五 最終話
「殿下を病で公務が出来ない。代わりに俺が公務をこなせばサルバン公爵は殿下を王太子から廃嫡するように動くだろうと考えたんだ。殿下は妃殿下一筋だ。だったら別の人間を王太子に立て、娘を王太子妃に推挙した方が確実だから」
ルイドは私の手を握りながら話続ける。
「ただサリバン公爵の誤算はエリー、君の存在だ。当時まだ僕たちは婚約していなかった。でもそれは、周りが暗黙の了解として見ていたからなんだ。でもサルバン公爵は違った。君の事をしつこく聞いてくるからコードリアル侯爵にお願いして、領地で匿ってもらったんだよ。妃殿下の事もあったからね」
そうだったんだ・・私が知らないところで皆んなに守られていたんだ。
「サルバンは公爵の位を剥奪し、その後は貴族院にて判断をする。その他の貴族たちも降爵し領地も没収」
「その妻や子たちにも罰を与えねばなりませんね」
王妃様の言葉を聞き私は頭を上げてしまうと、目の前の妃殿下と目が合ってしまった。
妃殿下は
「エリーさん、何か仰りたいことがあるのですか?」
と聞いてきた。私なんかが王族の前で言葉を発しても良いのだろうか・・そう思っていたらルイドが優しく 聞かせて?と。
私は意を決して
「発言をお許しいただき、ありがとうございます。私は・・その、降爵されただけでも今後の生活を考えたら充分な罰だと思います。今までは爵位が守ってくれてた部分もありますので・・」
成人した子息令嬢にとっては立場が下がる事は致命傷に近い。逆にまだ成人前の子息令嬢たちには希望を持たせてあげたかった。
私の気持ちが通じたのか、それぞれの爵位は成人前の子息令嬢が成人したら譲ることで話し合いは終わった。
王族の方たちが部屋から退出すると、今までの緊張が解けたのか私はそのままソファーへ倒れ込んでしまった。
「エリー!?」
「ごめんなさい、緊張してたから・・」
私はルイドに支えられながら言葉を発したが、顔色も悪かったのだろう・・私を見たヴィンター公爵は
「エリーには何も伝えて無かったから疲労がピークに達したんだろう。ルイド、今夜は我が家の部屋で休ませてあげなさい。私たちは屋敷へ帰るから」
「父上ありがとうございます。お言葉に甘えそうさせていただきます」
王宮に部屋があるなんて流石王族の血が入ってるだけあるわね。なんて思っていたら
「エリーさん、また屋敷へ招待するわね。お話したい事もありますし、我が家に入る前に勉強してもらう事も沢山ありますから」
私は背筋を伸ばすと お待ちしております。と答えた。
お父様お母様。兄夫婦ともその場で別れた私とルイドは公爵家の部屋へ向かおうと立ち上がる。つもりでいたけれど
「ル、ルイド?大丈夫よ私、歩けるわ」
突然お姫様抱っこをされて驚きのあまりルイドにしがみ付いた。
「そんな顔色で言われても信用出来ないよ。部屋はここからそこまで離れていないし、このまま移動した方が早いよ」
そう言われてしまえば言い返せない。私はそのままルイドにしがみ付き顔を伏せる。
誰に会うか分からないしこんな事をされるのも慣れなくて恥ずかしい・・
ルイドの言う通り部屋にはすぐ着き、部屋にあるソファーへと優しく降ろされた。直ぐに侍女を呼ぶと私を託し、ルイドは部屋から出て行った。
「お嬢様お疲れ様で御座いました。お湯の準備も整っております」
流石王宮の侍女!私が言う前に準備が整っていた。私は侍女の言葉に甘えゆっくりと湯に浸かり、その日の疲れをしっかりと取った。
そして寝室へ通された私は やけに大きなベッドね。と思いながらもそのまま眠ってしまった・・
ベッドの中へ誰かが入って来た気配がする。そして私を後ろから優しく包み込むように抱きしめてきた。
本来なら恐怖で身体が硬くなるか、飛び起きて拒絶をするだろう・・でもそうしなかったのは、私の好きな香りに包まれているのも理由だ。
「ルイド?」
「ごめん、起こしちゃった?」
そう言いながら身体の向きを変え、ルイドに抱きついた。心から落ち着くルイドの香り・・
「エリー、本来なら式を挙げてからじゃないとダメだと分かってるけど・・」
「うん・・そうね。でも・・」
私は半分寝ぼけていたのだろう。
いや、絶対に寝ぼけていた!
