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第11話 太陽は落ちず、月は昇る

「きゃっ!」


 ヒナタは壁際に追い込まれ、顔のすぐ横に大剣を差し込まれた。部屋の壁はほとんど黒く焦げ、床は小火が残っている。


「よく健闘したが、ここまでだな」


 ダルシアンは体を大きく広げ、逃げ場を潰していく。彼女は恨めしく自分の手を睨む。


「どうして力がうまく使えないの……!」


「敗因は三つある。一つ目は単純に実戦不足、攻撃が単調すぎだ。二つ目は魔法を隠してきた人間がいきなりうまく使えるわけがない。そして三つ目。お友達を気にして本気で魔法を使わなかったことだ。制御できずに全てを壊しかねないからな」


「……」


「日々の鍛錬が勝敗を分けるってことを覚えておきな」


「よくやったダルシアン!」


 彼の後ろからカマンセーヌが近づき、ヒナタの顔を覗き込む。


「まったく、とんだ余興だよ。魔法の使い方が学生以下だなんて……これだから田舎者は困るよ」


「ふふっ……そんな田舎者を求めているのは誰かしら?」


 貴族は舌を鳴らし、彼女の頬を思い切り掴む。


「いい加減にしろ! あまりボクを怒らせるな! さっさとその力を寄越すか協力しろ!」


「わ、わかったわ……」


「ほう、ようやくわかってくれたか」


 彼は手を離し、ダルシアンに剣を降ろすよう促す。

 ヒナタは少し咳込み、息を吐く。


「けほっけほっ……! ただひとつ、聞かせてほしいの」


「なんだ、言ってみろ」


「あたしの力を、どうするつもり?」


「さっき言った通りだよ。ボクの力を正当に評価してもらうためさ」


 カマンセーヌは腕を組み、語り始める。


「栄光あるカマンセーヌ家に生まれながら誰もボクを見ようともしない。評価されるのはいつも過激なことをして目立つ兄や姉ばかりだ! ボクには魔法の才能だって人の上に立つ才能もあるのに!」


「それであたしの力を使って、『自分には強大な力がある』って思いたいの?」


「キミを従えるほどの『実力者』と言ってほしいね」


「その理屈だと、あなたを評価する人はいないわ」


「だからこそ、アスガルドの領土を広げようとしているんだ。これこそが『力を正しく使う』ということなんだよ」


「……だから大陸を統一しようだなんて大それたことを(うそぶ)くのね」


「大それた話かどうかは、すぐに分かるさ」


 カマンセーヌは手を差し出した。ヒナタはその手をじっと見つめる。


「……そうね、よく分かったわ」


 彼女は自身の右手をゆっくりと宙に上げていく。


「あなたみたいな小者には協力しないってことが!」


 ヒナタは彼の頬を思いっ切り引っ叩いた。あまりの衝撃に彼は目を白黒させ、後ろにいるダルシアンは思わず感心した。


「あなたは結局力を誇示したいだけじゃない! 力を持つことがどういうことか、まるで分かっていない!」


「なっ! なにが分かっていないだ! キミほどの力を持った人間が、なにもしないことこそが『力を無駄にしている』んだ!」


「それなら、あたしはこの力を無駄にしない! もっと別のやり方で使わせてもらうわ!」


「くそっ! もういい! ダルシアン──」


『ヒナァァァアアア!!』


 声と同時に、大きな音を立て扉が開いた。いや、開いたのではない。蹴破られた。

 赤い瞳の少女──ミツキが息を切らせながら室内へ入り、周りを見渡す。しかしすぐに視線は交わり、両者の顔に花が咲いた。


「ヒナ!」


「ミツキ……!」

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