初に進み出た。
「屋根職フォルケ。北面七列を葺き、雨の道を閉じた」
石板を切った屋根職が名を告げ、東の欠けを埋めたと述べた。桟を替えた者が南面三本。安全縄を預かった者が西の棟を示す。
「ラグンヒル。寝具職。十二台の張力と布幅を揃えた」
枠を組んだ職人が名と六台の継ぎを告げ、縄を編んだ職人が残る六台の結び目を指した。
「左官職ヒルドゥル。壁四面を塞ぎ、十三杯を出した」
漆喰を練った者が名を、床を削った者が名を、窓際を仕上げた者が名を告げる。
最後にヨルゲンが敷居へ掌を置いた。
「大工ヨルゲン。柱を調べ、敷居を起こした」
十二の工具痕が淡く光った。
樫の木目の奥から、細い金色が湧く。春の若葉の緑、磨いた蜂蜜の黄、屋根を流れた雨の銀。光は絡み合い、敷居の上に小さな人影を作った。声は古い木を指で弾いたように澄んでいた。
「働いた手、十二。食べた椀、十三。最初の住まい手、マイヤ」
私の名だけが、家の内側で響いた。
ビョルン様が命令書を突き出す。
「その女は私の家の者だ!」
「契約外の者」
木目が波打った。
敷居から立ち上がった光がビョルン様とトーヴェの靴底を押し、二人を玄関の外へ滑らせる。ビョルン様は柱へ肩をぶつけ、トーヴェの白狐の襟巻きは濡れた蔦へ引っかかった。
扉が閉じた。
外から叩く音がしたが、樫は返事をしなかった。
うん。人の返事を待たなかった方には、家も返事をしない。実に筋が通っている。
けれど、誰も勝ち鬨を上げなかった。
ヒルドゥルは長卓へ戻り、空の椀を片づけた。ラグンヒルは曲がったシーツの端を直す。フォルケは濡れた靴を脱ぎ、戸口へ揃えた。
ヨルゲンが清書していた紙を二部、私の前へ差し出した。
「共同生活契約」
第一条。どちらも、理由を告げず退去できる。退去を妨げない。
第二条。持ち込んだ財産と稼いだ財産は、それぞれの名義に分ける。
第三条。炊事、洗濯、修繕、帳簿は仕事として記録し、担当者へ対価を払う。家族という言葉で無償にしない。
第四条。病気や負傷で働けない者の居住権は失効しない。
第五条。新しい同居人、部屋の用途、財産の処分は住まい手全員の同意で決める。
第六条。契約を解消しても、寝床と次の居所を確保するまで追い出さない。
最後に、同じ文が二部。私の一部と、ヨルゲンの一部。
「これは、誰が家主になる契約です?」
「全員」
「家事の命令権は?」
「ない。依頼と分担だけだ」
「わたしが出ていくと言ったら?」
「止めない」
「働けなくなったら?」
「住める」
ヨルゲンは私の顔を見て、それ以上は言わなかった。
「選ぶのは、あなたです」
十二人の顔が、雇われた職人の顔ではなくなっていた。
フォルケが自分の椅子を半歩ずらす。ラグンヒルが隣の椅子を引く。ヒルドゥルが長卓の端を押し、残る者たちも脚を鳴らして詰めた。
私の席が空いた。
その隣に、ヨルゲンの席も空いた。
誰も私を座らせようと腕を引かない。誰も署名欄へ指を押しつけない。ただ、漆喰の白い手も、縄で擦れた手も、石板の粉を残す手も、卓の上で待っている。
屋根は閉じた。十二人が眠れる。十三人で食べた。
それだけでは、まだ今夜の避難所だった。
私は椅子を引いた。
生成りの袖が、磨かれた卓へ触れる。窓から差す昼前の光が二部の契約書を照らし、黒い文字の間に金色の木目を落とした。
この人たちとなら同じ鍋から食べられる。
ペンを取る。
誰にも手を添えられず、自分の名を書いた。
ヨルゲンが隣で署名する。アルネが公証欄へ印を押す。十二人が立会欄へ工具痕を重ねた。
一拍遅れて、フォルケが拳で卓を叩いた。
ラグンヒルが指貫で叩く。ヒルドゥルが掌で叩く。十二の異なる音が重なり、屋根を葺く音より大きく、寝台の縄を弾く音より長く、家じゅうを走った。
「住まい手、十三」
敷居の精霊が告げた。
光の筋が床を渡り、十三脚分の場所を囲み、壁を上り、寝台の脚へ絡む。私とヨルゲンの名は、同じ調子で呼ばれた。
正午の鐘が鳴った。
一つ。旧家へ戻される期限が消えた。
二つ。私の席は空いたまま待っている。
三つ。明日働けなくても、ここで眠れる。
十二人が椅子を鳴らした。
私は自分の席へ座った。
* * *
数か月後、ビョルン様の屋敷は職人組合の安全検査を受け、東棟を閉鎖された。
金色の玄関と薔薇色の壁紙は残ったが、腐った梁は見栄では支えられない。未払いを知った使用人は契約を更新せず、職人も予約を受けなかった。トーヴェは花嫁の宝飾品と飾る部屋を手に入れ、その部屋の食卓を整える者を失った。
こちらの荒れ屋敷には、青灰色の屋根、蜂蜜色の木床、生成りの布、磨かれた銅鍋が揃った。
椅子は十三脚。
十二人は客ではない。ここに住む者、仕事から帰る者、隣室で大いびきをかく者、豆の塩加減へ遠慮なく文句を言う者になった。
雨の夜、屋根を叩く音で目が覚めた。
寝台は乾いている。枕も、掛布も、床へ脱いだ靴も乾いていた。壁の向こうから誰かの寝返りが聞こえ、廊下の先では敷居の木目が淡く光っている。
私はもう一度、布へ頬をつけた。
翌朝、長卓には十三人分の黒パンと卵、薄切りの塩漬け肉が並んだ。ヒルドゥルが十四個目の卵を鍋へ落とし、ラグンヒルが余分だと指摘し、フォルケが食べれば余分ではないと言い張る。
ヨルゲンは私の隣で、保存豆の袋を数えた。
「あと何日?」
「十五日。今日、二袋買えば二十一日です」
「買おう」
「玉葱も。二十四個では足りませんでした」
「それも」
雨はまだ降っている。
けれど朝食は温かく、私の椅子は今日もここにある。明日も帰る場所を、私はもう知っている。