「もう離れたくない・・」
考えるよりも先に口から出た言葉は、ルイドの我慢を簡単に壊してしまった。ようだ・・
翌朝、夜と同じように抱きしめられていたのだが・・
「ル、ルイド・・お願いだから服をちょうだい」
「なぜ?昨夜何度も言ったけど、俺たちは夫婦なんだよ。それに俺を煽ったのはエリーだ!責任は取ってもらわないと」
「わわ私は煽ったつもりは・・」
寝巻きを取ろうと手を伸ばせば優しく掴まれ、身体ごと引き寄せられる。
「諦めて?」
そんな風に優しく囁かれたら、誰だって簡単に堕ちてしまう・・
私はルイドの温もりに安心し、身を任せようとした瞬間 コンコンッ!!と扉をノックする音が・・
メイドのアンだった。
このアン実は公爵家のメイドで、ルイドが私を心配して付けてくれたのだった。今は公爵家で侍女教育を受けているらしい・・
「ルイド様、エリー様。王太子殿下並びに妃殿下より昼食を共にしようと言付かっております」
「・・・断って」「無理です!!」
ルイドの言葉に被せるように言ってきたアンは、これ以上は無理だと思ったのか 失礼します!と言って寝室へ入って来た。
約束の時間となり指定された場所へ向かうと、そこには陛下と殿下が座っていた。
私は慌てて頭を下げるがルイドは普通に私をエスコートし、椅子へと座らせた。
「今回は助かった!改めて礼を言わせてくれ弟よ!」
「やめて下さい」
「伯父上のおかげで妃を失わずに済みました!」
「それも止めて」
ルイドはハァァァと大きな溜息を吐く。私はそんなルイドの態度に冷や冷やしていて、どうして良いのか悩んでいた。
「エリーは聞いた?俺の出生の秘密」
私は黙って頷いた。
ルイドは そうか・・と言って、でも俺はヴィンター公爵家の息子だ!!と言い切った。
後日、公爵夫人から呼ばれた私とお母様は今、公爵家の庭でお茶を飲んでいる。
あの日、王宮で起きた事や次の日の事を二人に話すと、夫人が意を決した様に話した。
「ルイドは間違いなく前王の息子です。前王も本気の恋だったのだと思うの。でもね、相手には苦痛でしか無かった・・しかも公に出来ない子を身籠り、絶望しか無かったのよね。ルイドを産んで直ぐに亡くなったそうよ」
夫人は悲しそうに話し始めた・・
「庶子と言っても王様の子。誰も引き取らなかったの、子爵も王家も・・そんな時よ、主人が守る様に小さなルイドを連れて帰って来たのは」
一口お茶を飲む
「私たち夫婦には子供が授からなくてね、かと言って簡単に養子をもらう事も出来なくて悩んでいたの。ルイドは間違いなく王家の血筋。変な後ろ盾も無い子に私が手離せなくなってしまったのよ」
母親の子爵家には口止め料として、隣国へと渡ってもらった。今でも外交として働いているという。
「私たちが押し付けられたのでは無く、私たちが望んであの子を引き取ったの。だから誰にも渡したくないのよ」
そう言った微笑む夫人は、母の顔をしていた。
「エリーこっちにいたんだね。母上、お義母さん、エリーを連れて行っても?」
「まぁルイド!今は女同士の時間よ!」
「まあまあ夫人、ルイド様エリーをよろしくお願いしますね」
ルイドは笑顔で もちろん!と言うと、私の手を取る。
あと五日で私は正式にヴィンター公爵家の一員として世間に発表される。
「エリー、後悔してない?」
馬車へ乗り込むとルイドが不安気に聞いてくる。
私はクスッと笑うと優しくルイドに口づけをした。
「私はもうエリー・ヴィンター次期公爵夫人よ!この先も貴方とずっと一緒にいられるのよ!後悔よりも喜びでいっぱいだわ!」
ルイドに優しく抱きしめられながら、私たちは二人の屋敷へと帰る。
この先もずっと・・
読んでいただき、ありがとうございました!!
最後は少し長いですがそのまま投稿しました。
今は来月から連載予定の話を書き溜めています。
もしかしたら途中で短編を投稿するかも・・・です。
連載頑張りますので、良かったらそちらも読んでいただきたいと思います!!




