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【毎日・昼まえ・更新したい】ぼくのホーム オフィスには 人間きぶんの 猫が2匹いる  作者: 常に移動する点P


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【1/21】名乗るほどのモノじゃぁ、ござんせん

「俺の後ろに立つんじゃねぇ」

「チョー、気持ちいい」

「殴ったね、父さんにもぶたれたことないのに」

「お前はもう死んでいる」

「クリリンのことかぁ!」

生きてるうちに言いたい言い回しってのがある。僕はそのチャンスを伺いながら日々生きていると言っても過言ではない。さりとて、なかなかそんな状況に遭遇できるものではないのだ。決め台詞的なんかは特にだけども、一生に一回言えるかどうかだ。大抵の人は、決め台詞なんてものに縁もなく死んでいくのだ。


自宅で延々とコピーを書き、ほっと一息。もう17時。高校生の息子が学校から帰って来た。不愛想に「ただぃっなぁ」とただいまの超活用形で、聞き取れるぐらいの発生の彼が、「おとーーーさん」とドアを閉じるなり言い放った。なんだなんだと、猫二匹も宅配便のお兄さん以上に怯え戸惑った。もちろん僕も戸惑った。


「なに?」と玄関に駆け寄る。

「あの、ドンツキの部屋のうちはマンションなのだ、ほら門の奥に座ってる人がいる。どこのお婆さんやろか?」と息子。

息子は視力が2.0、僕は0.7(眼鏡着)、見えない。見えないけど。

「お父さん、見てきたら?」とキラーパスで無茶ぶり上官のごとく指示を出す息子。


「えぇー、なんか怖いやん。死んではったら、お父さん第一発見者やろ。風呂わかしてるのに」

「相変わらず、クズですねぇー」と息子。


仕方なく、スニーカー履いてドア開けてドンツキまで進んだ。ウィザードリィのダンジョンを進むか如く。一歩一歩に緊張感が走る。もし襲い掛かられたらどうしよう。というか、ゾンビの可能性はないだろうか。だいたい、こういうところ油断してるやつが最初に噛まれて、感染を広げるってなぁ。


門扉にたどり着く、見たことのあるお婆さんだ。マンションには廊下→玄関ドアのパンピー家もあれば、廊下→門扉→ミニエントランス→ドアのリッチ家もある。このミニエントランスでぐったりしているお婆さん。恐る恐る声をかける。


このときどう呼びかければいいのか。僕は51歳で、お婆さんはどう見ても80歳を越えてそう。ガッチリしてるお婆さんで、でも70代というには老けている。


・おばあちゃん:「なんか失礼だ」と、危機管理センターが言う

・お母さん:「小学校の先生間違って呼ぶパターンやな」と、同級生が言う

・おねえさん:「間違ってないけど違うなぁ」と、黒服が言う


段階的にどの声で反応するか、危機管理センターの反対を押し切って

おばあちゃん→お母さん→おねえさんの順で呼びかけに反応があるか試す。

「おばあちゃん、おばあちゃん、大丈夫?」反応がない

「お母さん、お母さん、大丈夫?」ピクリと

「おねえさん」すくっと目を覚ました。


スマホを握りしめながら救急車呼ぶ準備しながらの、ヒヤヒヤ。こういう時に限って管理人は業務終了で帰宅しているし、廊下には誰もいない。


「あぁ、おおきに」

「このマンションに住んでるものですが、どうしたんですか?おねえさん」

「あのな、玄関の鍵があかへんねん」

「玄関の鍵が開かない?」

おばあちゃん(おねえさん)は鍵を取り出して、ドアのカギ穴に突っ込んだが回らない。僕も試してみたが入るだけで回らない。マンションの鍵であることは間違いないし、このおばあちゃんはゴミ捨ての時に見かけたことがある。でも、僕と同じフロアじゃァない気がする。


「フロアまちがってるんちゃう?」

「そんなことあるかいな。ここ二十年住んでるんやで」

そりゃそうだ。酔っぱらって違うフロアにエレベーターで降りたことはあるが、そうでもなければなぁ。。。


マンションあるあるだが、たいていドア前には表札が付いていない。部屋番号だけ。だからこの部屋の住人の名前がわからない。待てよ。そもそも、おばあちゃんの名前もわからない、知らない。


「あの、おねえさんお名前教えてもらえる?」

「■■(仮名)いいますねん」

僕はおばあちゃんをその場に置いて、マンションの郵便受けに。■■の苗字を探した。うーむ、フロアが違う。全然違う。大急ぎで戻り、おばあちゃんに説明する。


「おねえさん、このフロアちゃうね。三つ上の■■さんやね。」

「そんなことあるかいな。え?ほんまに?」

おばあちゃん(おねえさん)の手をとり、立たせてエレベーターまで連れて行く。■■さんのお部屋らしき前まで到着。鍵を差し込みまわすと、開いた!


おばあちゃん大感動。家に帰って来ただけの話だが、買い物帰りのグラタンソースがチラ見えしてる。今日はグラタンなのか。


「兄ちゃん、ありがとなぁ。ほんまおおきにやで」

「いえいえ、じゃぁこれで」

「ちょっと、兄ちゃん、名前教えてんか。主人とお礼に行きたいし」


「いやぁ~(タメ)、名乗るほどのモノじゃぁ~(タメ)、ござんせん」


言いました!出ました決め台詞。村を救った人にしか許されないあの台詞。51年目で達成するという快挙!いいことすると気持ちがいいもんだ、と妻に話すと「だいぶ悪いこともしてるしねぇ、帳消しになるといいね」と。まだまだ、名乗らずの善行を続けなければならないらしいな、今生は。


追伸)

「いやぁ~(タメ)、名乗るほどのモノじゃぁ~(タメ)、ござんせん」

と決めたあと、少し振り返るとおばあちゃん身体が冷えていたこともあって早々にお部屋に入られました。気を付けてね。


エピローグ的なもの

(おわり)

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