エンディング アサヒミナの神子
「う〜ん! やっぱりおいひい!」
蜜団子を頬張り、サクヤは恍惚とする。
事件後、三人はアサヒミナへ帰り丸一日眠った。
町民はヒナタとサクヤが無事に帰ったことに安堵する傍ら、堕天使のミツキに対しては素直に祝福できない現状である。
「はいサクヤちゃん、おかわりあるよ。ミツキちゃんもほら、お茶のおかわりね!」
「ありがとうおばさん!」
「もう、口に食べ物入れたまま喋らないの。ごめんねおばさん、こんな時にいっぱい作ってもらって」
「いいのいいの! むしろ、こんな時には甘い物が必要なのよ!」
まだアサヒミナは荒れた状態で、町民総出で復興作業をしている。団子屋のおばさんは「腹が減っては作業はできない」と言い、無償で配布をはじめた。
「それにしてもサクヤちゃんもヒナタちゃんも無事でよかったわぁ。ミツキちゃんはヒーローね!」
「そんな、私は別に……」
「ミィはすごかったよ! こう、剣をぶんぶんってね!」
「こら、串を振り回さない」
「それぐらいすごかったの! ね、ヒナねぇ! ……あれ、ヒナねぇは?」
周りを見渡すが、ヒナタの姿が見えない。先程まで復興作業をしていたはずなので、遠くには行ってはいないだろうが心配だ。
「ヒナタちゃんなら広場の方へ行ってたわよ」
おばさんがさらっと答えた。
「作業中にケガした人が出たってね。それで走って行っちゃった」
「ヒナ……」
少し遅れて、広場の方から驚きと喜びが交じった声が上がった。魔法を使ったのだろう。
「ヒナねぇすごいねぇ」
「え?」
「魔法を隠していたってことは、知られたくなかったってことだよね? なのに、ああやって人前で使うなんて、すごい勇気が必要だと思うんだ」
「……意外と人を見てるんだ、サクヤって」
「意外とってなに!?」
談笑に花を咲かしている間に、件の魔法使いが輪に入ってきた。
「どうしたの、楽しそうな話して」
「あ、ヒナ」
「聞いてヒナねぇ! ミィってばひどいの!」
「まぁ、ミツキ〜? サクヤちゃんをいじめないでね」
「違うって!」
「ふふ、わかっているわ。……」
彼女は微笑むが、すぐに真剣な面持ちになる。
「ヒナ……やっぱり人前で魔法を使うのは抵抗あるんだね」
「……あたし、この力が怖かったわ。……ううん、今でも、怖い」
自身の手を見つめながら放った。
「強すぎる力は光にも闇にもなる。あたしの癒しの光だって、魔力がない人から見たら、恐怖の対象になりかねないと思うわ」
「そんな! ヒナねぇはみんなのために使ってるんだよ!」
「それでもよ。人知を超えた力は理解されず、神の力、悪魔の力……そんな風に捉えられるわ」
「……」
「だからこそ、あたしの力は正しく使う。この力で、誰も差別されない世界を作ってみせる」
「誰も差別されない……?」
「ええ、堕天使も、人間も。誰もが互いを認め合える世界よ」
「そんな無茶な、アサヒミナだけでも難しいよ」
「できるわ。その為には────種が芽吹くのを待っているだけじゃ綺麗な花は咲かない……」
ヒナタは掌から魔法の花を咲かせた。しかし、すぐに燃え散った。
「それでも、種は蒔かれてしまった。歪に咲き散る前に、あたしが責任を持って咲かせてみせる」
「それがヒナねぇの夢?」
「目標、かしら。世界中の人を照らして、健全な花を咲かせる……あたしの魔法なら、そんなこともできるはず。もちろん、サクヤちゃんのことも綺麗に咲かせてみせるわ」
「ううん、わたしもヒナねぇの夢を手伝う! 世界中を花いっぱい咲かせるんだもん、わたしだってやるよ!」
「サクヤちゃん……」
「ヒナ、私だっているよ。堕天使でも、人と仲良くなれる。私たちの絆を世界に見せつけてやろうよ」
「ミツキ……」
彼女は顔を伏せ、瞳を閉じた。名残惜しそうに顔を上げ、ふたりの顔を見渡した。決心がついたような真剣な面持ちだ。
「ありがとう、サクヤちゃん、ミツキ。やりましょう、あたし達で!」
「うんっ!」
「うん────父さん、見ていてね」
ミツキは首飾りに触れ、祈りを込めるように呟く。いつかきっと、誰もが互いを、自身を認め合えるような世界を目指して────。
ご覧いただきありがとうございました。これにて完結です。




