【1/16】適当にこなす人
本棚を買うことにした。読んだ本は適宜、売ったり捨てたりしているのだが、キープ枠に入るものもある。老後に読もう、なんていうあり得ない未来遺産を自分に送るものだから、本がなかなか減らない。むしろ、街に出るとせっかくだということで、3000円分ぐらい文庫を買う。すると、3~4冊ぐらい買えてしまい、減るよりも増えるほうが勝ってしまう。
つまり、本が増殖するという現象が起きている。
「そんな馬鹿なことばかり言ってないで、本棚買ってやるからよぉ、本を整理しなッ」と無頼漢な妻。
君の方が本多いじゃないか、と言うと、アンタの本はクダラナインダヨ!なんて、挑発されてしまう。ここで挑発に乗ると、本棚を買ってもらえなくなるかもしれない。いけないいけない。妻の言うことを、スンと受け止め、強制的に腹落ちさせる。
で、本を整理することとなったのだ。
読んだ本、これから読む本、しばらく読むつもりのない本、読んだかどうかわからない本、いろいろある。そのなかに、人から借りた本、ってのが紛れ込んでいる。
捨てるにも捨てられないのだが、返そうにも連絡先を知らないのだ。昔の同僚で、連絡先を知らずに借りた本。本好きとしては、未返却とは大失態なのだが、捨てるのも売るのもかといって、持ち続けるのもなんだか尻の座りが悪い。
ということで、おそらく共通の知人であるA氏に連絡して、渡していただくこととした。
A氏は、以前の職場の同僚で、本の貸主とも同じ職場にいる。年末に飲みににと誘った。A氏とは6年ぶりぐらいの再会だった。
そこで、そこそこ値打ちのありそうな本でもあるので、「できれば手渡しでお願い」と頼んだ。
「いいっすよ」と軽い。この人は、いつも軽い。頼み事を頼んだ額面通りに遂行してもらえた記憶があまりない。不安だが、頼むしかないのだ。
「直接返したらいいじゃないっすか」とA氏。
連絡先知らないし、それを人づてで聞くのも、今時「何ハラ」になるのかわからない。そもそも、個人情報の取り扱いってやつなんだから、電話番号なんかは、センシティブなのだ。
「いや、連絡先しらんから。頼みますわ」とねじ込んだ。
居酒屋でほどほどに飲み、9時過ぎには終えた。駅で別れて、追いLINEを。
「今日はありがとう。本、頼むね」と伝えると
しばらくして
「本、居酒屋に忘れてました」と。
カバンを入れる箱みたいなのに、入れっぱなしにしていたらし。ほぉおお。心配やな。
それが年末のこと。そして、年もあけ、A氏からLINEが。
「あけましておめでとうございます。本、社内便で送っておきました」と。
そうか、社内便か。それな、たまに違う支店にいくんだよな。それ」
本が正しく帰っていったのかはわからない。本を入れた封筒のベロに、「長いこと借りててすみません」とメモ書きしておいた。
もちろんのこと、本を貸してくれた人、からは連絡はない。連絡先を知らないのだから。僕もわざわざ連絡先を同封することもしなかった。ただ、本を返しておきたかったのだ。
というのも、6年前に本を借りたのち、仲違いをしたのだ。そのまま僕は職場を辞めてしまった。連絡先の交換自体をしていなかったのもあり、どうにも本を返せず、時間ばかりが過ぎたということだ。
さて、振り返るにやはり、A氏は適当だなぁと思う。頼み事をしてくれたんだからいいじゃん、ならオマエガ返せよなんとかして、というご批判もあろうかと思うが、A氏と本の貸主は、勤務場所が違えど会うこともあるのだから、手渡しして欲しかったなぁと思う。




