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第15話 月は太陽と輝き、太陽は月を癒す

「わたしだってやれたんだ! ミィ、ヒナねぇ! 見てた!?」


「は、はは……! お手柄だよ、サクヤ」


「ええ……それにしても、どうやって窓から? ここは高いけれど……」


「それはね! おじさんがね! ね! おじさん!」


 上機嫌のままラセツに近づき、手を握って上下に振る。


「わしがサクヤに風を纏わせた。簡易的だが空を飛ぶことができる」


「うん! すごかったの! こう、びゅー! って感じでね!」


「風で空を……そんな使い方があるんだ」


「うむ……"黒麒麟"なら可能だ」


「……ねえラセツ」


「──ラセツさん、というのですね」


 見守っていたヒナタが間に入り、ラセツの顔──鬼の面を見つめる。


「ミツキに協力してくれたことや、サクヤちゃんを守ってくれたことに感謝いたします。しかし、あなたは何者ですか」


「……ヒナ、ラセツはね──」


「ごめんねミツキ。少しだけ待ってもらってもいい?」


 表面上は穏やかだが、声が少し震えている。


「あなたは……あなたは、ミツキの……」


「……よくわかったな」


「やはりそうなんですね……魔法を使うようになってから、色々なことを感じやすくなったんです。ミツキが救いに来たことや……あなたの、力にも」


「──……そうか」


「……ねぇ、ミツキ、あたしね……あなたにずっと謝りたいことがあったの」


 ヒナタはミツキに向き直り、じっと目を見つめる。


「10年前、あなたのお父さま……カゲツおじさまが亡くなったとき……あたしも近くにいたの」


「……」


「あたしがうまく力を使えていれば、おじさまは……。いいえ、ミツキだって攫われることはなかったと思う……だから……」


「『だからごめんなさい』って?」


「ええ……ごめんなさい、あたしがおじさまを殺したようなものだわ」


「……父さんが亡くなったのは私が攫われたせいだよ。もっというなら反堕天使過激派の……いや、こういう時代のせいかもね」


「ミツキ……」


「ヒナは私を助けようとしてたんでしょ? なら、感謝しかないよ」


 ミツキは微笑み、右手でヒナタの頬を触る。ヒナタは一瞬目を見開き、恐る恐る差し出された右手を掴む。


「あたしは……あなたを護りたかった……いいえ、護りたいの……! 10年前から、ずっと! なのにあたしは……っ! おめおめとカマンセーヌに付いていき、あまつさえサクヤちゃんまで巻き込んで……!! 挙句の果てに魔法もうまく扱えないで、より危険を晒すなんて、あたしは、あたしは……っ!!」


 両手でミツキの右手を包み、涙ながらに語る。胸に閉じ込めていた想いは、封が切れたように溢れ出していく。


「いいんだよ、こうやって救えたんだから」


 ミツキは左手で彼女の頭を包み、胸に抱き寄せて、子供をあやすように優しく囁く。


「ありがとう、ずっと側に居てくれて。ヒナが居たから、アサヒミナでも楽しく過ごせるんだよ」


「……っ! 怖かった……! 身体に宿る魔力も、ミツキに嫌われることも……!」


「大好きだよ、ヒナ」


「ミツキ……っ!」


 瞬間。ヒナタの胸からオレンジ色の暖かい光が溢れ出る。ふたりがそれを見つめると、光がどんどん広がっていく。


「これは……?」


 光を浴びると傷が癒えていく。昼下がりに縁側でゆっくりしている時のような暖かい光だ。光は櫓を抜け、夜空の果てまで駆けていった。


「凄い、凄いよヒナ!」


「これは……あたしが……?」


「そうだよ! 魔法は破壊だけじゃない……こうやって癒すことだってできるんだよ!」


「あたしが……! こんなこともできるなんて……!」


 あの日の炎は全てを燃やした。けれど、今は違う。自身と向き合えば、見えてくるものも変わった。

 10年間悩み続けていた問題が、ミツキのおかげで解決した。ヒナタはそれが嬉しくて、泣きながら笑った。

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