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白桜高校ゲーム部3

 さて、キャラクタークリエイトである。


 容姿なんかは、他のゲームでも使っているプリセットのものを流用すれば良い。

 名前も共通のマウスシリーズ……俺がソロのネズミと呼ばれる所以である。

 ソロだとマウスレスと名乗ることが多いけど、今回はマルチ前提だから、エクスマウスで決定だ。

 サクサク。


 ここから悩ませるのがエタソンだ。

 このゲーム、スタート時の立場をある程度選べる。


 冒険者とか騎士、平民や貴族、モンスターからのスタートもできる。

 モンスターは俺が辞めた後に追加された要素のようだ。何これめっちゃ面白そう。

 これでプレイしたいんだが、いいかな?


 さっとヘッドギアのコミュニケーション機能を呼び出して、今回の国盗り主催者が立ち上げたグループチャットを確認する。

 必要な条件を上げておく、とのことだったが……。あった、あった。

 国盗り梟雄として一歩を踏み出そうとする我等がホスト、ゲーマーネーム・ユッキー様のメッセージだ。


『ユッキー:キャラクリの縛りについて! とりあえず、好きなの選んでいいかな? あんまりどこかの派閥に所属していない感じだと、あたしと合流が早く出来てよしってなるけど、合流遅れても良いとか影から支援するとかなら、派閥も縛りなしです。一応選択前に報告をお願いしまーす』


 思ったより条件が緩い。

 場合によっては、ゲームホストが用意した陣営でスタートを依頼されるかもと思っていた。これなら、意外と魔物スタートも許されるかもしれぬ。

 確認してみよう。


『マウス:魔物スタートはありですか?』

『ユッキー:一万パーセントNGです』


 許されなかった。

 ていうか、レス早いな!

 そう思ったら、他の国盗り部員も丁度エタソンのインストールからキャラクリに入っていたようで、次々と俺へのツッコミが飛んでくる。


『ユッキー:流石に魔物スタートはね、全員魔物スタートとかにしないと、合流が遅くなっちゃう。そしてあたしは絶対に魔物やりたくない』

『シシ丸:せんせー、国盗りだっつってんのに国落とししようとしている奴がいまーす。社会不適合の邪悪はキレイキレイしましょー?』

『ヘキサ:マルチやるって言ったなら、もうちょっと協力しやすいプレイを心掛けて』

『塩胡椒:ええと、あの、魔物として国に一発入れて、偉い人を混乱させるとかそういう、外部協力者的な? それなら、なんとか、そういう、そう、ワンチャン?』

『シシ丸:ないだろ! 国盗りなんだから、いかに国を傷つけずに玉座を奪うのか、が楽しみなんじゃねえの!?』

『マウス:組織乗っ取りへの一家言。貫禄の腹黒。流石だわー、そこに痺れて引くわー』

『シシ丸:ネズミィイイイ! 炎上させるぞぉおおおお!!』

『塩胡椒:けんかやめて』

『ヘキサ:この二人は放っておきなさい。マウス(ネズミ)シシ丸(ネコ)だから相性悪いのは知っているだろう』


 うむ、いつも通りのやり取りだ。

 隙を見つけては突っかかって来てキレ芸RTAに挑戦するシシ丸。

 我がゲーム部に降臨したナチュラルセイントお塩。

 冷静と冷徹の狭間で常識を語るヘキサ。


『ユッキー:いや、国盗りって語呂がいい感じだっただけで、別に国興しでも領地開拓でも征服でもいいんだけどね』


 そして、楽しいことが大好き、本能で刹那を駆け抜ける先導者(プロメテウス)ユッキー。


『シシ丸:えっ』

『シシ丸:待って嘘でしょ』

 この先導者、瞬間瞬間を感覚で生きているので、シシ丸みたいな深読み好きとはすこぶる相性が悪い。

 仲は良いんだけど、こういう会話で度々事故を起こす。


 国盗り一家言を高々と披露しておいて、ホストからハシゴを外されたシシ丸の慌てっぷりが、デジタルなフォント越しにも感じられる。


『塩胡椒:確かに国盗りって言いやすいですね』

『ヘキサ:ユッキーは雰囲気で言葉を使うから、こういうこともある』


 ここでフォローするか、スルーするのが優しいゲーム部員。


『マウス:国盗りなんだから、いかに国を傷つけずに玉座を奪うのが楽しみ(`・ω・´)』


 煽りに行くのが楽しいゲーム部員だぞ。皆も楽しい部員を目指そうね!


『シシ丸:キエエエエエエエネズミイイイイイイイ!!!!』


 わざわざ発狂してますメッセージを送って来るんだから、シシ丸もこのやり取りが好きだと思う。……今度、お茶でも奢りながらちゃんと聞いてみよう。

 本気で嫌がってたら悪いもんな。


 ちなみに、今回の国盗り(?)面子を、ゲーム能力面で分析すると、男女比が二対三という女子力が高いパーティ構成だ。

 女子力最強のお塩は男子なんだけどね。


『マウス:で、魔物スタートオッケーなんでしたよね?』

『ユッキー:ダメって言ったよね!?』


 ちっ、流れで誤魔化せなかったか……。


『マウス:ごめん、話の流れが速くてするっと頭から抜けてた』

『ユッキー:流石にあたしもそれは騙されないからね?』

『マウス:ちぇー。じゃあ、何スタートにしようかな』


 駆け上がれスラム街のスターダム再びとか?

 いや、アウトロー路線なら暗殺者も面白そうだ。国盗りって言うなら一度は必要だよね、暗殺。

 早速、キャラクリで暗殺者の詳細を調べてみる。


 隠密作戦は苦手だけど、殲滅は得意なんだ。

 目撃者全員が沈黙するから、結果的に俺は暗殺のプロフェッショナルと言って良いだろう。


『ヘキサ:マウスはソロプレイに慣れ過ぎてズレがひどい。目を離すと何をしだすか不安だから、マウスは最速でユッキーと合流できるようにしておこうか』

『シシ丸:流石ヘキサ、それ名案』

『塩胡椒:良いと思います』


 え。いや、暗殺者……。

 暗殺組織を抜けた暗殺者が、追っ手と体制側、どっちとも戦えるのが面白そうだなって……。


 まあ、いいけどね。

 今回は、ユッキーのお手伝いってわけだし、特別こだわりもない。決めて貰った方が安心だ。


『ユッキー:オーキードーキー! じゃあ、マウスはソロ冒険者でお願いね。冒険者ギルドでこのユッキーと握手しよう!』

『シシ丸:結局ソロ』

『塩胡椒:いつも通りソロですね!』

『ヘキサ:ソロの呪い』


 おっと? シシ丸の時は優しかったゲーム部員も、楽しいゲーム部員になっているぞ?

 でもわかる。この流れ、乗らずにはいられないビッグウェーブだ。

 もちろん、俺も乗るぞ。ひゃっほーい。


『マウス:それはもういつも通りソロで良いってことですね?』

『ユッキー:いや、他の冒険者と組んでるとか設定が生えたら面倒だからだよ!? あたしとマウスが合流しやすいようにって話だったよねえ!?』


 こうして、エタソンの世界に、ソロ冒険者エクスマウスが誕生した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 会話のやり取りのテンポが相変わらず良いですね〜
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