四
「ああ、そう言えば現王太子妃殿下は伯爵家出でしたなぁ」
「・・・」
「陛下、殿下の状態が悪い事はここにいる貴族なら皆知っている事です。殿下の症状を教えていただけないでしょうか」
「・・それでどうするつもりだ?王太子の事をここで話してサルバン公爵はどうするのだ?」
「殿下が公務に出られれば、今まで通りお支え致します。が、そうでなければ・・」
何が起こっているのか分からず、私はただルイドの手を握る事しか出来なかった。
他の貴族たちもサルバン公爵に付く者と、私の様にその場に立ち尽くす者と分かれている。
でも・・陛下やヴィンター公爵様、お父様やルイドはまるでこの事が分かっていたかのように落ち着いていて・・
「サルバン公爵は王太子を廃嫡し、そこにいるヴィンター公爵家のルイドに王太子として立たせろと申すか?」
「陛下の判断に従います。が、もしヴィンター公爵家ルイド様が王太子として立たれましたら、是非とも我が娘を王太子妃候補に挙げて頂きたく存じます」
「「「なっ!」」」
「ルイドはコードリアル侯爵家のエリー嬢と」
「それは公爵家の婚約者として・・ですが、王太子妃とはまた別でございましょう。調べましたがまだ正式に婚約もされていないとか?」
サルバン公爵はこれが狙いだったのか・・
もともと自身の娘を王太子妃として立たせたかったが、選ばれたのは現王太子妃殿下。
しかも伯爵家出のため納得出来なかった。
王太子殿下が体調不良を理由に公に顔を出さなかった時期と、サルバン公爵令嬢がデビューした時期は近い。
「そうだったのか・・ようやくわかった。なぜあの時王太子妃では無く王太子が倒れたのか・・」
王太子妃では無く王太子が倒れた?
陛下は一つ息を吐くと右手を挙げる。すると同時に騎士たちが会場に雪崩れ込み、サルバン公爵やその周りにいた貴族たちを一斉に捕らえた。
「サルバン、お主が王太子妃に出したお茶を王太子が間違えて飲んだのだ。その直後倒れしばらく意識が戻らなかった。今までは誰が王太子妃に毒を盛ったのか分からなかったが・・自分から出て来てくれたおかげで探す手間が省けた」
「何の事でしょう?私はただこれからの王家を心配して・・」
「それで何故、我が妃の命が狙われたのか説明してもらおうか?サルバン公爵。いや、サルバン卿」
突然現れた王太子殿下と妃殿下に会場の全員が驚きを隠せなかった。
王太子殿下はサルバン公爵の前まで来ると静かに見下ろしている。
妃殿下は王妃様の横へと移動すると椅子へ腰を下ろした。
「殿下!何かの間違いです!私が妃殿下の命を狙う理由がどこにあるのですか!」
「・・お前は以前から王妃には自身の娘を!と私に勧めてきたな?ずっと断っていたのだが・・まさか直接妃に手を出すとは・・」
「・・・」
「メイドは自害しており先を追う事が出来なかった。それでルイドに言われたのだ。私を危篤状態とし、ルイドを表に出せばまた動き出すだろう・・と。その通りになったな!礼を言うぞ、ルイド!」
ルイドは静かに頭を下げた。
「せっかく集まってもらったが、今夜はこれにて閉会とするが、この埋め合わせは後日連絡する」
陛下はそう言うと王妃陛下と共に下がって行った。
王女殿下も婚約者と共に下がり、残った私たちは 奥に部屋を用意したからと殿下に言われ移動した。
「ねぇルイド、何があったの?私は・・ルイドの側にいても良いの?」
サルバン公爵は私がルイドの隣に立つ事を良しとしていなかった。そう思う貴族たちもいた。
私は不安になりルイドへ直接聞いた。ルイドはとても驚いた顔をして
「何でそうなるの?当たり前だろ!俺はエリーとしか・・エリーは何にサインしたか覚えてる?」
何かを思い出したかのように聞いてきたルイドに、婚約でしょ?と答えた。婚姻と違って婚約は解消しやすいから。
「・・・エリー、サインをする際はちゃんと内容を確認しなきゃダメだよ・・。まぁ、解消もしないけどね」
側にいても良いのかな?と思いながら用意された部屋へと入った。
そこにはすでに両陛下をはじめ、王太子両殿下、ヴィンター公爵夫妻と私の両親と兄夫婦。そしてルイドと私。
私はルイドの隣に腰掛けるとそれを合図と陛下が話始めた。
「まずはヴィンター公爵とコードリアル侯爵、それからルイドには大変助けられた。礼を言う」
「いえ、まさか妃殿下の命を直接狙ってくるとは思ってもおらず、こちらこそ申し訳ありませんでした」
公爵さまが両殿下に頭を下げた。
「いや、前々からサルバンがしつこく、いつかはこうなっていたと思う。私が断り続けたのもいけなかったのだろうが・・」
妃殿下と目を合わせた殿下。すると妃殿下が私を見て頭を下げた。私は驚いて頭を上げてくださいませ!と声を出す。
「ですが・・不安になられたのではありませんか?聞けばヴィンター卿がデビューしたら直ぐにでも婚約する事になっていたと・・」
「確かに不安で寂しくはありましたが、今はこうして隣にいられますし・・大丈夫です!」
この返事が正解かな?と思いながらも正しい答えが分からず言ってしまった。
隣のルイドは嬉しそうな顔をしている。
結局サルバン公爵が自身の娘を王太子妃に立てたいが為に起こした事だったと・・説明を受けた。
始めは王太子妃の命を直接狙ったが誤って殿下が口にしてしまい倒れた。
症状は思っていたよりも軽かったが、犯人もわからない状態でいればまた妃殿下の命が狙われる。
その時お見舞いに来たヴィンター公爵夫妻とルイドに協力を求めた事が始まりだったと・・
次でラストです!




